軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

125 教会本部の対応

聖シュルール協和国へと到着し、聖都シュルールへ入る手続きをする前に、フォレノワール以外の馬は隠者の厩舎へとしまい、元奴隷達やライオネル達も徒歩での移動になった。

俺は全く気にしていなかったのだが、皆からの強い要望によりそうすることにした。

「聖変様、お帰りなさいませ」

門兵から声を掛けられ、そう言えば聖変と呼ばれていたことを思い出し、苦笑いと懐かしさが入り混じったなんとも言えない気持ちになった。

俺はそんな気持ちもそこそこに門兵と会話をした。

「ご苦労様。この一年で変わったことは?」

「特にないですね。そこまで強い魔物も現れなくなりましたし、重大な何かが起こったとかもないですね」

「そうですか。ありがとう」

俺は下馬することなく、まずは冒険者ギルドに移動することにした。

賑わいをみせる街中をフォレノワールに跨り闊歩すると俺に視線が集まり声が掛けられる。

「聖変様、お帰りなさい」

「気まぐれな日を近いうちにお願いします」

「またうちの料理を大量に買っていってくださいよ」

そんな声が掛けられて、俺は自分の顔が自然と綻ぶのを感じていた。

「機嫌が良さそうですね」

「ルシエル様でも、声を掛けられるだけで、ニヤニヤすることがあるなんて不思議だニャ?」

「まぁ懐かしいから、自然とな。ここでは命を狙われたり、面倒な仕事なんてはなくて、自分が努力した分だけ恩恵を返してくれる鏡の様な生活だったからな」

そう。聖シュルール協和国がいわば、メラトニという故郷から上京した都市だった。

最初は肩肘が随分と張っていたことを今更ながらに思い出した。

「ルシエル様って何で聖変って通り名なんでしょうね?」

「……ケフィン、それは気にしなくいいと思う、あ、ここを曲がれば冒険者ギルドだ」

他愛もない会話をしながら、冒険者ギルドの前で止まると俺はフォレノワールから下馬し、一度撫でてからフォレノワールを治癒士達に見ていてもらうことにした。

まぁこの聖都で俺が乗っている馬を強奪する人はいないと思うが念には念を入れた。

俺は元奴隷達と冒険者ギルドへ入って行く。

夕刻ということもあり、冒険者ギルドの中はかなりの人でごった返していた。

遠目から声を掛けてくるだけで、冒険者達は気を遣ってくれているみたいだった。

俺はそれに笑みを浮かべながら、カウンターへ向かい元奴隷達の冒険者登録をお願いした。

「彼らは魔法が使用可能なので、武術スキルが無くても何とか特例で、冒険者登録をお願い出来ませんか?」

「……まずは登録が出来るかどうか、測定してから判断をしましょう。その後の判断はギルドマスターにしていただきます」

「確かに仰る通りですね。そう言えばグランツさんは?」

「現在、他の職員が呼びに行っていますが、この時間は食堂の方が忙しい為、少しお待ちいただくかも知れません」

「分かりました。じゃあ彼らの測定をお願いします」

「畏まりました。それではお連れの皆様もこちらへ」

彼らの冒険者登録と冒険者としての説明を受付さんが始めた。

ふと冒険者になり立ての時、聞き逃した内容があるかも?と俺も受付さんの話を聞こうとしたタイミングでグランツさんがやってきた。

「久しぶりだな」

「お久しぶりですね、グランツさん」

「本当に久しぶりだなルシエル。料理は作っているか?」

「最近はそこまでではないですけど、スキルはいつの間にか取得していましたね」

「そうか。で、今日はどうしたんだ? 確かイエニスで代表をしているんじゃなかったのか?」

「任期を終えたので、一度里帰りみたいなものですね。如何に自分が出来ないか凹まされた一年だったんで、少しずつ鍛えなおそうと思い帰ってきました」

「彼らが従者か?」

「こっちの三人は奴隷だけど、俺が信をおいている従者です。

他は違法や借金奴隷だったんで、魔法を使えるし冒険者登録をお願いしたいと思って連れてきました」

「なるほどな。いいだろう引き受けてやる」

「いいんですか?」

「ああ。最近は教会とのパイプも構築が進んでいて、今回のことも事業の一環と考えれば悪くない。もちろん様子を見に来ることは考えているんだろ?」

「ええ。数日間は聖都シュルールで過ごすと思います。その後も当面メラトニとこの聖都を行ったり来たりすることになると思うので、顔はなるべく出すつもりです」

「ならいい。それに教会よりも先にこっちに来たってところもしっかりしているしな」

「ありがとう御座います。甘えさせていただきます。あとこれは彼らの一月分の食費と宿泊代金です」

「……それを何でルシエルが払うんだ?」

「俺もメラトニで皆に良くしてもらえたから聖都シュルールで必死に頑張れたし、今の肩書きがあると思っています。それを次の人へバトンを渡したいだけですよ」

「やっぱり良い奴だな。だがそこにつけこまれるなよ?」

「命のやり取りをするところ以外は結構ドライな性格なんで、大丈夫ですよ」

「ならいい。こいつらは俺が面倒を見てやる」

「お願いします」

俺は元奴隷達をグランツさんに紹介しながら、奴隷達とはここで別れることになった。

奴隷達から非常に感謝されたが、ここからは自分達の頑張り次第だと声を掛け冒険者ギルドから出た。

「随分と仲が良さそうでしたが?」

「俺の料理の師匠だからな。それに助けたり、助けられたりして、今の関係になったからな」

俺は笑顔でそう答えると、待機していたエスティア達と一緒に教会本部へ向けて歩き出した。

ここに来る前にケフィンとケティにはもしもの時のために、宿泊施設の場所なども伝えてあるが、どのような対応がとられえるかに不安を抱きながら、エントランスへと向かった。

「ここも懐かしいな」

俺の呟いた言葉にライオネル達は奴隷として、エスティア達は緊張した面持ちで誰も反応してもらえなかった。

受付嬢は二人居たが、どちらも顔見知りだったので、簡単な挨拶をしてから本題を切り出した。

「カトリーヌさんとグランハルトさんを呼んでいただいても宜しいですか?」

「畏まりました。少々お待ちくださいませ」

二人は別々に魔通玉を持って交信を始めたらしく、目を瞑り集中していた。

魔通玉が二つあったことに驚きながら、受付の通信が終わるのを待った。

「カトリーヌ様とグランハルト様がこちらで待機していただきたいとの伝言を承りました」

「そうですか。ありがとう」

受付嬢の二人にお土産を渡すっていうのも変な気がしたが、魔法袋からハチミツキャンディを渡すことにした。

他の受付には嫌われていないのに、自分の会社の受付に嫌われるとかはショックが大きいものだ。

「あ、そうだ。これはハチミツで作ったキャンディなんだけど、良かった試食して感想を聞かせてくれないかな?」

「「いいんですか?」」

「ああ。イエニスでハチミツを使った新商品を考えていたりしているからね。はい、どうぞ」

『ありがとうございます』

二人は直ぐに口に含むと一気に顔が綻んだ。

この世界で甘味計画が進んでいない原因は分からない。ただ、ハチミツ工場を作ったのは間違いじゃなかったと心の中でガッツポーズをした。

受付嬢にハチミツキャンディの感想を聞いていたら、カトリーヌさんとグランハルトさんが来てくれた。

そしてカトリーヌさんが剣の柄に手を掛けた。

「お二人ともお久しぶりです。こっちの三人は奴隷ですが、既に奴隷解放条件をクリアしている私の従者達です。こっち側の奴隷ではないのが、教皇様にお伝えしていた教会所属の者達です」

俺がそう発するとカトリーヌさんは姿勢を崩さないまま、こちらへ問いかける。

「ルシエル君、お帰りなさい。それにしても貴方の隣が誰だか分かって連れてきているの?」

俺の隣? ライオネルになるな。

「ええ。元イルマシア帝国の戦鬼将軍です。奴隷となって売られているところをイエニスで購入しました」

「……戦鬼将軍は最近も戦場で暴れているって噂があるんだけど?」

「それはないですね。この一年間、俺の護衛を休まずにしてくれていましたから。それにしてもカトリーヌさんはライオネルと面識があったんですね」

「何度か戦いを見たことがあったわ。帝国のライオネル将軍と言えば、戦場を馬で駆け抜けて、槍を振る姿は本当に鬼のようだったわ」

「だそうだが?」

俺はそれをライオネルに聞くが、別にこんなことでこの一年がなくなるわけではない。

「それが私の仕事でしたからね。他国からは見れば大量殺人者に思われても仕方ないでしょう」

「まぁ戦闘狂だしな。カトリーヌさん、奴隷の彼らが教会本部に入るのって何かマズイですか?」

こちらの聞きたいことがようやく聞けた。

「……問題はないわ。奴隷は個人の持ち物として定義されているから。まぁ問題があれば、如何にS級治癒士のルシエル君でも罰は免れないわよ」

「こちらの獣人の二人は?」

「人族主義が多いけど、別に教会自体はそれを推奨しているわけじゃないから、問題ないんじゃないかしら」

「なら良かった。じゃあグランハルトさんは彼らの聴取をお願いします。問題がなければカトリーヌさんは教皇様のところへ連れて行ってください。未だに教皇様の部屋へ一人で辿りつくことが出来ないので……」

俺はそう言って笑うと場の空気が少しずつ和んでいった。

「私に命令するなんて、ルシエル君も偉くなったわね。それなのに一人で教皇様の部屋に行けないとか……そういうところは変わらないわね。いいわよ。従者達も一緒にお目通りしちゃいましょうか」

「はい、お願いします」

カトリーヌさんが心配してくれていたことをありがたく思いながら、一言も発さないグランハルトさんはきっと上司の前では発言出来ない人なんだなと認定しながら、俺たちはカトリーヌさんに連れられて教皇様の部屋へと移動を開始するのだった。