軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

素敵なシートベルト

何度か瞬きをして、彼の言うことを理解した凪は、手のひらの上のそれをぎゅっと握りしめた。

「中型魔獣で二十発必要なら、大型魔獣だとどれくらい必要なのかな?」

「さすがに、大型魔獣での実証実験はできなかったらしいからね。あくまでも理論上の計算値にはなるけれど……。最低でも五百発。それが、王立魔導研究所の見解だ」

その答えに、凪は深々と息を吐く。

「五百発かあ。それはちょっと、難しそうだね」

「ああ。さすがに効率が悪すぎる。申し訳ないが、大型魔獣についてだけは、きみたち聖女に対処してもらわなければならない」

なるほど、と凪は頷いた。

「それじゃあ、わたしのお仕事は、魔導騎士団のみんなが外殻を剥がしてくれた大型魔獣の核に触って元に戻すことと、スタンピードが終わり次第、近くにあるはずのうにょうにょ状態の魔導鉱石をキレイにすること、でいいのかな?」

「そうだね。目的の魔導鉱石の探索には、おれと第三部隊が当たることになっている。おれたちのほかにも、アシェラ傭兵団の探査系が得意な部隊が当たってくれるそうだ。それらについては、発見次第防御フィールドで封印して、スタンピードがすべて収束してから改めて対処を考える予定だよ」

ライニールが、少し困った顔で言う。

「何しろ、これだけ大規模なスタンピードへの対処をお願いするんだ。特に、実戦経験の乏しいきみと、今回が初陣のディアナさまの体力がどれほど保つかは、正直賭けみたいなものだからね。だからといって、エステファニアさまとウィルヘルミナさまばかりに負担がいくのも、さすがに申し訳なさすぎるだろう?」

「う……うん。体力温存、がんばりマス……」

凪は今まで、聖女の力を使うたび、気が抜けた途端に眠りこけまくっていたのだ。

そのことを踏まえてみれば、ライニールの懸念も当然だろう。

虹色のたけのこ――ではなく、貴重な弾丸を小箱の中に戻した凪は、キリッと表情を引き締めてアースドラゴンを振り返った。

「あなたの番さんを助けるまでは、意地でもぶっ倒れたりしないので! お互い、あんまり無理しない方向でがんばろうね!」

なんといっても、魔獣であるアースドラゴンは、凪にくっついていなければスタンピードに近づいた途端、その影響を受けてしまいかねない。いくら慎重に慎重を重ねても、やり過ぎということはないだろう。

今でこそ虎サイズのアースドラゴンだが、本来の姿は見上げるような小山サイズなのだ。アースドラゴンを現場に連れていくのは凪の判断なのだから、断じて暴れさせるわけにはいかないのである。

「ええ、そうね。――ところで、ひとつ確認しておきたいのだけれど。小娘聖女が現場に入るときには、アタシがこの子を乗せていくってことでいいのかしら?」

ライニールとシークヴァルト、そしてグレゴリーが、固まった。彼らにとって、『大型魔獣に騎乗する』というのは、完全に想定外な事態であったようだ。

凪は、片手を上げてアースドラゴンに問う。

「えっと……。それって、わたしをあなたの背中に乗せてもらっていいってこと?」

「まあね。何しろ、スタンピードの中心に突っこもうっていうのだもの。アタシとしては、常にアンタと接触した状態でいたいのよ」

なるほど、と凪は頷いた。

アースドラゴンの主張は至極最もであるし、正直その背中にはぜひとも乗ってみたい、という気持ちはある。

だがしかし、だ。

「ごめんなさい。わたし、今まで馬にも乗ったことがないのね。騎乗初挑戦が魔獣さんっていうのは、さすがに難しいと思う」

「やあねえ、アタシをその辺の家畜と一緒にしないでくれる? いいから、まずは乗ってご覧なさいな」

尻込みした凪だったが、あまりにも自信たっぷりなアースドラゴンに促され、おそるおそる近づいてみる。

「ひょわあ!?」

それをじれったく感じたのか、雪豹の長い尻尾が凪のウエストに巻き付いた。そのままぽん、とふわふわモフモフの背中に跨がる形で乗せられる。

咄嗟に掴んだ首回りの毛が、思いのほか長くて柔らかい。立派な尻尾は、凪のウエストに巻き付いたまま、しっかりと体を固定してくれている。

(なんって素敵なシートベルト……!)

そうして立ち上がったアースドラゴンは、試乗として歩き出すのかと思いきや、床から少しだけふわりと浮いた。

「このタイプの獣型だと、普通に走ると背骨の上下動が激しくなっちゃうのよね。だから、基本的に移動はこんな感じよ。もちろん、現場に入るときには防御フィールドできっちり守るわ。それで文句はないでしょう?」

「うん! ない!」

テンションが爆上がりした凪は、満面の笑みを浮かべてライニールとシークヴァルトを見る。いつもは見上げている彼らと、視線の高さがほぼ同じになっているのも、なんだか楽しい。

「兄さん! シークヴァルトさん! わたし、アースドラゴンさんに乗っていってもいい!?」

「……ウン。そうだね。アースドラゴンどのがきみを守ってくれるなら、シークヴァルトがきみのそばを離れても大丈夫かな……」

「まあ……。何かあったら、すぐに呼べよ?」

ふたりの視線が、妙にまったりとしたものになっている気もするが、ひとまず気にしないでおくことにする。

少しだけ空気が緩んだそのとき、オスワルドがこちらに声を掛けてきた。

「兄上。シークヴァルト。ミロスラヴァ王国から、入国許可が降りた。――行ってくれ」

一瞬で、すべてが切り替わる。

「了解。――ナギ、シークヴァルトが迎えにくるまで、ここで待っているんだよ」

「行ってくる」

ふたりの姿が消えると、グレゴリーが小さく息を吐いた。

軽く右手を持ち上げた彼は、それまでライニールが操作していた情報シートの権限を引き継いでいたらしい。ミロスラヴァ王国の地図を拡大し、左手に持ったメモを見ながら何かを入力していく。

「グレゴリー? 何してるの?」

「うん。ライニールさまから、ナギがミロスラヴァ王国の状況を把握しやすくするために、魔導騎士団の方々の現在地を表示するよう言われてたんだ。――えぇと、コードがこれだから……」

眉間に皺を寄せたグレゴリーの指が、楽器を弾くような滑らかな動きで情報を入力していく。

すべての入力を終えたらしい彼が、最後に情報シートの中心で人差し指を弾ませる。

直後、地図上で輝く金色の光が現れた。

(……おお? えっと、今増えた光の点が、魔導騎士団のみんながいるところなのかな?)

赤黒い光が不気味に瞬いている、人口密集地。

そのうちのひとつにたくさんの金色の光が現れたかと思うと、赤黒い光が急激に勢いを減じはじめた。

おそらく、同時に三人の聖女たちも各地に到着したのだろう。

地図上には彼女たちの存在を示す光こそないけれど、同じような勢いでスタンピードを示す赤黒い光が消えていく。

(すごい……)

今、滅びに向かっていたひとつの国を救うために、大勢の人たちが戦っている。

その中に、これから自分も飛びこんでいくのだと思うと、知らず指先が震えた。

騎乗したままのアースドラゴンに、その震えが伝わったのだろう。

美しい獣が、振り返る。

「怖いの?」

「……うん」

相手が、決して嘘を言わない獣だからだろうか。

取り繕うこともできずに頷くと、アースドラゴンは小さく笑ったようだった。

「そうね。当然だと思うわ。……でもね、大丈夫よ。アンタが怖がることなんて何もないの」

柔らかく穏やかな口調に、少しだけ祖国の母を思い出す。

生まれたときから、誰よりも凪を愛して、たくさんのことを教えてくれた。

――いい? 凪。怖いときは、何が怖いのか考えてみるの。

――怖いものっていうのは、大抵自分が知らないもののことなのよ。

――正体がわかれば、なあんだ、って笑ってしまうようなことだったりするからね。

(えぇと、今、怖いもの、怖いもの……。失敗したら、どうしよう? あれ、それは考えても仕方がないことだな。暴走しているたくさんの魔獣……は、シークヴァルトさんとアースドラゴンさんに守られてれば、絶対安全大丈夫だし。……あれ?)

本当に、何が怖かったのかわからなくなってきた。

母の教え、恐るべし。

凪が改めて祖国の母に感謝を捧げていると、アースドラゴンがさらりと続ける。

「こうして、直接接触しているからなのかしら。なんだかね、さっきからアンタの魔力がじわじわアタシの中に染みこんできている感じがするのよ」

「へ? え、でも、わたしの魔力が食べられてる感じなんて、全然しないよ?」

アースドラゴンの外殻を破壊して、その核に自分の魔力を吸い取らせたときの感覚は、今でもしっかり覚えている。

あれは、最高級のお掃除魔導具もビックリの吸引力だったのだ。忘れるには、少々インパクトのありすぎる感覚である。

「アラ、そうなの? まあ、アンタの魔力保有量は、ちょっと規格外だしねえ。とにかく、アンタの魔力を食べて再構築したばかりのアタシの体に、同じ魔力はかなり馴染みやすいみたい。んー……。つまり、アレよ。今のアタシは、前にアンタが言っていた『聖女パワー搭載型魔獣』ってとこかしら?」

「おお! ……って、えっと? それってつまり、どういうこと?」

首を傾げた凪に、アースドラゴンは笑って言った。

「もしかしたら、だけどね。今のアタシの攻撃は、スタンピードに巻きこまれた魔獣のコたちを、元に戻すことができるかもしれないわ」

「おおー!」

それは、すごい。

虹色のたけのこ型弾丸だけでなく、アースドラゴンの攻撃でもスタンピードに対する強力な鎮圧手段となるなら、事態は思っていたよりも早く収束させられるかもしれない。

ぱっと凪の気持ちが明るくなったとき、オスワルドの誰かに語りかける声が聞こえてきた。

「――ところで、ユーリウス殿下。一年前、あなたの末の妹君が、ディアナさまの婚約者であった男性を略奪した際のことについて、少々調べさせていただきました」

思わず、息を呑んで振り返る。

どうやら、彼と通話をしている『ユーリウス殿下』という人物は、その略奪劇を起こしたミロスラヴァ王国第三王女の兄であるらしい。

それからオスワルドは、ディアナが婚約者を奪われたときのことを、淡々と語っていった。

当時、ユーリウスは外交のため王宮を空けており、彼が帰国したときにはすべてが終わっていたこと。

事態を知って激怒したユーリウスは、ディアナを傷つけた当事者ふたりを、顔の形が変わるほど殴りつけたうえで絶縁したこと。

そして彼は、ディアナから託かっていたという言葉を告げる。

――ディアナを傷つけた者たちを、ユーリウスが王太子の名において排除するなら、彼女は夫とともにミロスラヴァ王国へ戻る意思がある、と。

そこでグレゴリーが、小さな声でそっと言う。

「きみが、着替えているときにね。ディアナさまからオスワルド殿下に、ご連絡があったんだ。聖女が戻ることを知れば、ミロスラヴァ王国の人々も希望を失わずにいられるかもしれないから、って。元々、ユーリウス殿下のことは、トゥイマラ王国のみなさまにもお知らせしてあったみたい。あ、あのご帰国の条件は、ディアナさまの夫君がご提案くださったものらしいよ」

「……そうなんだ」

元々、彼女の専属護衛だったというディアナの夫は、きっととても悩んだに違いない。

ディアナがミロスラヴァ王国に戻れば、たしかに彼の国の人々は歓喜をもって彼女を迎え入れるだろう。

けれど、たとえこれから無事にスタンピードが収束したとしても、すでに起こってしまった悲劇がなくなるわけではない。辛うじて滅びを免れたというだけで、ミロスラヴァ王国の人々が元通りの日常を取り戻せるまで、とても長く辛い日々が待っているのは間違いないのだ。

凪は、手の中の柔らかな雪豹の毛を、ぎゅっと握りしめた。

(そっか。ディアナさまと旦那さまは……一番、大変な道を選ぶんだね)

ディアナはいつ、その覚悟をしたのだろう。

彼女だってまだ十八歳の、つい先日まで自らが聖女であることなど知らなかった女性なのに。

その心の強さが、なぜだかひどく悲しかった。

ディアナは、初対面の凪にもとても優しくしてくれた。

あんなにもたおやかで優しい女性が、どうしてこれほど強くあらなければならないのだろう。

(わたしも……強く、ならなきゃ)

今はまだ、守られてばかりでも。

自分に優しくしてくれた人たちが、少しでも心安らかにいられるように――。

「待たせた、ナギ。行けるか?」

少しだけ呼吸を乱したシークヴァルトが、目の前に現れる。

「……うん」

まっすぐに自分を見つめる金色の瞳に、こんなときだというのに束の間見とれた。

この世界で目覚めたときから、ずっと優しくしてくれた人。

たくさんの辛いことを経験しても、誰かに優しくすることを忘れなかった彼は、いつだって凪を守ってくれた。

きっと、これからも。

「ナギ! 気をつけてね!」

今にも泣きそうな声に振り返れば、グレゴリーがひどく辛そうな顔をして立っている。

凪は、にこりと笑って言った。

「うん。大丈夫だよ、グレゴリー」

自分はこんなにも、周りの人たちに大切にしてもらっている。

だから、彼らを悲しませるようなことは、絶対にしない。

そんな決意とともに、凪は差し伸べられたシークヴァルトの手を取った。

「行ってきます」

そう告げた直後、景色が変わる。

転移したのは、スタンピード現場の上空だろうか。

眼下を見下ろすより先に、シークヴァルトの手が凪の目元を覆い隠す。

一瞬だけ見えたのは、かつては立派な街であったに違いない瓦礫の山。

なぜ、だろう。

本当にそれしか見ることができなかったのに、濃厚な『死』のにおいを強く感じる。

――覚悟は、しているはずだった。

それでも全身に冷や汗が滲んで、手指が強張る。

戦闘服越しに伝わるシークヴァルトの体温が、ひどく熱い。

「アースドラゴンどの。ここのスタンピードのトップは、リンドブルムだった。問題ないな?」

「ええ。アタシのほうが強いわ」

そんなやり取りとともに、自分たちがゆっくりと移動するのを感じる。

(無茶は、しない。……絶対、しない)

この場で起きたのであろう悲劇を思って動揺するのも、自分の体を押しつぶそうとするかのような『死』の重みに泣き叫ぶのも、今じゃない。

ぎゅっと、目を閉じる。

やがて、アースドラゴンが地面に降り立つのを感じた。

シークヴァルトの吐息が、耳に触れる。

「……いいか、ナギ。目の前の、魔獣の核だけを見て、落ち着いて触るんだ。絶対に、周りを見るな」

「わ、かった」

ぎこちなく答えると、シークヴァルトの手が凪の顔の角度を調整しながら、ゆっくりと離れた。

目を開くと、ちょうど凪の胸の高さまで積み重なった瓦礫の上に、どす黒く濁った球体がある。

アースドラゴンの核よりも、少し小さい。

それに引き寄せられるように、両手で触れる。

(あ……あれ……?)

アースドラゴンのときは、触れた瞬間から色が変わっていったのに、なんの変化も見えてこない。

動揺する凪に、アースドラゴンがそっと言う。

「大丈夫よ、小娘聖女。アンタの力は、ちゃんと伝わってる。ただ……コイツはちょっと、人を殺しすぎちゃったみたいね。その穢れが核にまとわりついて、アンタの力が伝わりにくくなってるだけよ」

「え……あ、うん……」

そういうものなのか、と驚きながら、魔獣の核を温めるように懸命に手を当てる。

――ここで、大勢の人が死んだ。

この魔獣が、殺してしまった人たちだ。

悲しくて、苦しい。

許せない。

この惨劇を引き起こした者たちは、なぜこんなことができるのだろう。

わからない。

わかりたくもない。

ただ、許せない。許したくない。許してはいけないと、強く思う。

(……あなたは、何も悪くないんだよ)

この核の主は、リンドブルムなのだという。

ドラゴンの中でも特に巨大な翼を持つという、空での最速を誇る天空の支配者。

今回のスタンピードで、決して少なくない数の仲間を失ったに違いない。

多くの人間を殺したことや、仲間たちを死なせたことで、これからひどく苦しんでしまうのかもしれない。

それでも――。

(あなたが、生きてちゃいけないなんてことは、絶対ないから)

だって今、この魔獣の核が凪の手の中にある。

それは、シークヴァルトや魔導騎士団の人々が、この魔獣を助けようとしたからだ。

これ以上、この国で起こってしまった悲劇を広げないために。

と、それまで変化のなかった核の色が、ゆらりと揺らいだ。

見間違いかと思ったけれど、凪の指が触れているところから、少しずつ、けれど確実に濁りが消えていく。

そこからは、まるで早送りのように色が変わっていって、気がつけば透き通った新緑の色をした球体が目の前でふわふわと浮いていた。

「これで、終わり――ひょわあぁあ!?」

ほっとした瞬間、アースドラゴンがリンドブルムの核を、ぱっくりと呑み込んだ。丸呑みである。

「ななっなな何してんのー!?」

思いきりどもった凪の問いかけに、アースドラゴンはけろりと答えた。

「核の状態で放置していたら、せっかく生き残ったコイツの眷属が、魔力を吸い取られて消滅しちゃうかもしれないじゃない。心配しなくても、あとでコイツの住処に放り出しておくわよ。あそこはコイツの魔力溜まりだから、すぐに復活するでしょ」

「し……知り合い? なの?」

知り合いっていうか、とアースドラゴンが首を傾げる。

「恋敵?」

「こいがたき」

思わず、棒読みで復唱してしまった。

「ええ。アタシの番になりたいって、ずっと口説かれていたんだけどね。それが、あまりにしつこかったものだから……。こうして直接会うのは、コイツがフレイムドラゴンに半殺しにされたとき以来かしら?」

「そっちかーい!」

どうやらこのアースドラゴンは、大変モテモテの個体だったらしい。

反射的にツッコんだ凪に、アースドラゴンが小さく笑う。

「それに、せっかくこんなところまで来てやったんだもの。……少しくらい、サービスしてあげるわ」

そう言うなり、アースドラゴンの体がふわりと浮いた。

シークヴァルトが、すかさず凪の体を抱えこむ。

それに構わず一気に高度を上げたアースドラゴンが、シークヴァルトに向けて言う。

「小娘聖女の目を塞いで、アンタも目を閉じていなさいな」

どこか楽しげに言われた彼の手が、凪の目元を再び覆った。

直後、膨大な魔力がアースドラゴンの体から放たれたのを感じる。

いったい何が、と戸惑う凪の耳に、呆然としたシークヴァルトの声が聞こえた。

「ナギの魔力を……自分の眷属でもない魔獣たちに、同調させた……?」

「アラ、上手くいったみたいねえ。小娘聖女の魔力で再構築されたばかりのアタシの体で、同じように元に戻ったコイツの核を取りこんでいるわけだから、たぶんできるだろうとは思ってたけど。やっぱり、何事も挑戦あるのみね!」

ふふん、と、人間ならばものすごく最上級のドヤ顔をしていただろうアースドラゴンに、シークヴァルトがやたらと低い声で言う。

「……アースドラゴンどの。貴殿の気遣いには、感謝する。心から感謝するが……っ。さすがに、これは目立ちすぎだ!」

「ええー、いいじゃないのよう! それより、ここにはもう暴れている魔獣のコはいないんだから! さっさとアタシの番のところに行くわよ!」

凪の目を塞いだまま、シークヴァルトがくわっと喚く。

「それが目的かよ!」

「悪い!? しょせんアタシは、自分の番のことが何より一番大事なの!!」

悪くはない。悪くはないが――。

(よくわかんないけど……。もしミロスラヴァ王国の人たちに、アースドラゴンさんが暴れてた魔獣たちをおとなしくさせたところを目撃されてたら、いろいろとごまかすのが大変そうだなあ)

その辺りのことについては、とても優秀な王子さまであることが判明したオスワルドに任せておけばいいだろうか。

何事も、適材適所というものがあるのである。