軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

248 帝都潜入

フォレノワールが帝国の翼竜部隊を鮮やかに屠ってから魔物の気配はあるものの、上空を飛行するこちらへの攻撃手段がないのか、帝都が見えてくるまで戦闘はなかった。

正直なところ、戦闘を回避出来たのは運が良かった。

「フォレノワール、そろそろ帝都へと到着するから、皆のところへ向かうぞ」

『いいけど……少し気になることがあるわ』

フォレノワールは遠くに見える帝都を見つめながら念話してくる。

「どうしたんだ?」

『さっきからあの街の様子を探っているのだけど、気配も魔力も一切感知が出来ないようになっているみたいなの』

「気配も魔力も感知が出来ない? それって結界が張られているってことか?」

『ええ。これだけ近づいているのに……もしかすると、あの街に結界でも張ってあるのかも知れないわ』

フォレノワールが天馬になった今の状態であれば、かなりの索敵能力がある筈だ。

それなのに何も感じないということは、とても強固な結界なのだろう。

「それは厄介だな。何事もなければいいんだけど……このまま突っ込んでも平気だと思うか?」

『そうね。結界自体は問題なく通過出来ると思うけど、きっと何かあるわ。だって外壁を守っている衛兵が一人も見えないもの。ただ隠れているだけかも知れないけど……』

「索敵出来ない上に衛兵が一人もいない……か、確かにそれは妙だな。いくら夜明け前の早朝だとしても、見張りがいないとかありえないだろう」

この国では魔物が度々現れるのだ。そんな国を守る衛兵がいないなんて、普通じゃ考えられない。

もしかして既に殿下達が突っ込んで騒ぎを起こした後なのか? いや、彼等もそこまで愚かな行為はしないだろう。

それにバザック氏がいるのだから、大抵は乗り越えられるだろう。

だとすると、警備がザルかこちらの動きを読んでの罠を待ち構えているかだろうか。

『帝国兵の統率が執れていないのかもしれないけど、罠かも知れないってことね』

どうやらフォレノワールも同じことを考えていたらしい。

「警戒しないといけないな。まぁ首尾よくあの殿下とその従者達帝都の衛兵を仲間に引き込んでいることを願いたいものだけどな」

『……それで本当にこの中へ戻るの? このまま先に行って暴れてもいいのよ』

「それはパスで。フォレノワールの力は分かったけど、殲滅するための戦いじゃないからさ。それに飛行艇をゆっくりと帝都に下ろせるならいいけど、不確定過ぎるから、皆を連れて飛ぶことにするよ」

『そう。分かったわ』

フォレノワールはそう言うと、飛行艇から飛んで昇降リフトまで飛んでくれた。

『また力が必要になったら直ぐに呼びなさい』

力を抑えて天馬から馬に戻ったフォレノワールは、そう言って隠者の厩舎へと帰っていくのだった。

「本当にフォレノワールは俺の考えを尊重してくる頼りになる相棒だな。今度何かして欲しいことがあったら出来る範囲で答えよう」

そんなことを呟きながら、直ぐに操縦室へと歩み始めた。

「今戻った。って、どうした?」

操縦室へと入ると、皆の視線がこちらへと集中する。

「どうしたもこうしたもないわ。あの馬は何じゃ?翼竜を一瞬に殲滅させるとは……おかげで魔導砲を放つ機会を失ってしまったぞ」

その割にドランは随分とうれしそうな顔をしていた。

「あ~あ、確かにそうだな。俺もあんなにフォレノワールが強いとは思ってなかった」

そんな言葉を口にしながら、何だか笑えてきてしまった。

「くっくっく。そうか、それならば仕方ないな。それで飛行艇はこのままの進めても良いのだな?」

「ああ。だけど帝都には結界が張ってあるみたいで、気配も魔力も読めなくなっているって、フォレノワールが言っていた。もしかすると待ち伏せの可能性もあるから、降下する皆には飛行艇から一緒に飛んでもらうぞ」

「……る、ルシエル様、本当にこんな高いところから飛んでも平気なんでしょうか?」

そう口を開いたのはケフィンだった。

表面上いつも通りの様子だったが、少し緊張しているように見受けられた。

これはあれか、もしかすると犬が高いところが苦手なのと同様なのかもしれないな。

高所恐怖症はまぁ本能的なことなんだろうな。

「魔力が例え枯渇することになっても、無事に着地はするから安心してほしい」

「……いえ、出すぎた真似を致しました」

表情を強張らせたまま無理矢理笑顔を作ったケフィンはそう言って頭を下げるのだった。

それがおかしくて、俺は大いに笑った。

「ははっ。地上に着いたら頼むぞ。もしかするといきなり全方位から矢や魔法が飛んでくるかも知れないからな。敵の殲滅は任せるぞ」

「はっ」

「確かに殿下は抜けているところがあるから心配ニャ」

「確かに殿下は昔から色々とやらかしてしまうので、心配ではありますね」

ケティとライオネルが真顔で恐いこと言っているが、どうやらかなり真実味がありそうだな。

「……まぁ捕まっていたと仮定して突っ込む気ではいる。ところでこの時間帯に翼竜部隊が飛び回るってことは普通なのか?」

「……いえ、私達がいた頃は、偵察する任が主だったので、この時間帯にすることは殆どありませんでした」

「……こちらの動きがバレていると思うか? 俺は正直バレていると思っている。それでも皆がいれば今回の作戦は成功すること思っている」

「何があってもルシエル様はお守りいたします」

やはり俺達が来ることを事前に知っていたということだろうか? そうなるとかなりの確率で下りたところを狙われる気がする。

しかも口上も上げないで暗殺……警戒心が強い相手なら、人族でも魔族でも同じようなものだろう。

それが俺を含めた弱者の戦い方だからだ。

それを覆すには皆の力をまた借りないといけないが、頼れることを幸せだと思えるように俺も頑張ろうと思えた。

「ああ頼むよ。エスティアが知っている奴隷商は、全てが終わってから必ず赴くことを約束する」

「はい。ルシエル様、よろしくお願いします」

「ドラン、迎えを頼むぞ」

「任せておれ」

「ポーラはいないのか? ではリシアン、ドランのサポートを頼む」

「はい。畏まりました」

「ナディア、リディアは船を守ってくれ」

「「はい」」

「リィナとナーニャはドランの言うことをしっかりと聞いて、魔導砲を放ってくれ。但し、かなりの魔石を使うものなのだから」

「うっ、わ、分かりました」「は、はい」

魔力で飛行艇が動いているのに、撃ちすぎて魔石が空になったら目も当てられないので、釘を打っておくことにしたけど、二人は直ぐに頷いてくれた。

あれだけバカスカ撃っていたけど、実験と実戦は違うからドランの言うことを聞いてくれるだろうな。

「じゃあそろそろ行こうか」

「「「「はっ(はい)」」」」

「ドラン、こっちは任せたぞ」

「おう、絶対に生きて帰って来いよ」

「ああ」

その会話を最後に帝都へと侵入する面子で、リフトまでやって来た。

「皆で手を繋いでくれ、帝都の真ん中までは飛行するから、場所の指示をケティに頼む」

「分かったニャ」

「じゃあ行くぞ。風龍よ、空を自在に飛翔する翼となれ」

やはり五人ではさすがに重いのかあまり思った通りには浮かない。

それでも徐々に身体が浮かび上がるので、皆で一緒に飛ぶことにした。

「自由落下にしてそのスピードを軽減させながら移動する。信じてくれ」

皆はただ頷き、一緒に飛んでくれた。

その瞬間に誰かに抱きつかれたかのような重さを感じたのだが、俺は飛ぶことに意識を高めてケティの指示通りに徐々に落下していく。

そして体感で三分程の自動落下による飛行は、無事に帝都中央広場へと降り立った――。

「――風龍よ、全てを遮る風の防壁となれ」

俺は着地したと同時に今度は風の防壁を唱えた。そして次の瞬間に矢や魔法が一斉に飛来してくる。

そして全ての矢と魔法が風の渦に飲み込まれていくのだった。

「やはり張られていたか。ライオネルは俺を守護、三人は定期の殲滅を頼む」

「「「「はっ(はい)」」」」

そして皆が一斉に動き出した時、背中から声が聞こえる。

「ルシエル、ゴーレムは?」

「……!?」

声を掛けられてようやく自分が感じていた重みに気がついた。

鎧越しで分からなかったけど、ポーラが俺の背中に張り付いていたのだった。

「何でいるんだ?」

「帝国に魔導砲を放つなって命令が出た。でもお爺の腕を奪った原因を作った帝国に、一矢だけでも報いたい。お願いします」

ポーラが珍しく長めに、そして俺に頭を下げた。

このお願いを断れるなら、きっと俺は帝国には来ていないだろうな。

そんなことを思いながら、ポーラに指示を出す。

「ついて来てしまったのは仕方ない。後で説教はするからな。ゴーレムはまだいい。だけどいつでも呼び出せるようにして待機してくれ。向こうに見える城へと続く門を破壊してもらうかもしれないからな」

「分かった」

少しだけ不満そうに顔だが、しっかりと頷いたポーラだった。

そんなことをしている間に攻撃の雨がいつの間にか止んでいた。

そこで風の防壁を解除すると、ライオネルの達が戻ってきた

「もう制圧したのか?」

「いえ、魔族はいなかったみたいで、何人か相手にしていただけで、私を攻撃していることに気がついたらしく、武器を捨て始めました」

「敵兵の中にライオネル様と叫んだ人がいたニャ」

ライオネルは戸惑ったように、ケティは嬉しそうにそう報告してきた。

「それで?」

「攻撃をしてきた者達は、今から全員が出てきますので、彼等に指示をお願いします」

「なんだろう、凄く面倒事に巻き込まれそうなんだけど」

「お願いします」

ライオネルはとてもいい笑顔で、こちらに全てを振ってきたその時、俺達に向かって声が掛けられた。

「ルシエル殿、ライオネル先生助けてください」

声の方に目を向けると、殿下達がロープに縛られた状態で現れるのだった。