軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ミッション開始

「はい、確かにユウト君のお礼状は肌身離さず持ってますです。……え、あの。すいません。もう一度良いですか──それは、あの、即時ということです? 今すぐに、ユウト君のお家へ行けと言うことです? ……作戦支援ドローンはすでにこちらへと到着している……」

目黒は、ダンジョン公社からの緊急入電を固定電話で受けているところだった。

室内にいるにも関わらず、いつの間にかその体は汗でびっしょりと濡れていた。

目黒は特に汗っかきというわけでは無い。どちらかと言えば冷え性なのだが、双竜寺からの指令はそんな体質を軽く越えていた。

「その、あの、てすね。ユウト君のうちはいま、行くには差し障りがあるかと思うのですが……」

目黒に伝えられたのは、国土を救うための最重要ミッション。それも二つの意味で、だ。

国土を横断するように展開する線状降水帯は、どうやら進化率の化身たる水の竜が、因果律による魂の亡霊たる炎のドラゴンと対消滅した余波で産み出されたもの。

その雨脚はこれから一層激しくなり、降雨量は観測史上最高を軽く凌駕することが予想されている。

その雨がもたらすであろう被害は想像もつかない。そして何より、国土のほとんどを覆う雨雲から逃げる場所すらなかった。

そしてその手段を指示したのが目覚めたクロ。その機嫌を損ねることは、どれ程の厄災となるか考えたくもなかった。

ただ、問題は、今は、今だけはユウト君の家に行くのは非常に気まずい事態が起こりうる可能性が高い、ということだった。

「あの、せめて内部の様子はわかりませんか?

ほら、それこそクロさんのドローンとか──え、ダメ? 侵入出来ない?」

電話越しに伝えられたのは、クロコの沈黙と、新たにクロによるワケミタマによって生成されたドローンが、ユウトの自宅たるダンジョンへ侵入出来なかったという事実。双竜寺からの更なる念押しののち、電話が切れる。

そこで、目黒は異変に気がつく。

「あ、この音って……」

ユウトの自宅ダンジョンへ侵入出来なかった何体ものクロ製のドローンが、目黒のいるダンジョン公社支部の建物の周囲を無数に旋回していたのだ。

そのローター音が激しい雨音を貫いて、室内にいる目黒に届くほどの、数。

それはまるでグズグズしている目黒を急かしているようだった。

確認するため、そっと一階へいき、恐る恐るカーテンをめくる目黒。

「ヒッ」

その光景は、悲鳴を漏らしても仕方ないものだった。

ブルブルとその場で震える目黒。しかしそのローター音は激しさを増すばかり。

「嫌だ、よぅ」

目黒はまるで子供のような泣き言を言いながらも、ブルブルと震える手でレインコートを羽織ると、肌身離さず持っているお礼状があることを今一度確認する。

そして、嫌々雨の中へと踏み出すのだった。