軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四部 プロローグ

「ユウト、こちらが届いていました」

俺はクロの声にゲームを一時中断して振り返る。

ゲーム画面の中では、ちょうどあだむが斧を掲げて進軍の雄叫びをあげたところだった。ダークコボルドたちを中心とした、黒々とした一団が、ピタリと歩調を揃えて進み始めている。

「何か注文してたっけ?」

俺は大きめの段ボールを持ったクロに尋ねる。

「前に、そのゲームの抽選の件でお話しした際ですが。テストプレイも兼ねているという件は、覚えていらっしゃいますか」

「……なんとなく」

確かに、そんなようなことをクロが言っていた気がする。

「そのテストの一環で、どうやらアップデートがあったようです。こちらを」

クロが取り出したのはヘルメットとヘッドセットの中間のような機械。

「……もしかして、VR?」

「そのようですね。しかもフルダイブタイプと書かれています」

同封されていたらしき説明書を読むクロ。

「本当に? それはすごいね」

受け取ったメタリックに輝くそれを俺は軽く撫でる。ひんやりとした手触り。そして、意外と重い。

「これって、ダンジョン&キングダムの中の世界を体験出来るってこと?」

「そのようです。ゲーム内のキャラに同期して操作、及び感覚も共有されるようです」

「へぇー」

「同期してない間は、AIによる自律操作に切り替わるようですね」

「それは助かる」

表面上、冷静を装っているが、内心ではとても興奮していた。

これまでその発展を見守り手助けするだけだった世界を仮初めとはいえ体感出来るのだ。ワクワクしない方がおかしいだろう。

「明日は高校休みだし、もう少しぐらいなら良いかな……」

俺はそんなことを呟きながら、VRのヘッドセットのセットアップを行っていく。クロのお手伝いもあって、とてもスムーズだ。

「とりあえず、布団で良いか」

俺はいつも使っている布団を持ってくると、ヘッドセットを被って横になる。

意識が遠退くような感覚。

俺はダンジョン&キングダムの世界へとダイブしていった。

◇◆

「おっと──」

急に開けた視界。思わずよろけた体を何か柔らかな絨毯のようなものが受け止めてくれる。

「キャラ選択とかないのか。ステータスとかメニューは、っと」

床についた、ふさふさの灰色の小さな手の上に、メニュー画面が表示される。ダンジョン&キングダムで見慣れたユーザーインターフェースだ。

それをみて、ダンジョン&キングダムの世界にフルダイブした実感がわいてくる。

いつもの画面に、同期キャラの項目が追加されていた。

「キャラの名前は、ユシ、か。種族はグレーコボルド? イレギュラー個体って書かれてる。こんな子いたっけ? 生後二時間──カラドボルグの息子か」

自分の体を見回すとどうやらキャラクターのパラメータに間違いはなさそうだ。

体毛が灰色だし。

俺はメニュー画面を手の甲の上から視界の隅に移動させて固定しておく。

改めて周囲を見回す。俺が今いるのは、カラドボルグと闇の居住区画の一つのようだ。周りいるのは、小さなダークコボルドたちだけだった。多分、同じタイミングで生まれたユシの兄弟だろう。

「カラドボルグと『闇』はダークコボルドたちを率いて行っちゃったんだっけ? 生まれたばかりの子供は放置?」

俺は立ち上がりながらゲームとはいえ、そんなところが気になってしまう。

ユシは生まれたばかりの設定のようだが、体を動かすのに支障はない。それがイレギュラー個体だからなのか、成長の早いコボルドならではなのかと考えるも、周りの兄弟達がごろごろと寝ているのを見ると前者なのだろうと感じる。

兄弟たちの周りをよく見ると細々としたお世話をするようの道具らしきものがあるのがわかる。

多分、上の年の兄や姉達が何人か交代で世話をしてくれるのだろう。いまはたまたま不在なだけのようだ。

「まあ、ゲームだしな。動けないと意味ないもんね。それより折角だから、ハラドバスチャンの中を見てまわろうっと」

俺はワクワクとしながら、寝ている兄弟たちを起こさないように、自然と足音を立てないことに気をつけながら、部屋を出るのだった。

視界の隅に固定したメニュー画面に、いつの間にかスキル「忍び足」を獲得、の表示が出ていた。