軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

愛ゆえに

「それで、条件付きでの交渉と聞いてたんだが」

「もう、すでに双竜寺さんが受けていただいたお願いのなかに含まれますから、それは大丈夫です」

そういって、顔を少し上に向けるイサイサ。

「ユニークスキルの香り。少し焦げ臭いけど、使い込まれていて、ビンテージジーンズのような鼻触りの芳香。ハードラックですね」

ばたばたとローター音を響かせ輸送ヘリが近づいてくる。空中でドアが開き、人影が見えたかと思うと、そこからロープがぷらんと垂れ下がってくる。

緑川が、懸垂降下して降りてきた。

「──遅くなりました、課長」

「よく来てくれた」

器具をはずしている緑川に労いの言葉を告げる双竜寺。ヘリが去っていく。

「イサイサ殿、紹介させてください。こちらがダンジョン公社所属の緑川です」

「はじめまして、緑川さん。あなたの思惑のお陰で私たちが偉大なる御方に産み出されたと言っても過言ではありません。どうもありがとうございます」

そう、微笑みながら握手を求めて片手を差し出すイサイサ。

「っ! どうして……それを?」

緑川は顔をひきつらせて、しかししっかりとそのイサイサの手は、握り返す。

最も近くでユウトの起こす事象の対応に奮闘してきた経験が、彼女を支えていた。

「私たちの祖たるあだむは、あらゆる臭いをかぎ分けます。そう。例えば……脳内の神経伝達物質の香りまでも、かぎ分けられる」

緑川と双竜寺の頭蓋骨を順々に眺めながら告げるイサイサ。

まるで彼女までがその中身をかぎ分けているのではと錯覚させられてしまう。

「……それは、人の心をその鼻で読めると?」

「そこまでは私もわかりません。私はただのコボルドに過ぎませんので、そこまでは嗅げないですよ。ただ私たちが生まれた経緯の背景は、皆が共有しています。因果律と進化律の争いの系譜。緑川さんとオボロさんの……ご関係性。そして、クロコのやらかしも」

絶句した様子の緑川と双竜寺。二人が話し出す前に、イサイサは続ける。

「その事はおいときましょうか。それで双竜寺さんは私のユニークスキル『 博愛(ラブ) 』の使用をご覧になりたいのでしょう。緑川さんはこの後、大穴へと挑戦されるつもりみたいですね」

「──そこまでは、わかるのですね」

なんとか言葉を絞り出す緑川。結局二人とも目の前の小柄なコボルドに終始圧倒されっぱなしだった。

「愛はとても、尊いものです。私は応援しますよ。緑川さんと、オボロさんを。さあ、こちらに。 博愛(ラブ) を」

地面に並べられた妊夫たちの真ん中で、そう告げながら両手を広げるイサイサ。

それを跨ぎながらゆっくりと近づいてきた緑川へ、イサイサは慈母の表情で優しくハグするのだった。