軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

エピローグ

「はい、てきぱき働いてくださーい!」

「魔石が大量、素材もたくさんありますから、ぼやぼやしてるといつまで経っても終わりませんよー」

魔機車の上で決戦場を見回して、双子が指示を出していく。

ギルドからの応援で到着した運搬用の魔機車に、魔物や魔機獣の素材が詰め込まれていく。

「エルフの方々、休憩に入ってください。無理をする必要はありません」

適切な仕事量、休憩時間もきちんと取り、怪我人の運搬と治療までも指示を出していく。

結界魔機の起動で疲れているだろうに、意欲的に働いている双子を見れば、誰も疲れているからと文句は言えない。

当の双子曰く、

「結界魔機の起動だけでは地味すぎて序列持ちになれないかもしれません」

「指揮も取れるというところを見せて評価ポイントを上乗せしてもらいます」

したたかにポイントを稼ぎに行く双子にトールは苦笑する。

「多分、お前らが序列持ちになることに反対する奴なんてもういないぞ」

事実上、世界を救った双子である。

ユーフィとメーリィが張った結界により、今後はダンジョンが発生することもないのだから、実質的には世界中からダンジョンを消滅させたようなものだ。

この功績だけで序列入り一桁台は確実である。

「ついに追い抜かれたかなぁ」

呟くトールは、周囲の冒険者から怪訝そうな視線を向けられた。

「……あんな化け物を一人で倒した奴が序列に入ったままとかないだろ」

「もう永久欠番でしょ。殿堂入りだっての」

「聞こえてるぞ?」

「やっべ、こっち見た」

「逃げろ、逃げろ」

「ロクック、バストーラ、逃げても無駄だ。もう顔は覚えてる」

トールが名前を呼んでも、二人はさっと蜘蛛の子散らすように逃げ出して、回収作業に戻っていった。

トールは頭を掻いて、他の冒険者を見る。

露骨に目をそらされた。

畏怖と尊敬の視線に居心地が悪くなり、トールは白んだ空を見上げる。

「強い魔機獣を倒しただけだぞ。序列一桁は無理だろ」

「いや、あれを倒せるのがおかしいんですよ? 追い返すのが精いっぱいかなってみんな思っていたはずです」

メーリィの指摘に、冒険者たちが深く頷いた。

「数えたんですけど、百七十個ありましたよ、取り込まれた魔石。エミライアさんを超える魔力量と重複があるとはいえ百七十のエンチャントって多分、世界を滅ぼせますよ?」

「相性だよ、相性。俺はエミライアに勝てる気はしないし」

話しつつも作業を進める内に回収は滞りなく済み、トール達は最寄りの都市まで撤収することになった。

トールは運転席に乗り込み、後ろを見る。

ユーフィとメーリィが助手席を奪い合ってじゃんけんしていた。思考共有がある以上互いの手の内は筒抜けである。つまりはギャグのつもりだろう。

「都市まで距離があるんだ。半分ずつの交代でいいんじゃないか?」

「では、そうしましょう」

ユーフィが助手席に座り、メーリィが助手席の背もたれに後ろから寄りかかる。

魔機車のアクセルを踏み込み、トールは二人に声をかけた。

「終わったなぁ」

「世界の終わりが始まる前に終わりましたね」

「その表現、ややこしくね?」

ツッコミを入れつつ、トールは前を見る。

ダンジョンが消滅した以上、これから先の冒険者業は魔物と魔機獣の駆除や、既存のダンジョンの調査、遺跡の調査になるだろう。

人手不足が叫ばれる業界だが、ダンジョン攻略に人手を割かれなくなり、人手は足りるはずだ。

今後の身の振り方を考えるべきかとトールが悩んでいると、双子がなにやらもじもじし出した。

「トールさん、ちょっといいですか?」

「うん?」

「今後のことなんですけど、博物館を建てるためにあちこちに旅行するじゃないですか」

「そうなるな。その前に拠点を決めて、収集する落ち物を保管できるようにしないといけないが」

「その拠点のことなんですけど、ダランディに戻りませんか?」

ダランディ、双子と初めて会った町だ。

思えば、十年目はあの町で始まり、世界を救うことになる双子との旅の出発点でもある。

戻ってみるのもいいかもしれない、とトールは頷いた。

「そうするか。もう、二人を妙な目で見る輩もいないだろ」

これだけの実績を作った双子を敵視することはできない。

ユーフィが口を開く。

「それより、両親にご挨拶を……」

「あぁ、後回しにしてたもんな。三人で花を買っていかないと」

一度だけ出向いた双子の両親の墓を思い出して、トールは約束する。

異世界に落ち、帰ることを諦め、双子と出会ってこの旅に出た。

この一年、トールは世界を救う主人公だった。

しかし、物語は終わりだ。

「トールさん?」

「笑ってるんですか?」

双子に指摘されて、トールはバックミラーで自分の顔を確認する。

確かに笑っていた。

「いや、世界を救っても、まだ終わらないんだよなって思ってさ」

確かに一つの物語はこれが終着点。

ここからはまた、別の物語が始まる。

なら、験を担ぐのも悪くない。

「ダランディにおすすめのバーがあるんだ。気のいい店主がいてさ。どうだ?」

「もちろん、行きます!」

「スパークリングワインも入荷してもらいましょう!」

二つ返事で提案に乗ってくる双子に、トールは笑みを深める。

「決まりだな」

この世界で死ぬ瞬間まで、物語は続いていく。

三人の物語が――