軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ヘリ

ヘリがローター音を響かせ、遠ざかっていった。

時を遡ること少し前。双竜寺がダンジョン公社支部を破棄したタイミングで訪れ、大穴ダンジョンへと自身を急いで送れと告げたクロ。しかし、オボロが必要だという以外に、その具体的な理由は告げられないと、クロは口を閉じてしまった。

通常であれば、そんな理由もわからないまま、虹の地平へのヘリの航行など、当然不可能だ。

しかし、ダンジョン公社としてはクロには大きな借りがあった。それも複数個の。

そんな負い目もあって、無理を通すと決断した双竜寺。

関係各所に頭を下げまくり、これまで双竜寺及びダンジョン公社の面々が構築してきたコネと貸しを最大限使う。

そうして、国土を覆う例の雨が止んだ日の深夜には、ヘリが出発できる状況にまで漕ぎ着けていたのだ。

そこにはいくつもの奇跡があった。夜間に、人類の廃棄地区たる虹の地平のヘリの航行を請け負える人材の確保。

そして、各省庁のお役所仕事とは思えないほどの承認速度。

その背景にあるのは当然、ユウトとクロの存在感だ。黒き黒とその影──人類の行く末を左右するほどの力を持つものとしての、ユウトとクロの存在が、それ程、重要なものとなっているという証左だった。

そうした果てに準備された、輸送ヘリ。

夜間ということもあり、スポットライトで煌々と照らされたヘリへと、クロが乗り込んでいく。

その背後には加藤の姿があった。

ダンジョン公社からのお目付け役として、同行することとなったのだ。

悲壮な顔でヘリへと乗り込んだ加藤を見送ったのは、双竜寺と孔雀蛇に白羅ゆり。そしてダンジョン公社のスタッフたちだ。

双竜寺は、機能停止してしまったダンジョン公社支部の再構築、そして、早川と目黒がユウトの自宅にお泊まり中という重要事態。さらには、翌朝までにユウトの自宅までの道を復旧させようと奮迅の働きをしている各機関の監督業務と、手を離せない案件が山積みだった。

責任者として、ダンジョン公社を離れられない双竜寺は、加藤に託す決断をしたのだ。

そんな重圧に悲壮な顔をした加藤を追う影があった。

イサイサだった。まるで散歩でもするかのような軽い足取りでヘリへと乗り込んでいく。

見送りに来ていた孔雀蛇の横を通る際に、ここまで案内してくれた感謝を告げるイサイサ。

ユニークスキルを持つ加藤についていってみる、と軽い調子で続ける。

それが果たして、イサイサの真意なのか、はたまたなにか隠しているのか。白羅ゆりを含め、その場にいた誰にも判別できなかった。

しかしどちらにしろ、加藤についていって大穴ダンジョンへと里帰りするというイサイサを止めようとする者も、止められる者も、人類側には存在しなかったのだ。

そうしてイサイサがヘリへと乗り込んでいくと、それに続くようにしてシロたちも、わらわらとヘリへと入っていってしまう。

そして、イサイサ同様、シロたちの同伴についてもクロは特に拒否をしなかったのだ。

そうなるともう、誰にも止められなかった。

こうして当初より大所帯となったことで、パイロットが顔を青ざめさせながらも、ヘリは飛び立って行ったのだった。

様々な思惑が、そのうちに渦まきながら。