軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

プロローグ

【飛ぶ】仮面さんの出現を報告する書1【消える】

1 名前:仮面さんを見守る名無し

ここは蝦夷地にて出没する仮面さんについて語らう冒険の書です

仮面さんは出会う度に変態……いや変体します

その仮面さんの変貌ぶりを報告し合いましょう

※仮面さんを信じぬ邪教徒はアクセス禁止

この場を荒らす命知らずには、仮面さんの呪いが必ず降りかかるでしょう

2 名前:仮面さんを見守る名無し

>>1 乙

ついに立ってしまったかw

3 名前:仮面さんを見守る名無し

おおよ

少し前まで新宿駅奪還のおかげでほとんどの冒険家が仮面さんとかち合わなかっただろ?

けど新宿駅奪還作戦が終わって冒険家が地元に戻ってきてる

そいつらが仮面さんを見たら魔物かと思うんじゃないかと思ってな

蝦夷地ローカル板だけど報告場所はあった方が良いだろ?

4 名前:仮面さんを見守る名無し

なるー

確かに出会い頭に驚いて斬りかかる奴がいないとも限らないからなwww

5 名前:仮面さんを見守る名無し

見た目とは真逆に良い人だしねw

カゲミツさんにも一目置かれてる冒険家だし

不慮の事故を避けたい気持ちはすごく判るよ

6 名前:仮面さんを見守る名無し

一度でいいから見てみたい

彼が仮面を 外すとこ

7 名前:仮面さんを見守る名無し

仮面外したら見えねーからwww

8 名前:仮面さんを見守る名無し

とりあえず現時点での仮面さんの容姿を整理しとっか

9 名前:仮面さんを見守る名無し

・宙に浮かぶ仮面

・首から羽が生えている

・蠢く植物を背負っている

・身体は鱗で出来ている

・背中に白い顔がある

・腰の辺りに触手がある

・腹部に多足虫が寄生している

・分神体が出せる

・仮面が光る←NEW

10 名前:仮面さんを見守る名無し

分神体ってアレかww

相変わらずひでぇwww

ってちょっと待ておい!

仮面が光るってなんぞ!?

旭川でのあれこれを終えて、晴輝らは無事にK町へと戻ってきた。

晴輝は実に3週間も自宅を留守にしていた。

普通ならば慣れた家についてほっと一息、となるところだが、晴輝の表情はどんよりとした分厚い雲に被われていた。

原因は一つ。

新たに発現したスキルのせいだ。

荷物を整理するために火蓮はホテルへ。

晴輝も自宅に荷物を置く。

旭川で手に入れた羊肉を木寅さんにお裾分けし、その代わりに畑で収穫したピーマンを貰った。

「いつも悪いなハル坊」

「いえ、こちらこそ」

真夏の焼けるような日差しの下、畑仕事を熱心に行っていたのだろう。

木寅さんの肌が綺麗に焼けている。

そのせいで、盛り上がる筋肉のカットがやけに際立っている。

彼は御年70を越える老人なのに、まるで老いが感じられない。

むしろ夏になって、作物の生長に比例して活力が増しているようである。

その木寅さんの体には、気力がほとんど浮かび上がっていなかった。

(一般人だからかかな?)

これは木寅さんだけではない。

生命力溢れるはずの自然や生物も、気力を纏っていない。

気力を纏うには、一定以上の討伐経験が必要なのかもしれない。

あれこれ後始末が一段落したところで、晴輝は一度プレハブへと向かった。

「……はぁっ!?」

プレハブに入ると晴輝は朱音に二度見された。

よほど驚いたのだろう。朱音の目がまん丸になっている。

「アンタ、今度はなにをしでかしたのよ?」

「……」

「なんで仮面が光ってんの!? なんか神々しいんですけど!?」

「…………これには深い、深い訳があるんだ」

晴輝はがくりと肩を落とした。

朱音の指摘は、事実だ。

仮面が光っていると彼女は言ったが、実際に仮面が発光しているわけではない。

正しくは、『光って見える』ようになったのだ。

現在、晴輝の仮面は他人の目からは、『宙に浮かびながら発光する神々しい仮面』に見えるようになってしまっていた。

原因は新スキルの“神気”だ。

『神気:強い気配をその身に宿すスキル』

これを晴輝は『神のように強い存在感を手に入れる力』だと考えた。

晴輝の解釈は、外れていなかった。

確かに『神のように強い存在感』は手に入った。

だが、予想外の事態が発生した。

何故か、仮面が光って見えるようになったのだ。

原因は仮面の存在感の強さか。あるいは晴輝の存在感の薄さか……。

勿論、仮面の輝きは晴輝の意志によって抑制出来る。

しかし、ふとした拍子に気が緩むと、途端に仮面が発光を始めてしまう。

慣れれば無意識でも、神気を抑えられるようになるだろう。

だが慣れぬあいだは突然、なんの脈絡もなく仮面が発光してしまいかねない。

気が緩めば仮面が光を放ち、気が乱れれば仮面が点滅を始める。

制御が上手く行ったと思えば、目だけが怪しげに燦めいて、

制御に気合を入れすぎれば、仮面の髪が逆立って、後光のようにぼんやり光る。

――とにかく、神気は人前に出るには、非常に危険なスキルだった。

強い存在感が欲しいと願う晴輝ですら、仮面の発光は受け入れ難いほどに。

違う。

俺が求めていたのは、そういう力じゃないッ!!

何度否定したところで、スキルの性質は変わらない。

おまけに全力でカンストさせたスキルはゼロには戻らない。

覆水盆に返らずとは、まさにこのことだ。

頑張って神気を押さえ込めるようになるしかない。

そして予想外だったことがもう1つ。

――こちらが最悪だ。

仮面を外すと、どれほど神気を発露させても、晴輝の存在感にはなんの変化もなかった。

つまり、神気でいくら乗算しようと元の存在感がゼロなら――。

ゼロに億千万掛けても、ゼロ――。

「……っくぅ!!」

「ちょ、な、なんで泣いてんのよ!? お、落ち着いて? ね?」

仮面越しだというのに、晴輝が号泣していることがわかったのだろう。

朱音がオロオロとしながらも、晴輝を慰めてくれた。

その優しい口調がまた、晴輝に涙を誘うのだった。

――せっかく、強い存在感が手に入ると思ったのにぃッ!!

闇は光を引き立てて、光は闇を引き立てる。

それと同じように、仮面は輝きを増していく。

晴輝の存在感を、置き去りにして……。

神気は晴輝を、天国の扉から絶望の淵へと一気に突き落としたのだった。

肉体レベルは基本性能に加算。

それに対し、スキルレベルは基本性能に乗算。

晴輝は肉体レベルとスキルレベルをそのように仮定していたが、『仮面発光事件』は思わぬ形でその仮定が証明された出来事だった。

――さておき。

数分経ってやっと涙が止まった晴輝は、預かったマジックバッグから旭川で手に入れたいくつかのアイテムを取り出した。

まずひとつが1本の木。

直径10センチ、長さ1メートルほどのそれは、ダンジョン主の素材だ。

他の冒険家が素材のみのハントを行っていたおかげで、売却価格が芳しくなかった。

木材は様々な用途に活用出来る。

せっかくの主素材を無理に安値で売却するより、使えるなら自分達で使った方が良い。

そう思い、晴輝はすべてを手元に残しておいた。

「これを加工してほしいんだが、どうだ?」

「んー? あ、これってダンジョン主の素材じゃない!」

晴輝にはただの木にしか見えないが、朱音は一発で正体を見破った。

さすがは大企業一菱の店員だけはある。

「いろいろ加工出来るけど、なににするつもり? さすがに家具にするのはもったいないと思うけど」

彼女の言は旭川の特産品『旭川家具』を指しているのだろう。

だが家具が欲しいなら朱音に頼まず旭川で購入している。

「魔剣の鞘を新調したくてな」

そう言って、晴輝は己の魔剣をカウンターに載せた。

魔剣は度重なる戦闘によって成長していた。

購入当初より刃が反り、刀身も伸びている。

騙し騙し使っていたが、先日の下級神との戦いによって大幅に成長し、ついに鞘に収まり切らなくなってしまったのだ。

「鞘には出来るけど。その魔剣、成長するのよね?」

「そうだな」

「だったら鞘は作らないで、抜き身のまま所持するのはどう?」

「抜き身のまま?」

「ええ。柄と鍔の部分を引っかけるような仕組みのホルダがあるのよ。それなら刀身が成長してもずっと使い続けられるけど」

「うーん」

晴輝は顎に手を当てる。

刀身がさらに成長したら、何度鞘を新調しても無駄になる。

魔剣は傷も付かないので、刀身を保護する目的での鞘は必要ない。

しかし、常に抜き身だと動いた時に回りが傷付いてしまう可能性がある。

携行中の安全が確保出来なくなる。

(抜き身も格好良いが……しかし)

「うん。やっぱり鞘を作ってくれ」

「理由は?」

「格好良いから!」

「はあ……」

晴輝の言葉に、朱音が呆れたようなため息を吐いた。

折角魔剣が反って脇差しのようになっているのだ。

ここで鞘を作らねば、居合い斬りという最も存在感の強い攻撃法が出来なくなってしまう!!

刀身を抜くと同時に真っ二つになる魔物。

抜いた刀は既に、鞘に収まっている。

『強いッ! 刃がまったく見えなかったぞ!?』

『……そこの剣士、名はなんと?』

『名乗るほどの名はないよ』

――と、そんな存在感が強くなりそうな妄想を晴輝は何度したことか。

居合い斬りは晴輝にとって、 夢の攻撃(ロマン) の1つだった。

鞘の購入を諦めるわけにはいかない。

「あーうん。なんか判らないけど、判ったわ」

曖昧な言葉を呟きながら、朱音が頷いた。

ほんと男ってみんな病気を患ってるわよねえ、理解出来ないわ、と言うように朱音が淡々と魔剣のサイズを細かく測っていく。

鞘は魔剣より数サイズ大きく、余裕を持って製作することに。

「ただ鞘を作っても面白くないから、ミドルクラスをベースに加工しようと思うんだけど、どう?」

「鞘にミドルクラスなんてあるのか?」

「あるわよ。鞘付きの武器なんてほとんどドロップしないんだから」

「あー、そう言われればそうだな」

ダンジョンでドロップする武器に、鞘が付いているものは少ない。

であるなら、当然一菱はダンジョン産の武器を収める鞘を何点も製作しているはずだ。

武器のグレードに合わせた鞘作りは、出来て当然なのだ。

「それに、鞘を新調する冒険家は少なくないのよ」

「そうか。なら任せた」

「はいはい、任されました」

注文用紙に書き込んで、晴輝は次の素材を取り出した。

「これなんだが」

「…………んん?」

その素材を見て、朱音の眉間に皺が寄った。

晴輝が取り出したのは、エスタの抜け殻だ。

セミや蛇の抜け殻と違って、エスタのそれは非常に硬い。

軽く叩くと、まるで鉄を叩いたような高い音が響くほどだ。

「……これ、どこで手に入れたの?」

「うちのエスタが脱皮したんだ」

「脱皮……」

信じられないというように、朱音が訝しげに晴輝を見た。

嘘ではない。晴輝は軽く首を振る。

「あの子、脱皮するのね」

「ああ。で、これは買い取れるか? ……っていうか、加工は出来るのか?」

「そうね。買い取るなら……」

朱音はルーペを用いてエスタの抜け殻をマジマジと見つめる。

「5万円かしら」

「ハァッ!?」

晴輝は驚きの声をなんとか呑み込んだ。

蝉の抜け殻程度に思っていたエスタの抜け殻が、5万円もの値段が付けられるとは思いも寄らなかった。

「高いんだな」

「ええ。これに似た魔物が他のダンジョンで出るのよ。死蝕虫って言うんだけど、その魔物の甲殻とすごく似てるのよ。実際の死蝕虫より値段は控えめだけど、損はない価格だと思うわよ」

「ほー」

エスタはゲジゲジの稀少種だ。

どこかのダンジョンに、エスタと同じゲジゲジの上位種が居てもおかしくはない。

それが死蝕虫と呼ばれているとまでは、晴輝は知らなかったが。

「加工するなら防具だけど、鎧ならサイズ的に1領しか作れないわね。性能はムカデ以上は確実だけど。どうする?」

「なら火蓮の防具を作ってくれ」

下級神との戦いで、火蓮は危険な目に遭った。

武器の投擲攻撃は、斬撃よりも鈍かった。

きっと晴輝ならば避けられただろう。

しかし火蓮は避けられなかった。

後衛職の彼女では晴輝のように、攻撃を躱す能力が低い。

だからと、火蓮が攻撃を避けられるよう特訓するのは少々ズレた発想だ。

誰にだって得意不得意はある。

得意な物事は練習で伸びやすいが、不得意な物事は練習しても伸び難い。

なので苦手な面は、武具で手早く補う方が効率的である。

火蓮はいまムカデの鎧を装備している。

現状、これではいささか防御不足だ。

晴輝は鱗の上位防具を装備しているので、防具の更新はしばらく不要。

このことから、もし可能であれば火蓮の防具を新調しよう。

――そう、晴輝と火蓮はK町に移動する間に、話し合って結論を出していた。

「んじゃあ火蓮の防具製作に回すわね。作る防具は、アタシに任せてもらっても?」

「もちろん」

時々火蓮を連れだってダンジョンに潜っている朱音なら、火蓮に必要な防具に一番理解があるはずだ。

晴輝は一も二もなく頷いた。

最後に晴輝は、バラバラになった素材を取り出した。

すると、いったいどうしたことか。

素材を見るなり朱音が固まってしまった。