軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

201 再会

メラトニへの道中、変わったことは特になかったが、ここでナディアとセキロスさん……というよりは、白狼の血脈との関係が分かるエピソードが語られた。

今から三年前のある日、ナディアがソロで活動していたところに、白狼の血脈に助けられたことがあったのだとか。

当時はまだ新人だったナディアだが、当時から剣技には注目されていたらしく、新人の冒険者から中堅の冒険者まで、彼女をパーティーに誘う冒険者達は多かったらしい。

しかしナディアはそれらを全て丁重に断っていた。

そこでそれを面白くなかった冒険者が盗賊に依頼して、ナディアを捕まえる作戦が敷かれていた。

そして襲われているところに、たまたま遠征でグランドルへ来ていた白狼の血脈が、その場に出くわして盗賊達を倒したまでは良かった。

しかし当時のナディアは、根っからの人族至上主義で育てられていたため、お礼どころか、もしかすると盗賊の仲間ではないかと疑ったらしい。

俺はチラっとナディアを見ると、顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに顔を伏せた。

「なるほど。ですが、今はそこまで抵抗は無さそうですけど?」

「ナディアの嬢ちゃんに、冒険者のイロハを教えたのは、俺達だったからな」

「まぁ成り行きだったけどね。ナディアの剣技は中々だったけど、戦い方が綺麗過ぎたり、身を隠したり、魔物の弱点を調べたりするとかの基本がまるでなっていなかったからね」

「なるほど。だからか」

俺達と出会った時には、ケティやケフィンとも普通に接していたのは、白狼の血脈が、人族至上主義だったナディアの思想を変えたからだったんだな。

「まさかルシエルのパーティーにいるとは思わなかったけどな。いつ誰がどういう風に巡り合うことになるかなんて、分からないからな」

「本当ですね」

そんな会話を続けながら、一時間ほど馬達を走らせた。

すると、フォレノワールがペースを落としているのだが、馬達が疲れ始めたので、一旦休憩をすることにした。

「ここら辺で休憩しましょう。朝から何も食べていなかったので、少しお腹も空いてきましたし」

「こっちは指示に従うさ」

「ルシエル君、何を作るんだい?」

「あ、いえ、出来合いのものですよ」

俺はネルダールで作り置きしていたポトフとパスタを提供することにした。

「……暖かいものが出てくるってことは、それは魔法袋かい?」

「はい。魔法の鞄ではさすがに辛かった時期がありまして、教皇様からいただきました」

「頂いたって……やっぱり教会ってお金持っているんだね」

セキロスさんの言葉で、俺は首を傾げる。

「教会自体はどうなんですかね? 確かに教皇様からはいただきましたが、元々は教皇様の使われていたものを譲り受けただけですし」

「だが、治癒士があれだけ暴利だったんだから、教会の給料も当然いいんだろ?」

バザンさんはそう指摘するように告げてきたが、一般的な人の給料を知ることもなく現在の地位に就いていたので、知らなかったことに気づく。

「確かに俺は肩書きがあったので、結構貰っていたと思います。ですが、他の人達の給料は分からないんですよね。教会でお金を使う場所もありませんから、そんな話も聞えてくることはなかったので……」

これはメラトニの治癒士ギルドへと赴き、クルルさんに聞けたら聞いて、自分の知識の足りない部分を勉強することにしよう。

それを聞いてバザンさんが呆れる横で、バスラさんが口を開く。

「私物か。ルシエルは教皇に可愛がられる……それ以上に期待されていたんだろな」

「……かも知れませんね。さてと、この話を続けると暗くなっていきそうなので、これで終わりにしましょう」

皆はそれ以上のことは聞いてこなかったので、俺達は食事を開始するのだった。

その後は何事もなく、食事と馬達の休憩を終えた俺達は、またメラトニへ向けて走り出したのだが、やっとメラトニの外壁が見えてきた時だった。

一番初めにその違和感に気がついたのは、フォレノワールだった。

フォレノワールが走るのを止めて、辺りを眺めるようにソワソワし始めたのだ。

「どうしたんだ?」

俺は訳が分からずに、目を瞑り周囲を確認してみるが、気配や魔力を感じることが出来ないでいた。

しかしフォレノワールが感じた異変を、他の馬達も気がつき始め、普段ではあまりないぐらいの鳥が、まるで何処かに逃げていくように飛び立っていく。

「もしかすると地震か? それとも魔物の襲来か? 皆、一応警戒をして進みましょう。魔物だったら、盾となる地形がないので、不利です」

「分かった。先頭に行ってくれ」

「はい。フォレノワール行こう」

そう声を掛けた時だった、空を切り裂くような音が徐々に近づいてくるのが分かった。

「何だ? この空気を切り裂くような音は? どんどん近づいて来ている?」

「あれだ? なんだ? 翼竜? いやそれにしてはデカイぞ」

「とりあえず行こう」

フォレノワール達はそれから頑張って走ってくれたが、翼竜? の速度は、かなりのもので、徐々に追いつかれてきたところで、その全容が明らかになった。

「おいおい、それはオーバーテクノロージー過ぎだろう?」

俺の呟きをあざ笑うかのように、飛行物体はゆっくりと高度を下げてくる。

フォレノワールは俺が驚いているが、怯えていないことに気がついたのか、逃げようとしていた足を止める。

「おい、ルシエル、あんなのは見たことがない。新手のゴーレムだったらやばいから逃げるぞ」

ハザンさんが止まった俺達に気がつき叫んだが、俺は頭を振ってこの飛行物体について、簡単に説明する。

「大丈夫ですよ。あれには味方が乗っていますから」

「乗っている? それに味方だと?」

「ええ」

降りてきたのは、真っ赤に塗装がされたような鳥型の飛行艇だった。

「まるで火の精霊を象ったような、それこそ不死鳥みたいだな」

驚くことにプロペラなどは一切なく、魔力の残照を発動しながら飛んでいるようにも見えた。

飛行物体が地面にゆっくりと着地すると、中からライオネル達が降りてきた。

「ルシエル様、良くぞ、良くぞ」

いきなり登場したと同時に、涙の堤防が決壊しそうなライオネルに、若干引きながら、文字通り飛んできてくれたことに感謝して、労いの言葉を賭ける。

「そちらこそ、よくぞ駆けつけてくれました。ケティさん、ケフィンさんもライオネル殿の護衛を含め、苦労を掛けました」

「……何故、ルシエル様が敬語を?」

ライオネルは、他人行儀に話す俺に、戸惑いを浮かべる。

「ニャー、ルシエル様、その取って付けたような敬語、とても気持ち悪いニャ」

「ルシエル様、奴隷を解除されても、俺達は従者だって言ってくれたのではなかったのですか?」

そこへケティとケフィンがそれぞれの思いをぶつけてくれるのだが、ケティは相変わらずだが、ケフィンのテンションも凄いことになっていた。

「いや、何故かライオネルが泣きそうだったから、からかいたくなったんだ。まぁだけど、本当に良く駆けつけてくれた。ありがとう。おっ! ドラン、ポーラ、リシアン久しぶりだな。想像を遥かに超えた飛行艇を作るなんてな」

俺がドランにお願いしていた、作って欲しいもの第一弾が、漸く日の目を見ることになった。

「久しいなルシエル殿。こいつを作るのまで、かなり苦労したわい。だが、土龍の鉱石を余すことなく使えたことと、ルシエル商会がお金を出してくれたことで、漸く俺の夢だったこいつが作れた。本当に感謝している」

ルシエル商会のお金? 全く寝耳に水なのだが、昨日の魔通玉で会話した時は問題ないって言っていたよな? 今これを考えると頭が混乱しそうなので、放棄することに決めた。

「ルシエル、久しい。お爺と一緒にこれを作っていたら、魔道具作成のスキルがⅨになった。これで全自動調理器が作れるようになった」

「ルシエル様、お久しぶりですわ。以前お話いただいていた魔物探知機なんですが、魔力で感知するものは出来たのですが、まだまだ精進が足りないようなんですの」

ポーラとリシアンは、何故か俺の目の前まで来てそれを話し、何故か両手をくっつけて手の平を見せた。

「その手は何だ? ……もしかしなくても魔石か?」

聞くと二人は大きく頷くのだった。

この二人に俺への認識はきっと、魔石をくれる人なんだろう。

そう思うと、何故だかそれが、とても嬉しい気持ちになることに、俺は少し戸惑うのだった。

「大きいのがあると聞いた」

「それがあれば、きっと完成は出来る筈ですわ」

「ここで渡しても仕方ないだろう? それより魔通玉の作成は?」

「あれはもう終わった。小型もしてあるから、問題ない」

「あら? 魔通玉を完成させたのは私ですわ」

「それを小型化して軽量化したのは私」

「全てはメラトニへ着いてからだ。大人しくしないと、魔石は渡さないぞ?」

この二人はブレないで、自分達がしたいことを素直にしていることが、何だかとても羨ましく思えた。

ここで魔石を渡しても仕方がないので、メラトニへ着いたら渡すことを話すと、二人は一気に大人しくなるのだった。

「今回我等をこの地に呼んだのには、賢者に至られた以外で、何か理由があるのですね?」

ライオネルは今回呼ばれた理由を知りたいらしいが、俺ではなく、師匠から呼ばれたことを説明することにした。

「ああ。実は「その前にこいつはもう動かせないから、しまってくれ」」

しかし、ドランが話に割って入って来たが、今聞き捨てならない言葉があった。

「もう動かせない? もう動かないのか?」

「ああ。一度止まると、再び動かそうとする時に、莫大な魔力が掛かるんじゃ。じゃから直ぐには無理なんじゃ」

……少しの間だけでも乗ってみたかったが、仕方ない。

実用化で出来ただけでも、称賛を送らなければいけないな。

「……ルシエル様、少し失礼します」

そう言ってライオネルが飛行艇まで向かって、おもむろに触れると、飛行艇は一瞬で消えた。

「もう魔法袋に関しては問題なく使えるな」

「ええ。ルシエル様のおかげです。それより、メラトニまで目と鼻の先ですので、先程の件を歩きながらお聞きしても宜しいですか?」

「それもそうか。バザンさん、こうして従者とも合流出来たので、メラトニまで先に行っていただき、もう直ぐ着くと、師匠に言付けをお願い出来ないでしょうか?」

「ああ。これなら大丈夫そうだから、俺達は先に行っておくよ」

「よろしくお願いします」

頭を下げてお願いすると、直ぐ了承して、先行してくれることになった。

こうして俺達はバザンさん達を見送り、ライオネル達と情報交換をしながら、メラトニの街まで歩いて行くのだった。