作品タイトル不明
別れ
『体が、軽い?』
真っ白に染まった世界。
そこにふわふわと浮かぶほどに軽くなって、俺は在った。
「ユウト様」
その白き世界の中心で、クロが俺の名を呼ぶ。周りには俺とクロ以外、なぜか誰もいなくなっていた。
気がつけば腕が二本だけに戻っている俺の体。
その両手の指が、クロの両手の指と絡み付くように握られている。
少し、体がクロから離れたことで、改めてそのクロの姿がよく見える。
眩いばかりに光り輝く白き髪。
その髪に縁取られたクロの顔は、それでも見慣れたそれで、どこかホッとする。
俺のそんな視線と、クロの視線が交差する。
ポッとクロの顔が紅潮する。
しかし俺を見つめ返すその視線は一切外れることなく、見つめ続けてくる。
これがお互いに顔を会わせられるのが最後になると、言わんばかりに。
『クロ?』
「はい、ユウト様」
『前みたいに、呼び捨てにしてよ』
「失礼しました、ユウト」
『うん。……ありがとう、クロ』
「私の方こそ、ありがとうございます。ユウトと過ごせた時間は、本当に幸せでした」
『……色々、あったね』
「はい。どれも、得難い経験でした」
『ねえ、クロはどうなるの?』
「ユウトの、想像と変わらないと思いますよ」
『──そっか。さっきの俺とクロの繋がりは双方向だったか』
「はい。あ、でも、神となり、現世への顕現が叶わなくとも、私はユウトの幸せを見守らせてもらいますよ」
『それでも、寂しくなる』
「私もです。それでも、ユウトは早川姫と幸せになってください。罪悪感や自己嫌悪にとらわれてはダメですよ。しっかりと彼女と向き合えば、きっと上手くいきます」
『はは、わかったよ、クロ』
「そろそろ、お別れのようです。ユウトとゆかりの者たちのことは、お任せください。混沌たちは月へとつれていきます。その他の者たちはそれぞれを心配する者の元へ送りますね」
『もう、そこまで力を使いこなせるのか。クロは凄いな』
「たぶん、人には扱い難いだけなのだと思いますよ」
『ありがと。そういうことにしといて』
俺を見つめるクロが最後に微笑む。
悲しくも儚くも見えるその笑み。
それが、俺がクロを見た最後となった。