軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、外れスキルだと思われていた《チートコード操作》が化け物すぎるんだが

「ん……?」

気づいたとき、僕は真っ白の空間にいた。

周囲にはなにもない。

ただ虚無の空間が広がっているだけ――

「ここは……どこだ……?」

知らず知らずのうちにそう呟く。

僕はさっきまでヴァニタスロアと戦っていたはず。みんなと共闘して、トドメの一撃を決めて、それで……

「アリオス」

背後から女性の声が聞こえた。

その声は――僕が想像していたものと同じで。

「女神様……ですか」

「はい。……ヴァニタスロアが倒れたことで、すこしだけ力を取り戻したようです」

振り向くと、そこにはやはり女神ディエス。

かつて《映像》で見たときと変わらない、この世のものとは思えぬ美しさを持つ女性だった。

そして。

「――よくやったぞ。真の剣聖、アリオス・マクバよ」

続いて現れるのは、やはり見覚えのある男。たくましい身体つきに尋常ならざる風格を持った、マクバ流の創始者。

初代剣聖、ファルアス・マクバだった。

「ふふ、こうして直に会うのは初めてだな。会いたかったぞ。我が子孫よ」

「ご先祖様……」

なんだろう。

リオンなどよりも、圧倒的な優しさを感じる声音だった。

「ご……ご先祖様か」

ファルアスはむず痒そうに後頭部を掻く。

「そう固くならなくていいさ。長い時間が経ったとはいえ、血の繋がりのある者同士。気楽に呼んでくれや」

「気楽に……」

うーん、さすがにそれこそ恐れ多いような。

だって初代剣聖だぞ?

リオンをはるかに超越した、それこそ伝説の人物だ。

「ふふ、あなたのそういうところ、オルガントにそっくりですね」

「ええい、あの女好きと一緒にするな!」

優しく呟く女神に、突っ込みをいれるファルアス。

オルガント……というのは初代国王か。

会話内容がとてつもなく壮大だな。

改めて、僕の場違い感が伝わるというか。

「っとと、そんな下らねえ話をしてる時間はないんだよ」

ファルアスはふいに表情を改めると、僕に右腕を差し出した。

「よく頑張ってくれた。おまえこそ俺の誇りの子孫で――真の剣聖だ」

「はは……ありがとうございます」

苦笑を浮かべつつ、握手に応じる僕。

「でもあいつを倒せたのは僕だけの力じゃありません。レイにカヤさん、ユウヤさんにラッセンさんもいたからですよ」

「おう。その謙虚さがあれば、おまえさんはまだまだ強くなれる。いまよりも……ずっとな」

いまよりも、ずっと。

そうだな。

正直、チートコード操作というスキルはまだまだ伸びしろがある気がする。

むしろ現在の能力は序の口にすぎないような。

そんな予感がするんだよな。

ほんと、外れスキルだと思われていたのに、化け物すぎるんだが。

「でも……あなたたちは大丈夫なんですか? なにか僕に託そうとしているように思えましたが」

「そうだな。ちょうどその話をしようと思ってたところだ」

ファルアスは表情を引き締めると、厳かに告げた。

「アリオス。おまえにはさらに強くなってほしい。きたる災厄に備えてな」

「災厄……」

穏やかじゃない言葉だな。

「俺たちがこうして思念体だけ残せているのも、災厄に備えてのことだ。ま、《転生術》の劣化版みてえなもんさ」

「はは……すごいですね。スケールが大きすぎて……いきなりは理解できないですが」

「まあ、無理もないでしょう」

女神ディエスが薄く微笑む。

「 そのとき(・・・・) がきたら私たちから伺います。お願いします。私たちが頼れるのは……あなたしかいないんです」

「ええ……わかりました」

僕が静かに頷くと、女神とファルアスの身体が唐突に薄れ始めた。

「もう……時間ですか」

「はは。すまねえな。そう長くは持たねえんだ」

ファルアスは申し訳なさそうに苦笑を浮かべると、力強く僕の肩に手を置いた。

「――嬉しかったぜ。俺の子孫に、おまえさんのような有望な男がいてよ」

「ファルアスさん……」

「頼む。おまえさんなら、きっと――」

そこまで言いかけて、女神とファルアスは姿を消した。

「…………」

視界が元に戻る。

真っ白だった景色が、見覚えのあるバトルアリーナ会場に戻っていく。

あの二人が言っていたように、ヴァニタスロアは無事倒せたようだ。会場のほとんどを埋め尽くす形で突っ伏している。

レイも、カヤも、ユウヤも、ラッセンも。

みんな無事のようだ。

さすがに疲れているようだが、重傷を負った者はひとりもいない。

――勝った。

僕たちは勝ったんだ。

パチパチパチ、と。

どこからか拍手が聞こえた。

そこからはもの凄い勢いで拍手が拡散されていき、会場一帯が大きな音で埋め尽くされる。

ヴァニタスロアとの戦いはそんなに時間がかからなかったからな。まだ多くの観客が残っていたんだ。

「うおー!! すっげえ!」

「きゃーアリオス様ー! ありがとう!」

「助かったぞー!!」

「かっこよかったよー!!」

いまとなっては、ほとんどの観客が僕の強さを認めてくれたようだ。投げかけられる声が、さっきとは全然違う。

――みんなを守れてよかった。

すこしは頑張った甲斐があるというものである。

だがそんな僕の感慨を、一瞬にして吹き飛ばす奴がいた。

「素晴らしい! さすがは私の息子だ! やはりおまえこそマクバ家にふさわしい、私はわかっていたぞ!!」

剣聖リオン・マクバだった。