作品タイトル不明
お礼とお願い
「あれ、誰かうちの前にいる?」
「どうした、早川?」
「ほら、あれ。目黒さんじゃない?」
「本当だ。どうしたんだろうね」
俺たちはスーパーによって、自転車いっぱいに買い物の荷物を積んで歩いているところだった。
さすがにこの量の荷物を積んで自転車に乗っていくのはバランスがとれなさそうなので、俺はおとなしく自転車を押していたのだ。
その横を歩いていたいた早川が、大きく手を振って叫ぶ。
「目黒さーん!」
どうやら目黒さんは俺たちを待っていたのだろう。
早川の大声に反応した目黒さんが、こちらに軽く頭を下げるとゆっくりと歩いて近づいてくる。
目黒さんに会うのはこの前、早川を車で送っていってもらって以来だった。
──泊まりの時の制服とジャージとか、加藤さんが返しに来てくれたんだよな。
あの時のことを思い出して思わず顔が赤くなりかける。
俺は慌てて首をふるとその記憶を思い出すのをやめようと頑張る。
そうして、ちらりと横を見ると、当事者の一人である早川は、のほほんと普通の顔をしていた。
──あの罰ゲームの発起人さんは、全然気にしていなさそうなんだが……
早川の普通の顔を見て、俺一人があたふたしているのが急に馬鹿らしくなってくる。
──あ、そうだ。それにクロのドローンの機体に、新品を貰ったお礼も直接言えてなかった。
「ユウト君に早川さん。こんなところまで押し掛けてしまってごめんなさいです」
「そんないいんですよー、目黒さん。この前は送ってくれてありがとうございました」
早川が朗らかに告げる。
「目黒さん、この前は早川を送ってくれてありがとうございました。その、ジャージと学生服は無事に加藤さんから受けとりました。あと、クロの機体、新品を頂いて本当にありがとうございました」
俺も早川に続いてお礼を言う。
「ユウト君、直接お返しに行けなくてごめんなさいです。クロさんの機体は気にしないでください」
「いえ、そんなわけには。高いものですし。あ、せめて今度また何か美味しそうな虫が捕れたら差し入れに持っていきますね」
「む、虫、ですか。あ、ありがとうございます」
「え、ユウト。そんなことしてるの……」
「な、なんだよ。いいだろ」
「虫ってあれでしょ。ユウトの家にわく虫でしょ? うわー」
ドン引きした様子の早川。俺は思わず反論しかけるが、目黒さんが虫食好きだと、虫嫌いの早川に俺の口から伝えるのが憚られて、思わず口ごもってしまう。
「あの、ユウト君」
そこで目黒さんが間に入ってくれる。
俺はほっとしかけるが、そこで目黒さんから言われたのは虫食好きの話とは全然関係のないことだった。
「実はおりいって、頼みたいことがあったんです。それで不躾かとは思ったんですが、ここで待たせてもらってたんです」
そう告げる目黒さんはこれまで見たことがないぐらい、真剣な顔をしていた。