軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

真実へと

真の洞窟は、王都アルセウスから馬車で数時間の距離だ。

険しい山岳部に位置しているようなので、途中から少し歩く必要はあるが――

僕たちはこれまで何度も修羅場を経験してきた身。いくら険しい参道を登ることになったとしても、さしたる脅威になりえない。

それに。

「せやぁぁぁぁぁぁぁああああっ!」

「グァァァアアアアア‼」

僕の剣に切り刻まれ、なすすべもなく倒れるブラックグリズリー。

昔だったら決して敵わない敵だったが、いまの僕には淵源流や《チートコード操作》、それに《原理破壊》もある。

以前と同じように、闇色のオーラをまとっているのが気がかりではあったものの――

道中の魔物にもさしたる苦戦をすることもなく、山道を進むことができていた。

「すごい、綺麗ですね……!」

山道の下に広がる景色を見て、エムが感嘆の声をあげる。

「ラスタール村も自然豊かな場所でしたけど、ここはそれとは違うっていうか……」

「はは。たしかにそうだな」

僕はあまり山には詳しくないが、王国内でもそこそこ大きな山じゃなかろうか。

ここから見下ろせば、広大な自然と、そのなかにぽつんと存在する街や村を望むことができる。その壮大な景色がなんとも美しく、僕たちに感動を与えてくれる。

「すごいわよね……。こういうの見てると、普段の私たちの悩みがちっぽけに思えてくるっていうか……」

「レイ……」

まあ……たしかにそうかもな。

マクバ家から勘当されたときは、それこそ「この世の終わり」だと思ったけれど。

《剣聖》スキルを授かれなかったときは、それこそ僕に生きる価値なんてないと思っていたけれど。

でもいまなら、その考えが間違っていたことがわかる。

「そうだな。異世界人はどうしようもなく強い連中だけど……きっと僕たちならどうにかできると思う。レイもエムも、これからも一緒に乗り越えていこうな」

「うん……!」

「はいっ……!」

レイとエムの返事が重なった。

真の洞窟までもう少し。

異世界人たちの思惑や、リオンたちの狙いを知る機会が、きっと間もなく訪れるはずだ……

そう思うと、僕は俄然身が引き締まる思いだった。

――一方その頃。

真っ暗な空間のなかで、二人の人物が小声で会話を交わし合っていた。

「どうでしたか、リオン殿。アリオスの強さは」

「ふふ……。なかなかに素晴らしかったですぞ。あのミルア・クレセントと互角にやり合っていましたからな」

「なるほど。ミルアとやり合える実力があるのならば、もはや思い残すこともないでしょう」

そう言うのは――かつてアリオスと剣を交えたフェミア・ルトラール。

同志Aという名で、以前アルセウス救済党のなかを偵察していた人物だ。

そのフェミアに、今度はリオンから話しかける。

「フェミア閣下も……もう、思い残すことはないのですな」

「ええ、大丈夫です。レイミラも信じられないほど頼もしくなりました。もはや私の助けの手は不要でしょう」

「……承知しました」

そう言いつつ、リオンは腰にかけた剣に触れた。

「では、参りましょう。《全人類奴隷化計画》が始動してしまったいま――もはや連中どもを斬り伏せられるのは我らしかいない」

「ええ。アリオスやレイミラのように、私たちも決意を固める必要がありましょう」

そう言いつつ、二人は真っ暗闇をひたすら進んでいく。

「……さらばだ。我が息子――アリオスよ」

リオンが呟いたその声だけが、空間に虚しく響いていた。