軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

緊急避難

【side クロ】

「ユウト様が、ダンジョン&キングダムを始められるようです」

クロが、緑川と抱き合っているオボロに告げる。近くには気まずそうにそっぽを向いている加藤もいた。

クロたちは、外へとユウトにより転移させられた混沌たちと共に行動していた。

現在、かつての大穴ダンジョンの近郊に、あだむといぶの指揮のもと、ダークコボルト達によって新たな拠点が設営中だった。

「それは、つまりどういうことだ?」

加藤が近づいてきて、話に加わる。

「私とオボロ、それに緑川さんと加藤は早急にここから離れるべきかと」

「っ! 確かに。私たちがここにいるのが、ユウト君に知られていないのなら、それは維持すべきね。ただ、迎えのヘリは要請済みだけど、まだしばらくかかる──」

オボロの腕の中で、緑川が自らの腕時計を確認する。

「一刻の猶予もありません。オボロ」

ユウトの家へと潜伏させている分体ドローンからの情報を参照し告げるクロ。

「わかっておる。いちいち指図するでない、クロ」

「では緑川さんを。私は加藤を」

「あだむ達とイサイサ達はどうする?」

「問題ないでしょう。察するかと」

「わかった」

そういって、抱き締めていた緑川をひょいっとお姫様抱っこするオボロ。

クロも分体ドローンを呼び出し自身にまとわせ黒雪だるま化すると加藤の襟首を掴む。

「首っ、首絞まるから、クロ」

「失礼」

脇の下に横にして加藤を抱えるように持ち直すクロ。

そのままクロとオボロが上空へと向かって上昇していく。

「上なのか」

「はい。ダンジョン&キングダムの現在の 支(・) 配(・) 範(・) 囲(・) からすると、上空へと向かうのが最短です──支配範囲を、抜けました。無事にユウト様には認識されておりません」

「やれやれ、だな」

「あのー」「これ、いつまで続くんだ?」

運ばれている人間二人からの質問に、クロが淡々と答える。

「このまま家に帰ります」

「そうだな。異論はない。ヘリなど遅すぎるでな。良かろう? マドカ」

自らの腕の中にいる緑川に向かって、どこか優しげに、そして、甘い声で問いかけるオボロ。その問いかけに合わせて少しだけ、ぎゅっと抱き締める力を強くする。お互いの接する面積が増えるように。

「──うん」

問いかけられた緑川も、オボロの腕の中で頬を染めて返事をする。

「あー、クロさん、クロさん」

「何ですか、加藤」

「一応、俺はクロの義理の父親設定、だよね」

「戸籍上はそうです」

「あの、持ち方は、ずっとこの荷物持ちなの?」

「そうです。問題はないでしょう」

「いや、問題はあるかと──ぐふむっ」

話の途中で加速するオボロとクロ。向かう先は、ユウトの自宅の隣。緑川達の家だ。

表には出してはいなかったが、クロは実のところ、内心、焦りを感じていた。

魂の簒奪者との争いにおいて、無数の分体ドローンを損傷した関係で、現在クロの使役する分体ドローンの個体数はかなり減少してしまっている状態だった。

ユウトの自宅に潜ませた一体を除けば、現在黒雪だるま化して加藤を抱え空を飛ぶのがギリギリだった。

その焦りは、加藤の話を遮る程度にはクロの行動を性急なものにしていた。

「杞憂であればよいのですが──」

「ぶふぅっ──クロ、何か言った? ふげっ」

高速で移動しているために吹き付ける強風。

オボロは自身のスキルと体でしっかり緑川を保護していたが、余裕のないクロは特に措置は施さず、風は加藤に吹き付けるままだった。

それゆえに、クロの独り言は風に紛れて加藤にはよく聞き取れなかったのだった。

そうしているうちに、ユウトの自宅と緑川達の家が見えてきた。