軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第二層

タロマロの口利きで、こんなに簡単で良いのかと驚くぐらいにスムーズに、赤8ダンジョンの第二層へと進むことを許された俺たち。

俺はそのままカメラを構えて、早川を撮影していた。

二層に入ると、その造りはがらりと雰囲気が変わっていた。病院っぽさが減り、どこかの地下室のような見た目の通路が続いている。

──どことなく、家の地下室を思い出すんだよな……

俺はあんまり好きな雰囲気ではないので、どことなく落ち着かない。

一方、早川は通路を進みながら色々とタロマロへ質問していた。

「──俺も女性配信者の方は専門家じゃねえからどうしても一般論になるんだがな。これだけは言える。キャラづけってのは、基本的にはやめた方が良い」

「え、そうなんですか! でも、人気のダンジョン動画配信者ってみんな、個性的ですよね」

タロマロさんは厳つい見た目のわりに世話好きなところがあるようだ。

早川の質問にも真摯に答えてくれている。

「それは否定しないがな。だが、よく考えてみろ。深層へと行くほど、キャラなんて演じている余裕はなくなるんだ。そんなことを気にしていたら、死ぬだけだからな」

「な、なるほど。確かに」

「それにダンジョン配信の人気の根幹は、そういった極限下でかいま見える、その人物の本質さ。ダンジョンの外で撮った動画と比べたら、そのリアルさは段違いだろ? だから素をさらけ出す方が大事なのさ」

「そう、ですね。私もそこが好きでダンジョン配信を見ている気がします……」

考え込む早川。

「まあ、俺からのアドバイスはこんなもんだ」

「っ! あ、ありがとうございました」

そういって、ペコリと頭を下げる早川。そしてタロマロが俺に向かって軽く手をあげて、指を上下させる。

「ちょっと撮影中止だ」

「はい」

俺は言われるがままに撮影を一度止める。

「今のをさ、ベテラン探索者にダンジョン配信のコツを聞いてみた、とかで上げるのが良いと思うぞ」

「なるほど、そういう切り口もあるんですね。配信て、面白いですね」

俺は素直に感心する。確かに同じ悩みを持つ配信者とかには見て貰えそうだ。

「え、良いんですか! チームの方に許可取りとか……」

「なーに。まあ、戦闘の場面とかだと色々とあるがな。今のは話しているだけだからな。大丈夫だろ」

「──タロマロさん、相変わらずですね」

心配そうに確認する早川に安請け合いするタロマロ。そんなタロマロに呆れた視線を向けるのは一緒についてきてくれた緑川だった。

「知りませんよ。チームの動画配信担当の人に怒られても」

「ははは。……怒られる、かな? あー、ごほん。とりあえず、ちょっと周囲を掃除するからここは撮影は無しな」

「わかりました」

俺はカメラを下に向ける。

どうやらモンスターが近くにいるようだ。カチャカチャという音が近づいてきている。

現れたのは人型のホネのモンスターだった。

しかしタロマロはあっという間にそれらを倒してしまう。

──タロマロさんて、有名人らしいけど、そんなに強くない? いや、まさか、そんなはずないよな。

俺はタロマロの戦いぶりに少し違和感を感じるも、つきつめて考えようとしたところで、別のことに気をとられてしまう。

「あれ?」

ツナギのポケットで、何か動いているような感覚がするのだ。

「うん? どうしたユウト?」

「いや、何でもない。──ああ。入れっぱなしだったか」

ごそごそとツナギのポケットに手を入れると俺の指先に触れる固い金属の感触。

それは前に蟻退治をしたときに見つけた、黄金の懐中時計だった。その蓋を開けてみる。

すると、止まっていたはずの時計の針が、高速で回転していた。