軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

112 ドワーフ王国からの使者

料理を作っていると、ケティが帰って来たのだが、少しだけ慌てていた。

「如何した?」

「徐々に穴が大きくなり始めているニャ。ドランさんかグランドさんに補強してもらわないと、マズイことになりそうなんだニャ」

「怪我人は?」

「今はいないニャ」

この町は夜でも、擬似月と擬似星でそこそこ明るい。

現在は夕暮れ時らしく、このまま夜になっても穴が広がり続けると、一気に魔物が溢れる恐れがあるから念の為ということだった。

「じゃあ魔石の確保もあるし、俺も行こうかな」

「今度は落ちないようにして欲しいニャ」

「……善処する」

その後にケティが話しかけると、ドランが行くことになり、俺達は中央広場までやってきた。

「確かに大きくなっているな。ドラン、ドワーフ王国ってここから近いのか?」

「一時間程じゃな」

「この穴とドワーフ王国って繋がっていると思うか?」

「どうしてじゃ?」

「……もしそうなら、ここを階段に作り変えてもらえば、こちらからも攻撃出来るだろ? そうすればドワーフ王国に向かう魔物と、こちらに向かってくる魔物が分散出来るだろ」

「なるほど。じゃが、さすがに地下の構造を把握はしていない」

まぁ普通はそうだよな。

思いついたことを口にしてしまったことを謝りつつ、俺は一度ライトで照らしてみることを告げた。

「ケティ、魔物を頼む。俺は落ちないようにライトで照らして、その数が多ければドランは一度完全に埋めてしまってくれ」

「分かったニャ」

「このロックフォードを魔物にやらせる訳にはイカン!」俺はライトと聖龍の槍を持って穴に近づき、光を照らした。

穴から顔を出した魔物は、急激に活発化したのか、正に大群が押し寄せようとして、俺は槍を突き出し、ケティは飛び跳ねながら蟻が穴から出ないように攻撃を開始した。

「ドラン!」

ドランが地面に触れると巣穴は縮まっていったが、完全に閉じる寸前でストップをかけた。

「ドラン、完全には塞がない方が良い。何処からくるか分かっていたほうが、混乱もなくて良い」

蟻の魔物がなんでこれだけ活発化しているのかも考えないと、今回は乗り切れない気がしたのだ。

レインスター卿がこの町を作ってから、魔物に侵攻されたことなどの耳にしていなかったからだ。

地震だけでは説明がつかない。

俺はそんな気がしてならなかった。

「こんなことならポーラも連れてきて、地盤の固定化を頼めば良かったな」

「呼んでくるニャ?」

「ケティは俺と蟻退治だ。ドランも、もしもの時の為に移動はさせられない」

「ふむ、誰か使いを出すか?」

「……ケフィンが戻るまではこのままだな。この町の研究者だって指を咥えて見ているだけじゃないんだろ?」

「うむ。だが、指揮を執れる者が居らん」

「ドラン、顔色が悪いぞ? もしかして土を掘リ進めるのと、穴を塞ぐのは違うのか?」

「……さっき止めてもらえなかったら、魔力枯渇していたところだ」

「そういうのは先に言っておいてくれ。」

「ケティ、ライオネルは?」

「……出来るとは思うけど、やらないニャ」

「はぁ~。じゃあ俺が執るときは助言してくれるか?」

「勿論だニャ」

「防衛戦になる場合はだけどな。それより魔物って魔物の死体を食べたりするのか?」

「分からないニャ。でもその可能性はあるニャ」

「魔物も縄張り争いをすると聞いたことがあるぞ」

「魔物を下に落とさないように倒すしかないな。死体を食べてレベルアップしたら笑えない」

確か蟻は雑食だったはずだから、何でも食べることが考えられるから流石にマズイ。

俺達はケフィンが帰ってくるまで、倒すことに集中することにした。

巣穴から同時に出てくる数は多くても三匹で、先手を倒すことに対してはそこまでの苦労はなかったが、ライトを照らした時は、巣穴にビッシリと蟻が張りついて集まっていた。

一度浄化魔法で浄化を試みてみたが効果はなく、このまま切り続けていいのか? それとも埋めてしまった方がいいのか? 俺はそのことに迷っていた。

迷っているとそこへ来訪者が現れた。

「ルシエル様、お待たせいたしました」

ケフィンがドワーフを二人連れて戻ってきたのだ。

「戻ったか、それで?」

「はっ。彼らがドワーフ王の側近である、グライオス殿とアレスレイ殿です。彼らをどうしても連れて行けと言われて断れずに……用件は二人がお伝えするようです」

「なるほど。ケフィン、代わってくれ。ケティはもう少し踏ん張ってくれ。ドランは俺と同席を頼む」

『はっ』

その瞬間ドワーフの二人の顔色が変わった。

俺が仕切ったからか、ドランを呼び捨てにしたからか、それともドランが俺に大人しく従ったことに対しなのかは、分からない。

まぁ彼らのリアクションなど今の俺にはどうでも良かったのだ。

「私は聖シュルール教会S級治癒士ルシエルと申します。それでドワーフ王国の王の返答を早速、お話しください」

「……この場で?」

「罪人であるド「それ以上に言ってみろ、ドワーフ王国に義理立ても何もする気はなくなりますよ?」」

「ルシエル様」

「彼は私の為に尽力する私の従者にして、開発研究所の長として雇っている。それを頭に入れてから話された方が良いと思われるが?」

二人は驚いた顔を見合わせて、ヒソヒソ話をしてから、再度口を開いた。

「失礼致した。私はグライオスと申す。ドワーフ王からは死傷者が出ているので、救護はしていただきたいが、治癒士の料金が我等ドワーフに出せるかの確認をして参れと仰せつかりました」

「……ケフィン、ドワーフ王国はどんな感じだった?」

「疲弊してきていますね。全てが戦闘をこなせるわけではないですし、もって数日といったところでしょう」

「なんだと! 我等ドワーフを馬鹿にするのか!!」

「……正直どうでもいいので、口を挟まないでください。彼も奴隷ではありますが、私の従者です。彼は情報を正確に伝えることが出来る、とても優秀な人材です。今聞きたいのは感情論ではない」

俺はグライオスと呼ばれた男の発言をバッサリと切り捨てた。

「食料を含めて足りなそうなものは?」

「食料は問題なさそうでしたが、武具は消耗が早かったのと、あとはやはり怪我人の治療に関して必要なものが多いように感じました。ドワーフ王国へと向かう道中も数多くの魔物と対峙することになりました」

「はぁ~。ケフィン皆を呼んできてくれ。グランドさんとトレットさんも頼んできてもらってくれ」

「はっ」

ケフィンが消えるとドワーフの二人は驚いていた。

人が消えたら転移に見えるから、きっと俺も驚くだろう。

ドワーフの二人を見ながら、俺は問う。

「見て分かる通り、本日の地震の影響でロックフォードも魔物に襲われています。現在ほしいのは地下の情報です。例えば蟻の魔物が襲ってきていますが、他にも魔物がいるかどうか、他にも蟻の親玉は一体なのか? それとも複数いるのか? 知っている情報を教えてください。ちなみにこれが治癒士の料金表です」

俺はガイドラインを渡すと、ケティと一緒に蟻退治を続ける。

「助けることになりそうかニャ?」

「分からない。動き方次第かな。グライオスのような人間が多い場合、俺はもうイエニスを背負っている訳でもないから、わざわざ危険なドワーフ王国に赴くことはしないよ」

「イエニスの時も、それぐらい割り切れていたら良かったニャ」

「イエニスでは背負うには数が多すぎた。ケティ達だけでも大変だったのに、な」

俺は苦笑いを浮かべながら、蟻を叩く。

「酷いニャ。ドランとポーラはともかく、私たちは大人しく……」

「しとらんかったじゃろ」

「まぁ相手が居たことだから、ライオネルとケティはしょうがない部分もあるからな」

俺はドワーフ王の側近に視線を向けずに二人と話していた。

料金プランを渡して、どう思うかの見極めてと、グランドさんがこの場に来た時に、彼らの態度がどう変わるのかを見たかったのだ。

ドランとグランドさんの書いた手紙の内容を、俺は知らない。

だけど、俺は彼らを信じることに決めていた。

魔物を倒している間、彼らがこちらに近づいてくることはなく、話しかけてくることもなかった。

そこへグランドさん達が来たのだが、グランドさんは二人を無視してこちらに向かって来て頭を下げた。

「本当に申し訳ない。だが、やはり故郷なのだ。助けてやって欲しい」

「まぁ覚悟はしていましたよ。今はこことドワーフ王国に赴く編制を考えていました。

ドランとポーラ、リシアンはここの死守を頼む。守るだけだ、絶対に穴の中に向かうことはするな。

この町を皆で協力して死守してくれ。

そこら辺に転がっている魔物の死体の魔石を全部使ってくれて構わない」

『はっ』

「厄介な時に来てしまったと思いますが、トレットさんには彼らのサポートをお願いします。

ここが仕切れるのは貴方だけです。

「フォ――!! その熱い眼差しは滾るわ。今回だけ二人の弟子の為に頑張るわね」

トレットさんのウインクを華麗にスルーして、指示を続ける。

「ライオネルは大盾で防御しながら、短槍で戦ってもらう。

ケティとケフィンは遊撃、俺は回復、支援を担当する。

それとグランドさんは俺達と来てもらいます。

ドワーフ王との交渉は全てをグランドさんにお願いします」

「……私でいいのか?」

「ええ。俺がこの世で信頼しているドワーフは現在ドランさん、ポーラ。そしてグランドさんの三人だけですからね」

「……分かった。 フッ 数年でだいぶ変わったものだな」

「変わったと思われるのは、頼もしい仲間が側にいるからかも知れませんね」

グランドさんの苦笑いに、俺は笑って返しながら、一つだけ決意を固めていた。

最悪の場合はドワーフ王国が崩壊しても生き残る、と。