軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side 白羅ゆり2

「これが、 借り物狂騒(スカベンジャーハント) 。ユニークスキルの中でも、最高峰たる力……これこそ、色氏名筆頭たる、私にふさわしい力……」

恍惚とした表情を浮かべた白羅ゆり。しかし、その目と鼻からは、たらりと血が流れ出す。

もともと保持していたユニークスキル 空耳(ミスヒアリング) に加え、ユニークスキルでも最上位となる新たなる力、 借り物狂騒(スカベンジャーハント) の二つをその身に宿したことで、白羅ゆりの体はそれだけで限界を迎えようとしていた。

通常であればスキルを使用すると訪れる代償が、保持しているだけでその身を、そして寿命を削る。

今の白羅ゆりは余命、幾ばくもない状態となっていた。

ただ、こうなることを覚悟済みの白羅ゆりの顔に、焦りの色はなかった。

自らの命を賭けて、果たすべき宿願のためにすべてのタイミングをあわせ、そして謀ってきた。

その時が、今だったからだ。

ポタポタと顔を垂れる血を乱暴に拭うと、血に汚れた顔に満面の笑みを浮かべて、人生最後となるユニークスキルを発動させる白羅ゆり。

「 借り物狂騒(スカベンジャーハント) 、奪え、白銀の歌声を」

次の瞬間だった。白羅ゆりの顔面から大量の血が噴出し、それが一つにまとまっていく。やがてそれは、一匹の獣となった。

その獣が、ふわりと浮かび上がると白羅ゆりの頭上をゆったりと一周し、そのまま虚空へと解けるように消えていく。

ほんのわずかな時をおいて、再び獣が虚空より現れる。すると、その口には何かが咥えられていた。

銀色に光るそれ。

血でできた獣は白羅ゆりの顔の前まで舞い降りると、自らの口吻を、白羅ゆりの口の中へと押し込んでいく。咥えた銀色に輝くものを白羅ゆりへ呑ませるように。

喉奥までそれを押し込まれ、顎が外れんばかりに口を押し広げられた白羅ゆりは、白目を剥き、血だらけの顔が苦痛に歪む。

その両手の指は折れんばかりに広がり、叫ぶことのかわりにその苦痛を伝えてくる。

白羅ゆりが苦痛のあまり意識を失う直前、獣が血に戻りその姿が形を失う。大量の血を、口から吐きもどす白羅ゆり。

膝をつき、その全身が溢れだす血と吐瀉物で汚れていく。

しかし、白羅ゆりの瞳の輝きは、喜悦に満ち満ちていた。

「はぁ……はぁ……目黒、来て。そして、寝て、ください」

荒い息の合間に、目黒へと声をかける白羅ゆり。

虚ろな瞳をした目黒は言われるがまま近づいてくると、その身を横たえる。

息も絶え絶えの白羅ゆりが、大穴ダンジョン最奥の床に横になった目黒に、覆い被さるようにその身を投げ出す。

「さあ、我ら、色氏名の宿願が、果たされる時、です。白と、黒。長きにわたる進化律の呪縛。解き放たれる、のです。嬉しいでしょう、目黒」

「──はい」

妄言のようにささやき、呟く白羅ゆり。次の瞬間、その口からは、歌が聞こえてくる。

「通りゃんせ 通りゃんせ

ここはどこの 細道じゃ

天神さまの 細道じゃ

ちっと通して 下しゃんせ──」

最初はか細く。血と吐瀉物まみれの焼けた喉が奏でる歌は、酷くかすれ気味だった。

「──御用のないもの 通しゃせぬ

この子の3つの お祝いに──」

しかし、そのスキルが、白羅ゆりの命を対価に、歌に力を込めていく。

「──お札を納めに まいります

行きはよいよい 帰りはこわい──」

その歌声は、すぐにシロたちがかつてダンジョン公社本社の地下で歌い上げたのと遜色のないレベルにまで、強制的に引き上げられていく。

「──こわいながらも通りゃんせ

通りゃんせ」

そして、歌が終わる。