軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、ピーチクパーチクするな

「お待ちなさい」

リオンたちが立ち去る寸前、レイミラ皇女が彼らを引き留めた。

「その決闘、私たちには受けるメリットがありません。対価を要求します」

「対価……ですか」

立ち止まるリオンに、レイミラは「当然です」と腰に両手をあてがう。

「まずはアリオスに一年分暮らせるだけの貨幣を。そして――私がさらに長い期間、王城を離れてもいいことを保証してください」

「へ……」

ダドリーが間抜けな声を発する。

「レ、レイミラ様。それって、これからもアリオスと過ごすってこと……ですか……?」

「そうですけどなにか」

「しかし、レイミラ様は俺が護衛する予定の――」

「はい? なんですか? もう一度言ってもらえるかしら? あまりにボッソボソの声で聞き取れませんでした」

「いえ……なんでもないです……」

当たり前と言わんばかりに澄ましているレイミラ。

反してダドリーは不満そうではあったが、なにも言い返さない。さっきのレイミラがよっぽど怖かったんだろうな。

「レイミラ皇女殿下」

リオンもすこし困った表情だ。

「前者の《一年分の貨幣》については保証できます。――が、後者については私たちではなんとも……」

「駄目なのか?」

言いごもるリオンに、僕は追い打ちをかける。

「ならその決闘、改めて受けるかどうか考えるが」

「ぬっ……」

「あら……」

レイミラが意外そうに僕を見てきたので、小声で耳打ちした。

(まあ、僕だってやられっ放しは嫌だからね)

(ふふ……嬉しかったよ♡ アリオス)

追い打ちをかけられたリオンは苦虫を噛み潰したような表情をしていたが、数秒後、諦めたように呟いた。

「……承知しました。レイファー殿下に掛け合ってみましょう」

「ああ。よろしく頼む」

このようなやり取りの末、リオンとダドリーは去っていった。

ともあれ、決着の日は一週間後。

王都の《バトルアリーナ会場》。

大勢の人が見ている前で、僕とダドリーは真剣勝負を行うことになる。

僕が僕であるためにも、実家との縁を切るためにも――ここは負けていられない。

「大丈夫ですよ、アリオスさんなら」

そう言ってくれたのは、Aランク冒険者のカヤ。

「初めてお会いしたときから思いました。アリオスさんこそ真の剣聖で……これからの時代に必要な人だって。だから怖じ気づかないでください。応援しにいきますから」

僕の両手をぎゅっと握りしめてくれるその手は、とても温かかった。

実家を追放された後は、人の温もりを味わうことが増えた気がする。

「ありがとう。相手は剣聖候補だからな。僕も油断しないでいくよ」

「ふふ、はい♡」

満面の笑みを浮かべるカヤ。

「それで……決闘が終わったら、ちょっと二人で出かけたいなーと思ってるんですが……よろしいですか?」

「うん……? 僕は構わないが……」

「ちょっとカヤ! ドサクサに紛れてなに言ってんのよ!」

そう突っ込みを入れたのは、レイミラ・リィ・アルセウス――改め、僕の幼馴染みレイだ。

「戦いが終わったらまず私がデートするの! カヤは駄目!」

「なんでよ! あんたは王族なんだからもっと控えなさい!」

「ふーんだ。いいんだもーんだ!」

そのままピーチクパーチク騒ぎ始めるレイとカヤ。

なにやら火花が散ってるな。

よくわからんけど。

「ほほ。モテる男は辛いのぅ」

ギルドマスターのアルトロも苦笑を浮かべている。

「アリオスよ。お主を見ているとな……初代剣聖の伝承を思い出すんじゃ」

「初代剣聖の……?」

「うむ。いかに剣の才に溢れていようとも、一時も慢心せず、さらに強くなっていく……。まさにお主じゃの」

「はは。それは……さすがに恐れ多いですよ」

「またまた、謙遜しおってからに」

アルトロは僕の背中を優しく叩くと、ふっと笑って言った。

「困ったことがあったらなんでも言うがいい。お主は――我がラスタール村にとって大事な住人じゃ」

「アルトロさん……ありがとうございます」

「私からも……改めてお礼させてください」

今度はメアリーが歩み寄ってきた。

「アリオスさんは、私にとってもかけがえのない人です。あのまま助けてもらえなかったら、私……」

「メアリー……」

「メイドの分際で生意気かもしれませんが……ぜひともお礼させてください。戦いが終わったら、二人で……」

「ちょっとメアリー! なに抜け駆けしようとしてんのよ!!」

「ええっ!?」

すかさずレイが入り込んできて、一帯はより騒がしくなった。

「まったく、やかましいのぅ……」

そう呟くアルトロも、どこか微笑ましそうに僕たちを見つめていた。