軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、稽古で村が吹き飛びそうなんだが

ラスタール村の外れには、魔物も出現しない広場がある。

僕とファルアスの稽古は、その場所で執り行うことになった。

「ごくり……。す、すごい勝負が見られそうね……」

「ええ。こんな戦い、二度と見られないと思います……」

そう呟くのはカヤとエム。

僕たちの稽古を是非とも見たいと言ってついてきた。

彼女らだけじゃない。

他にも多くの村人が、対峙する僕とファルアスを囲んでいる。

すごい人数だな。

そんなに面白いものでもなかろうに。

「……ふぅ」

僕は一息つくと、剣の柄に手を添える。

思いがけず多くの人が集まったようだが――まわりは関係ない。

僕は、僕のやるべきことを行うのみ。

「ふふ、良い目だ」

初代剣聖もどこか満足そうだ。

「世辞でもなんでもなく、立派な《剣聖》の目をしている。アリオスならば、剣聖のさらに上を目指せそうだな」

「剣聖の、その先……?」

考えたこともない世界だった。

いままでの僕にとって、目指すべきゴールが剣聖リオン・マクバだったから。それより上の境地なんて、存在することさえ知らなかった。

僕が黙考していると、ファルアスは右腕を前方に突き出しながら言った。

「まあよい。それについては追々話すとして――そろそろ、始めるとしようか」

その瞬間。

突き出されたファルアスの右手に、突如として銀色の剣が出現した。

余計な装飾など一切ない、いたってシンプルなデザインだが……どこか神秘的な雰囲気を感じる。

「神剣レアドーム。女神より拝借した剣でな。強力な聖属性を秘めている」

「聖属性……」

なるほど。

以前の僕もそうだったが、思念体の姿では物理攻撃が通らない。だから剣そのものに魔力を通すことで稽古を可能にするのだろう。

「ちなみに、私が着ている服にも女神の細工が施されている。アリオスの攻撃もきちんと通るから、存分に剣を振るうといい」

「……はは。至れりつくせりですね」

「当然だ。アリオスのために私たちは入念な準備を行ってきた。――そして」

……轟! と。

この刹那、ファルアスが放ってきた迫力を、僕は一生忘れることはないだろう。

ファルアスが剣を握っただけで。

ファルアスが気合いを込めただけで。

周囲の地面が大きく揺れ出した。

彼のまわりを蒼色の霊気が立ち上り、あまりの熱気に近辺の空間が歪んで見える。

伝説では、ファルアスは単体で中隊を全滅せしめる力を持っていると聞いていた。

……とんでもない。

ファルアスがその気になれば、さきほどの第19師団――7000人の規模を誇る集団でさえ、ひとりで殲滅できる気がする。

「アリオス。私たちはおまえに賭けている。だからこそ……私のすべてをぶつけさせてもらうぞ」

「ご先祖様……」

すごい。

やはりファルアスはすごい。

あの元剣聖リオン・マクバとは、なにもかもが根本的に違う。

全力で向かわねば、決して勝てる相手ではない……

スキル発動。

チートコード操作。

選ぶ能力は二つ。

攻撃力アップ(小)にて、自身の攻撃力を上げて。

さらに、《対象の攻撃力の書き換え(小)》を用いてそれを四倍に引き上げる。

以前アルド家の屋敷をぶっ壊した離れ業だが、あの初代剣聖が相手なのだ。わずかたりとも油断できない。

「おおおおおおっ!!」

そして気合いを込めると、ファルアスのときと同様、一帯が激しく揺れ出した。

「わわっ……!」

「これがアリオスさんの本気……!?」

「やべえ、どっちも化け物だ!! こりゃやべえっ!!」

いつしか僕の周囲にも、ファルアスとまったく同質の、蒼色のオーラが発生していた。

「…………」

群衆の歓声さえ、もはやまったく気にならない。

見据えるはただひとり、伝説上の剣士――ファルアス・マクバのみ……!

「……よし」

自身のステータスが底上げされたのを確認し、僕は戦闘の構えを取る。

「ふふふ、はっはっはっは! 素晴らしい! 素晴らしいぞアリオス! これは数千年ぶりに心躍る戦いになりそうだ!」

「……いきますよ、ファルアスさん」

「おう! 本気でこい!」

ファルアスの快活な返事に。

僕は一切の遠慮もなく躊躇もなく、疾駆を開始する。

「はああああっ!」

そして僕の振り抜いた剣が、ファルアスの神剣によって受け止められた。

それまでの間、0.07秒。

やや遅れて金属音が鳴り響く。

「…………は!?」

「え……!?」

観衆たちがこの一撃目を認識するよりも早く、僕は次の攻撃を敢行する。

――これはほんの挨拶代わりだ。

まだまだ、まだまだ先はある!!

「さあ来いアリオス! おまえはまだまだそんなもんじゃなかろう!!」

「はい! どんどんいきます!!」

初代剣聖の発破に、僕のやる気は最高潮に達した。

本能の赴くままに剣を振るう。

最高の剣技を徹底的に叩き込む。

ファルアスはそれでも動じない。

僕の剣を次々と受け止めていく。一歩たりとも退く様子がない。

そしてファルアスから繰り出される技もまた、僕によって防がれる。

それは狂おしいほどに至福の時間だった。

一撃一撃が激突するたび、低い轟音が発生する。

耳をつんざく金属音が響きわたり、衝撃波が広場を襲い尽くす。むろん観衆には配慮しているが、僕たちが剣を振るうたびに木々はすっかり薙ぎ倒されてしまった。

「ちょ、ちょっと!!」

「戦争どころの話じゃないんですけど!?」

「王国軍が来る前に稽古で村が滅びそうなんですがそれは!!」

慌てふためく村人たちだった。