軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

逆恨みには注意しよう!

翌日にブログをチェックすると……なんということでしょう!

なんとPVが5回転し、おまけにブックマークが3つも増えていた。

「ひゃっほおぉぉぅ!!」

ブログを始めて2ヶ月で、初めてついたブックマークだ。

これほど素晴らしいことが、いだまかつてあっただろうか!

おまけにPVも過去最高の5回転と来ている。

昨日といい今日といい、良いことが続くなあ。

これはやはり、火蓮を助けたからだろうか?

神様が「正解!」って言ってるってことだろうか!?

あまりにはしゃぎすぎて、壁がドン!って鳴った。

「おっと失礼」

魔物を大量に倒してレベルアップしたからか、体は絶好調。

先日の疲れはほとんど残っていない。

印刷会社で働いていたころは、高級ユンケルを飲んでもゆっくりお風呂に浸かっても、翌日に疲れが残っていたというのに……。

まるで子供の頃に戻ったようだ。

気分が落ち着くと、晴輝は今日の行動について思考を巡らせる。

昨日は店員に防具のお礼を告げるのを忘れてしまっていた。

ひとまず武具販売店を覗いていくか?

お礼ついでに、いまだに雑な靴や手袋を購入するのも良いかもしれない。

「あとは家に帰るだけか……」

何故か、晴輝はどこかに収まりの悪さを感じた。

本当にそれでいいのか? と。

思い浮かんだのは、まだ幼さの残る火蓮の顔だ。

昨日出会った少女、火蓮は行きずりの関係だ。

――決して爛れたものではない。

晴輝は彼女が女性だから、少女だからモンパレの襲撃から救ったわけではない。

人が襲われそうになっていたから、助けただけ。

それは冒険家として当然のこと。

下心など一切ないと断言できる。

だから彼女ともう一度会いたいとか、そういう気持ちは一切ないはずなのだが……。

「……いや、違う!」

それに気づくと、晴輝は素早く装備を身につけて客室を飛び出した。

火蓮に会いたいとか会わないとか、そんなことを言ってる場合じゃない。

晴輝は火蓮に、絶対に会わなければいけない。

このままじゃ彼女は――死んでしまう!

早朝だというのに、ダンジョンは早くも冒険家でごった返している。

ゲートの先。

ダンジョンの入り口に並ぶ冒険家の列を、晴輝は片っ端からチェックしていく。

だが人が多すぎて火蓮を見つけられるとはとても思えない。

「くそっ! ブログがあるんだから、ダイレクトメッセージを飛ばせばよかった」

そんなことにも気づかないなんて、どうかしてる。

そも、昨日のようなことがあったばかりだ。

火蓮は今日もダンジョンに来るとは限らない。

にもかかわらず、何故か晴輝は火蓮が来ると思い込んでいた。

きっと、慌てすぎていたのだろう。

「はあ……」

一度落ち着こう。

深呼吸をして、晴輝は自らを強く諫める。

そのとき、

「お、おはようございます!」

晴輝に声をかける、火蓮が現われた。

存在が空気だというのに、火蓮は晴輝を、見つけてくれた。

「よく……すぐに俺を見つけたね。これでも存在感が薄い方なんだけど」

「いえその……ええと、空星さんのお面は目立つので」

あ、これのせいか。

晴輝は自らのお面の縁を指でなぞった。

見つかりやすくなる効果でも付いているのだろうか?

考えると確かに、昨日からなにやら身の回りの雰囲気の違いを感じる。

これは――なるほど、お面を付けたことで視線が集まっていたからか。

「もしかしてこのお面……神アイテム!?」

仮面を付けると存在感が増す!

まさかの魔導具の効果に、晴輝の全身が震えた。

「くそっ! なんてことだ!!」

そんな神アイテムが、たったの500円で購入出来たなんて!

あの店員は神か!

「どうしました?」

「い、いやなんでもない」

火蓮の怪訝な表情に、晴輝は慌てて冷静さを取り繕う。

「火蓮さん」

「はい火蓮です!」

声をかけると、火蓮がちょこちょこと小股で近寄った。

まるで飼い主を見つけた小型犬のようだ。

「実は昨日のチームについて聞きたい事が――」

どこかから、「あ」という僅かな音が聞こえた。

それはあまりに細やかで、あっという間に冒険家達の雑踏に紛れてしまった。

だが晴輝は聞き逃さなかった。

レベルアップして、多少鋭敏になった彼の聴覚が、それをがっちりとつかみ取った。

即座に背中に火蓮を隠し、声の主に目を向ける。

「…………」

ぱくぱくと、盾を装備した男が口を開閉する。

音が聞こえなくても、彼がなにを言ったのかがはっきりと判った。

『生きていたのか』

その後ろには大剣と、弓を装備した男が控えている。

やはり、彼らは気になっていたのだろう。

自分達が見捨てた少女が、本当に死んでしまったのかが……。

犯人は、必ず犯行現場に戻ってくる。

例に漏れず、彼らも戻ってきた。

火蓮が確実に死んだことを、確かめるために。

もし火蓮が生きていれば、彼らの悪行が世に広められる可能性が生じる。

もちろん、ダンジョンに潜って人を見殺しにすることは、決して悪いことではない。

トロッコ問題のように、見殺しにしなければいけない状況は必ず発生する。

だが彼らは火蓮の育成に名乗りを上げたのだ。

状況が状況だけに、グレーゾーン行為だ。

強い冒険家が弱い冒険家を――身を挺して守らなければいけない人を、自らが生き残るために生け贄に差し出したとあってはもう、マトモな冒険家業は続けられないだろう。

危険行為と見なされれば、『なろう』の運営がアカウントをBANする可能性もある。

だからこそ彼らは確認に来た。

――生きていれば、再び彼女を魔物の餌にするために。

たしか火蓮は、彼らが9階で活動をしていると言っていた。

であれば彼らには晴輝さえも、赤子の手を捻るように葬る力があるはずだ。

一体、どう出るつもりだ?

緊張感が増していく。

まさかここで暴れるつもりか?

……さすがにそれはないだろう。

人通りが多いし、なにより冒険家対策専用の特殊警察が黙っていない。

あるいは晴輝は、少し考えすぎていたかもしれない。

彼らだって冒険家だ。

罪悪感に耐えきれず、火蓮を捜索しに来た可能性だってあるじゃないか!

しかし、そんな晴輝の予想を裏切り、彼らが殺気を放ちながら陣形を整えた。

「嘘だろっ!」

「――っ」

完全に殺る気だ。

あまりの出来事に晴輝は動揺するが、すぐ後ろで聞こえた息を飲む声に、冷静さを取り戻す。

彼らがどこまでやるつもりなのか。

考えるまでもなく、すぐに判明した。

前衛の男がその盾を前に掲げて突っ込んできた。

背後では既に矢が弓にセットされている。

左へ避ければ盾男に攻撃され、右へ避ければ矢が放たれる。

さらにそれらの攻撃をかいくぐっても、後ろに控えた大剣が見逃さないだろう。

どうする……。

無理に避ければ、火蓮が真っ先にやられる。

かといって、彼らの攻撃を防ぐ手立てがあるか……。

どうする!?

とにかく観察だ。

観察して、彼らの隙を突いて逃げ出さなくては!

しかし晴輝の観察眼では、彼らの隙が見つからない。

じりじりと間合いが詰められる。

武器はまだ、抜かれていない。

抜けばすぐさま警察に気づかれる。

だからギリギリまで抜かないはずだ。

なのに、彼らの武器がどこにあるか。どこを攻撃するつもりかが、晴輝には手に取るように理解出来た。

これがおそらく、殺気。

ぞわりと晴輝の背筋が震える。

じり、と足を動かす。

その分だけ盾男も動く。

「……ん?」

またじり、と晴輝は足を動かした。

盾男も同じ分だけ移動する。

……これはもしかして。

光明が、髪の毛よりも細い希望の筋が、見えた気がした。

次の瞬間。

盾男が一気に間合いを詰めた。

行けるか!?

晴輝は光明に向かって足を動かす。

この陣形は、盾男を頂点として敵へ直角に向かうことで成立している。

だからその角度を変えれば、陣形に若干の歪みが生じる。

その歪みから、危機的状況を抜け出す隙が生まれる!

そう信じて晴輝は全力で地面を踏む。

だが、

(くそ、速いっ!)

晴輝の速度では盾男の突進を上回ることが出来ない。

圧倒的な力量。

見えた光明をかき消すほどの地力の差。

周りの冒険家が異変に気づき、「あっ」と声を上げ始めたそのとき、

「――ッ!」

盾男が長剣を抜いた。

既に状況は分水嶺を越えた。

晴輝が全力で動いても間に合わない。

それが判るのだろう。盾の男も、獲ったというような笑みを浮かべた。

実に……嫌らしい笑みだ、くそ食らえ。

盾が構えた剣が腹に突き刺さる――。

その前に、

「ぶごあ!!」

何者かがこの騒動に乱入した。

乱入し、盾男を一瞬で彼方に付き飛ばした。