軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

13.頑固者対決

どうやらおばあちゃんはお茶目さんのようだ。でも、ふんわり笑ったお顔はお母さんに似てる。ううん、お母さんがおばあちゃん似なのね。

「ちゃまはちょっと恥ずかしいから、おばあちゃんと呼んでもいいですか?」

ごめんなさい。ここは譲れないの。

「あら、残念。孫達が小さい頃はみんなそう呼んでくれていたのにねぇ」

う~ん、あと十歳若ければ頑張ったのですが。

「ごめんね? あと半年で成人なの」

「えっ⁉ 私と二つしか違わないの⁉」

じゃあ、おじさんの娘さんは十七歳? たわわに実ったお胸が大変うらやましい。

ところで、私の台詞のどの部分に驚いたのかな? 聞いたら泣いちゃいそうだから聞かないけど。

「お前は食事をさせてもらっていないのか?」

「え? 私、毎日ちゃんと作っています」

え。どうして、睨むの? 嘘は吐いていないのに。なぜだろう。おじいちゃんとは意思の疎通がむずかしい。

はっ! まさか、私に胸がないのは食事を疎かにしているからだと言いたいの⁉

ムムッ、と私の眉間にもシワが寄ってしまうではありませんか。

突然、おじいちゃんが軽く手を上げた。

すると、それまで壁際で黙って立っていた人達が動き出した。

え、何? 何が始まるの?

ついキョロキョロと周りを窺ってしまう。

扉が開くと、メイドさんがカラカラと手押し車のようなものを押して中に入ってきた。そして、なんと! それと一緒に美味しそうな匂いを連れて来てしまったのだ!

待って。今、そんな攻撃を受けたら──

きゅるるるるっ。

だと思った。鳴っちゃうと思ったんだよ!

ココアはとっても美味しかったけど、だって、お昼ごはんも食べないで出てきちゃったんだもん。

みんなの分の食事を作るだけでタイムオーバー。せめてパンだけでも持ってこればよかったと後悔した。

「……しっかり食べなさい」

あれ。おじいちゃんが目頭を押さえている。そのポーズはこの家の人たちの癖なのかな。

でも、お料理はなぜか私の前にだけ並べられていた。

「ごめんなさい、私達はもう頂いた後なの。だから気にせずに食べてちょうだい?」

おばさんの言葉に愕然とする。

……この量を一人で食べるの? お腹が破裂しちゃうんですけど。

「……あの、友達を呼んできてもいいですか?」

だって私だけじゃ無理だもん。いくらお腹が空いていても、こんなにたくさん食べられない。レイさんもきっと食事はまだだろうから、一緒に食べてもらおう。

「まだ話が終わっておらん」

おじいちゃんの言葉は短い。よって、こちらの推理力が試される。要するに、まだ話し終わっていないからレイさんは呼んじゃだめってこと?

「分かりました。お話をしましょう」

「……先に食べなさい」

「いえ、先に話を」

「いいから」

「無理です」

だって、食べ残しをレイさんにあげるなんてできないし。

「なぜ素直に受け取らんのだ。まったく、可愛げのない」

「あなたっ!」

私がカッチーン、とくる前におばあちゃんからの叱責が飛んだ。

「大概になさいませ! どうしてそんな憎まれ口ばかり叩くのです!」

「なっ、本当の事だろう! あんなにもでかい音で腹が鳴っているのに食べないほうがおかしいではないか!」

「言い方というものがあるでしょう! あなたがそんなだからソフィアだって家を飛び出しちゃったのではありませんか!」

ええ? まさか、売り言葉に買い言葉で家出に発展したの? 嘘でしょう?

まったく意味が分からないけど、おじいちゃんに助けを求めているのは私だ。ちゃんと分かってもらえるように話をしなきゃ。

「おじいちゃん。私が先に話をしたいのは、こんなにたくさん一人では食べられないからです」

「……意味が分からん」

うん。そうだと思った。

「ごはんの量が多いからレイさんと分けっこしたかったの。でも、先に私だけ食べたら、残り物を押し付けるみたいでしょう? だから、先に話をして、それからゆっくりレイさんと食べようと思いました」

どうだ。さすが伝わったわよね?

でも、おじいちゃんの眉間のシワが消えない。

「残すのはマナーだろう」

「え?」

……今、なんて言ったの? マナー?

「フィリシア。残ったものは使用人達の食事になるから無理に食べる必要はないんだよ」

おじいちゃんの足りない言葉をおじさんが補ってくれた。

なるほど。それが貴族ルールなの?

「でも、私は貴族ではありません」

「儂の孫だろう」

あ~~……。ここは身内だと認めてもらえたことを喜ぶべきか、それとも、人の話を聞かない人だなと呆れるべきか。

だんだんおじいちゃんという人が分かってきた。何というか、自分の意見が一番なんだ。

「私はごはんを残すのは良くないことだと教わってきました」

「……ソフィアが?」

「いえ、お向かいのおばちゃんが」

おばちゃんは私の育ての親の一人だ。

お母さんに任せていたら私が早々に死んじゃうと思ったらしいご近所さんたちが、色々と手出し口出ししてくれたおかげで、私はこうして生きている。

「私は会ったばかりのおじいちゃんより、ずっと私を育ててくれたおばちゃんが教えてくれたことのほうが大切なの。ごめんね?」