軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

おい、アリオスは何者なんだ

翌朝。

「ふぅ……」

僕はひとり、剣の柄に手を添える。

――不思議な感覚だ。

こうして目を瞑るだけで、世界のすべてを見渡せるような。それでいて、自分が世界と一体化しているような……

「すやすや……」

第二王女レイミラは、いまだベッドの上で寝息を立てている。

昨夜はかなり騒がしかったが、寝顔は素直なものだ。

「…………」

そんな彼女に毛布をかけ直しつつ、僕は昨晩の出来事を思い出す。

突如として《チートコード操作》が起動されて、僕とレイを、未知なる光が包み込んだ――

あれの詳細は不明だが、僕はその後新たな能力を得た。

―――――――

使用可能なチートコード一覧

・攻撃力アップ(小)(中)

・火属性魔法の全使用

・水属性魔法の全使用

・無属性魔法の全使用

・対象の体力の可視化

・対象の攻撃力書き換え(小)

・吸収

・無敵時間(極小)

・古代兵器召喚(一)

・対象の経験値蓄積の倍加

★○○○○の○

――――――

またしても見覚えのない、意味不明な能力名である。

実は宿を出てこっそり使ったんだが、なにも起きなかったんだよな。

いままでは発動時点でなにかしら起きていたもんだが。

もしくは、《吸収》のように特定の条件でないと使いにくい能力ということか。

やっぱりよくわからないよな。

このへんは後々探っていくしかない。

「あ。アリオス……」

振り向くと、ちょうどレイが目覚めたところだった。

「悪い。起こしたか」

「ううん。いいんだけど」

そう言って上半身を大きく伸ばすレイ。なかなか視線に困る格好であるが、しかしレイに恥ずかしがっている様子はない。昨日で僕たちの仲がかなり進展したからか。

「出よう。あまり時間がない」

「うん。そうね!」

「なにが……どうなっている……!?」

一方その頃。

王都の王城にて。

第一王子レイファー・フォ・アルセウスは、ぎょっと目を見開いていた。

「フォムス。それは……事実なのか!?」

「ええ。誠でございました」

レイファーの前にひざまずくは、第19師団長フォムス・スダノール。

「私も万全を期して交渉に臨みましたが、オルガント国王陛下とファルアス殿が相手では……。どうにも対抗できませんでした……」

「ば、馬鹿な……」

レイファーは額に右手をあてがうと、ぶつぶつと呟きだす。

「魔法による錯覚か……? いやありえない。7000もの兵士に幻影を見せること自体がそもそも常軌を逸している……」

レイファーの推察は袋小路に陥っていた。

オルガントやファルアスが本物であるはずがない。二人はすでに故人だからだ。

では魔法による幻影か? これもありえない。7000人に幻覚を見せるなど、これこそトチ狂っている。

つまりどちらの線も考えづらいのだ。なのにフォムスや兵士たちは、たしかにオルガントとファルアスを見たという。

またオルガントがフォムスの先祖をぴたり言い当てていたことからも、あれが変装の類ではないことがわかる。

……ありえない。

いったいなにが起きているんだ。

「オルガント国王陛下が仰るには……」

フォムスも同じく困ったような顔で続ける。

「マクバの 末裔(まつえい) に呼び起こしてもらったそうです。オルガント陛下に至っては、マクバを親友などと言っておりました」

「し、親友……?」

駄目だ。

ますますわからん。

マクバというのは、考えるまでもなくアリオス・マクバのことであろう。

あいつが偉人を蘇らせ、かつ初代国王と親友だって……?

「レイファー殿下。このことから、私はひとつの結論にたどり着きました」

「……結論か。聞こう」

「おそらく、マクバも過去の偉人なのでしょう。でなければ、あれほど常軌を逸した力を持っているわけがないではありませんか!!」

「……フォムス。本気で考えてその結論か」

「はい。……なにか間違ってますか?」

「…………」

頭の切れるフォムスがこんな現実離れしたことを言い出すとは。

昔から感情を表に出しにくい男ではあったが、かなり混乱しているようだ。言っていることが滅茶苦茶である。

レイファーはため息とともに右手を振り払った。

「もうよい。下がれ」

「……承知しました」

最後に一礼をし、退室していくフォムス。その後ろ姿がどことなく疲れ切っていた。

だが、他人の心配をしている場合でもない。

このままアリオスが王城に突入してきたら、もしかすれば失脚に繋がるかもしれないのだ。

いままで王位継承のために動いてきたのに。そのために様々な画策を行ってきたのに。

それがパーになりかねない。

「くそ、どうすればいいっ……!」

レイファーは両手で頭を抱える。

どうすればいい、どうすればいい、どうすればいい……!

そもそも初代国王を相手に知略で勝てるものか、そんな初代国王を呼び出せるアリオスはいったい何者なのか、もうなにがなんだかわからない……

「アリオスはもしかして、この世のすべてを掌握しているのか……!?」

ひとりそう呟くレイファーだった。