軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

173 驚愕

魔術士ギルドで二つの地図を購入はしたが、まだ見ていないので、魔導書庫が何処にあるのか分からない俺達は、オルフォードさんについて行く。

予想としてはもう一度鏡を通り、移動すると思っていたのだが、オルフォードさんが動き出したのは鏡とは逆方向にある、イミテーションとして装飾された魔法陣がある場所だった。

「これは飾りではないんですか?」

「ふぉふぉふぉ。この魔法陣からひとっ飛びじゃぞ」

魔術士ギルドを象徴するかのような魔法陣を、誰が本物の転移魔法陣だと気がつくのだろうか?

嬉しそうにオルフォードさんが語りながら、魔法陣の上に立った。

俺達三人も続いて魔法陣に入ったのだが、気になることが一つあった。

「人数制限はないのですか?」

「あるが短距離移動なので、十人程なら余裕じゃぞ」

その答えに安堵して、魔法陣の発動を待つ。

すると直ぐに発光したと思ったときには、既にギルドマスターの部屋から、魔導書庫へと飛んでいた。

魔導書庫は円柱状の作られていて、それに沿うように本棚が並べられていた。

この世界にもこれだけの本があったのかと思うと、驚かずにはいられなかった。

「さぁ着いたぞ。まずは制限のある書物はワシが探して来よう。御主等は興味がある本を読んでいてくれ。それと、ここへ出入りする人間は限られているから、誰かに何かを言われたら、儂の名前を出しておいてくれ」

「分かりました。それで一つだけ質問なのですが、図書館ではなく、魔導書庫と呼ばれる由縁は何でしょうか?」

確かに圧巻ではあるのだが、それだけで魔導書庫を名乗るのは、名前負けしているように思えたのだ。

それを聞いたオルフォードさんは笑いながら、無言で奥の部屋へと向かっていくのだった。

その笑みが何を伝えたかったのかは分からなかったが、隣にいる二人がそわそわしていたので、指示を出す。

「……しょうがない。何も言わずに行ったってことは、基本的には自由で良いのだろう。二人とも自分の興味のある本を読んでみるといい。今後も来ることがあるだろうけど、好きな本を読めるとは限らないからな」

「はい。ありがとう御座います」

「これだけ蔵書があるなんて、どれから読むべきか悩みます」

二人は楽しそうに本を漁りに行くのだった。

そんな二人を微笑ましく見つめていたが、俺は気を取り直して、近くにあったイスに腰掛けた。

オルフォードさんが何かを語りたがるのを我慢していたことから、何か仕掛けがあるのだろう。

しかしそれよりも心に引っかかっていたのは、先程購入したハードカバーの地図と魔術士ギルドの冊子だった。

だからまずこの二つを読むことにしたのだった。

「まずはここの出入りの鍵となる冊子からだな。ん?」

冊子を良く見てみると魔法陣が刻んであることに気がついた。

「……もしかするとこれがこの書庫に入る鍵となっているのか……オートロックで、誰が入ったから分かるセキュリティー機能までついているとか? まさかそこまでは……」

レインスター卿なら十分にありえることなので、ただただ驚くだけだった。

転移魔法陣にオートロックキュリティー機能(仮)……その技術力は半端じゃない。

ここでなら聖属性魔法を取り戻す以上に、色々なことが吸収出来るかもしれない。

そう思うと、期待に胸が高鳴る。

俺はそれを深呼吸で宥めてから、魔術ギルドの冊子を読み進めるのだった。

そして読み進めて直ぐに、ある項目で目が留まる。

何故魔術士ギルド本部を空中に浮遊する魔法独立都市ネルダールに置いたのか?

そうあらすじみたいなところだ。

このネルダールが魔術ギルドの為に作ったんではないことは知っている。

直接 本人(レインスター) に聞いたから間違いない。

だったら何故? 続きを読むとこう書かれていた。

空を制する者世界を制す。

何処かで聞いた台詞がそのまま記載されていた。

更にその続きには、その言葉に当時の魔術士ギルド長が深く感銘を受け、ネルダールにどうか魔術士ギルドを置かせて欲しいと勇者に頼み込んだと記載されていた。

「良くこの部分を改編してないな。何か誓約でもしてあるのか?」

そもそも治癒士の国を作るぐらいだから、あの人は二つも国を作っていることになるんだが?

もはや溜息しか出そうにないので先を読む。

魔術士ギルドをネルダールに置くことに対しての条件を勇者は出した。

それは誰にも邪魔をされないで、また誰にも迷惑をかけないことを望み、魔導を探求し、それを目的である者のみが入ることを許されたのである。

「これってロックフォードと分野が違うだけで似ている……レインスター卿がしたかったのは技術の独占なのか?」

これが本当なら魔術ギルド本部と名前は付いているが、実際は魔導を探求するもの達が、日夜新しい魔法技術を研究だけの施設だ。

そう考えながら冊子を読み進めると、あらゆる研究がされているようだった。

大きく分類すると魔法具と魔法、魔法技術の三種類で後はさらに細かいカテゴリーが分類されていく。

魔法具は戦闘と一般で使うもので分類されていき、さらに属性魔石によって研究が行われるらしい。

魔法技術は魔法陣や詠唱に分類されていく。

そして最後に魔法だが、これも魔法古代魔法や混合魔法、精霊魔法に竜魔法、獣人でも使える魔法の分類になっていた。

それら全ての研究施設が細かく載っていた。

「危険な研究所程下に続いているのか? それよりもこの魔術士ギルドはもしかすると……」

凄く嫌な予感がするが、当面はここで勉強することが、今後にとってプラスになるのではないかとも考える。

こうして冊子の方はある程度目を通しきった。

顔を上げて周囲を確認するが、オルフォードさんは帰って来ないし、ナディアとリディアも読みたい本があったのか、読み始めたようだった。

俺はそれを確認してから、続いてネルダールの概要の書かれているハードカバーの本を読もうと開いた時だった。

本から光があふれ出したと思ったら、立体映像が浮き出した。

「ようこそ魔法独立都市ネルダールへ。私がこの空中都市を作った勇者だ。出来れば私のロマンが分かる人になってくれることを願う」

それだけの短い立体映像だった。

「あの人って一体何がしたかったんだろう?」

全身が何故かボカされていて顔は分からないが、以前ロックフォードで見たレインスター卿と酷似している点が多かった。

まぁ考えていても仕方がないので読み進めるが、そこからは細工がない普通の本として、ネルダールの全体像が分かる概要が事細かに書いてあった。

魔法独立都市ネルダールは都市という割には実はとても小さく、直径三キロの歪な円状な形をしており、深さも二キロ程しかないらしい。

きっと壊そうと思えば、レインスター卿なら打ち落とせる、そんな空中都市にしたかったのだろう。

ネルダールは強固な結界が張られていて、黒竜のブレスでも全く傷が付けられないらしい。

「黒竜がどれだけ凄いかは分からないけど、あの人がおかしいのは今更だな」

俺はページを捲って、ある一文を見て固まった。

このネルダールの防衛機能は勇者が練り上げた魔法陣によるものだが、それを可能しているのが、風龍と水龍の双龍だと言われているが定かではない。

「……聞いてないぞ。風の精霊だけじゃなかったのかよ!!」

俺は本に記載されていた情報を見て、怒鳴り声を上げてしまう。

このもやもやとした複雑な感情をぶつける場所がなく、冷静ではいられなくなってしまった。

「ルシエル様、大丈夫ですか?」

「何かあったのでしょうか?」

ナディアとリディアが心配そうにこちらへと来てくれたが、それが何とも悲しくて、申し訳なくなった。

「……すまない。気にしなくていい。治癒士じゃなくなってしまったからか、起伏が激しくなってしまったみたいだ」

「そんなに無理して笑わなくても大丈夫です。私達はあなたの従者としてここにいるのですから」

「何でも言ってください」

二人が献身的であればあるほど、何故か申し訳ない気持ちになっていくのだった。

「ありがとう。でも今は少し考えたいことが出来たから、一人にしてくれ。折角の自由な時間なのだから、二人はもう少し本を読んでいるといい」

「……わかりました。では、何かあれば仰ってください」

「直ぐに駆けつけます」

「ああ。ありがとう」

そう告げると、二人は自分達のいた場所へと戻っていく。

俺は深呼吸してから、ネルダールについて書かれた本をもう一度目を落とす。

これに記載してある情報が本当に正しいのかを考えるのだった。

そして俺はあることに気がついた。

「あれ? 待てよ。もしかすると……」

俺は急いでページを捲っていると、魔術ギルドはネルダールの中心にあり、それを囲むように東西南北に町があった。

「だったら噴水は?」

冊子を手に取って調べてみると、魔術士ギルドの中庭に噴水が存在していた。

「条件が全て揃っている……だったら、さっきの嫌な予感は」

頭の中でばらばらのピースが何故か全て繋がっていく。

そこへ落ち込んだ姿のオルフォードさんが戻ってきた。

「やはり禁術を使ってジョブを失った話は一つもなかったぞ」

「オルフォードさん、知りたい情報が二点あります」

「な、何じゃ?」

少しテンションが高かったからか、驚かせてしまったようだ。

気を取り直して、俺は二つのことを質問することにした。

「もし御伽噺のように書かれている龍が、転生してしまったら、ネルダールは落ちてしまいますか?」

「ふむ。もし仮に龍がいたとして、それを倒したとしても落ちるということは、まずないじゃろう。既にそれに備えて浮遊の魔法陣がこのネルダールには刻まれておるからな」

最悪のケースがなくなったことを安心した俺は、最後のピースを埋めることにした。

「例えば邪神級の封印を解く魔法や魔道具はありませんか?」

「……ない」

ないと答えた表情は変わらなかったが、目から放たれるオーラも威圧が加わった気がした。

「では、仮に龍がいるとして、その傷を塞ぐことが出来るポーションのようなものをご存知ですか?」

「龍とはあったことがないからな。まぁそこまで焦ることはなかろう」

「どうしても直ぐに取り戻したい力なのです」

「まぁ落ち着きなさい。教皇様から君が幾つかの属性に適性があることは聞いている。それを修練してからでも遅くはないだろう?」

現状ではオルフォードさんに何を言っても、無駄なことが分かった。

彼の中で考えていることもあるのだろう。

俺は一度頭をリセットして、このネルダールで今度は魔法の修行をしながら、蔵書を読み漁ることを決めた。

「……分かりました。一度他の属性魔法を試してみたいと思います」

「それが良いじゃろう。この儂が講師を務めてよう」

その答えに満足そう笑うオルフォードさんだったが、何故彼が此処まで頑なに、俺からの質問をはぐらかしたのか、その見極めもすることを決意するのだった。