軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作戦概要と乙女の秘密

元会議室はまるで、祭壇のように変貌していた。

ハラドバスチャンの内部にあだむたちによって設置された祭壇に、どこか似ている。

ただ違うのは、ハラドバスチャンの祭壇がモンスター素材たる血肉によって作られたのに対し、ダンジョン公社の地下に設置されたそれは、クロによるワケミタマで生成させたドローンが無数に積み重なって出来ていた。

その周囲を食事を終えた十三人のシロ達が再び手を繋ぎ囲んでいる。

声を合わせて歌われているのは、また通りゃんせの歌。

先ほどよりも成長を遂げ、お腹一杯栄養を補給したシロたちの声はより声量を増し、室内に朗々と響き渡っている。

そして、その中央、祭壇の上に立つのはクロだった。

ちょうど良いサイズの服の調達が間に合わなかったのか、その身を包むのはテーブルクロス用の白い布。それを頭からかぶり巻き付けた姿は、表情が完全に隠れている。まだ本調子ではないのだろう。その両手の下からはワケミタマによるドローンが支え直立を保っていた。

その姿は、不思議な威圧感とカリスマ性のようなものを放っていた。

それを補完するのは、イサイサとシロ達がクロへと向ける恭しい服従の態度だった。

特にイサイサは、この儀式めいたことをクロが始めた時から腹を見せて寝転ぶ姿勢で、最大限の敬意をクロへと示していた。

そんな混沌とした状況下で、事態は突き進む。

皆の視線の先であるクロ。その足元のドローンが集まって形成された祭壇からは、いくつものドローンが飛び立ち、クロの周囲を旋回すると再び足元の祭壇へと戻っていくことを繰り返す。

「──目黒への指示は終了した。イサイサ殿、本当にこれでいいのか」

電話を終えた双竜寺の質問。それに腹を見せたままイサイサが答える。

「ご苦労様です。はい、大丈夫です。シロ達が再びあの歌で元凶たる進化律を、今度こそ呼び出します」

シロ達はそのイサイサの説明に答えるように力強く歌い続ける。それに双竜寺は、水の竜となった蛇のような物は、ハズレで進化律の影だとイサイサが言っていたのを思い出す。

「本当に、そんなことができるのか?」

「ほぼ確実に。力を増したシロ達。そしてクロコの力を取り込んだクロ様が、その制御をされているのです。それに、白羅ゆりのミス・ヒアリングで進化律は貪欲に偉大なるお方の魔素に染まった供物を受け取ったらしいですよ。十分なフックになります」

「ミス・ヒアリング?」

「あっ」

「もう、イサイサさん。乙女の秘密をばらすだなんて」

「そうか、自分自身のユニークスキルを空耳することで、スキルの効果すら変えたのか」

「さすが双竜寺課長。ご名答です。そんなところが素敵ですわ」

冗談めかして告げる白羅ゆり。食事の約束を取り付けた後だからか、どこか余裕のある態度だった。

「ごめんなさい、ミスヒアリング。まあ、そんなわけで、クロ様はクロコの保持していた全てを回収されています。なので、このあとはそのうちの一つ、回収したユニークスキル 義体生成(ワンタイムボディ) で呼び出した進化律を害虫の姿にします」

謝ると、すぐに楽しそうに続けるイサイサ。

それはまるで、進化律が自ら授けた力が進化律自身に向かって使われることを面白がっているかのようだ。

「それを、目黒の元へ派遣したワケミタマのドローンを通してユウト君の家に顕現させると」

「そうです。あとはお礼状を対価にお願いして、ユウト様が害虫を叩き潰してくだされば、この雨はすっかり止むでしょう」

「──本当に、それだけか?」

「というと?」

「……」

お腹をさらしたまま、こてんと首を傾げるイサイサ。

それを無言で見つめる双竜寺。

そうしているうちについにシロ達による二度目の通りゃんせの歌が終わりを迎えようとしていた。