軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

<番外編SS>オリビアとの初顔合わせ

ゼーグ島内、シリウス邸。

「ねえねえシロ~、変なトコない? 後ろの裾とかほつれてないかなぁ……」

シリウスの執務室のすぐ隣にある控えの間。

クロは姿見の前でソワソワしながら、何度も自分の姿を確認していた。

「大丈夫だクロ。きまっている」

「えへへ~、ありがと~」

シロの言葉にクロは嬉しそうに笑いながらも、しかし鏡の前から離れず、今度は前髪をなおし始めた。

シロも先程からタブレットに何か描いては消し、描いては消しを繰り返している。

「おいおいお前たち。ちっとは落ち着け」

ソファーに深く腰を下ろしたレオは、溜息を吐きながらシロとクロを睨む。

しかしそんな彼も、組んだ足を先程から落ち着きなく動かしていた。

シルは、そんな3人の様子を見ながらこっそりと息を吐く。

彼らがいつになく緊張しているのも無理はない。

3人は今日、初めてオリビアと顔合わせをする。

その際オリビアから気に入られれば、彼女の専属護衛となることが決まっていたのだ。

「あ~ドキドキする~。精霊姫様かぁ~。シル様はオリビア様にお会いしたこと、あるんですか?」

クロがシルに尋ねる。

「直接はありませんね。映像のみです。それも3年以上も前ですから、かなり成長なさっておいでかと。噂では、精霊の女王であらせられるシェラ様と非常によく似たお顔立ちをしているとか」

「ほえ~」

ブラン王国消滅の日の女王との邂逅。

未だ彼等の脳裏には、あの日の出来事がしっかりと焼きついていた

「精霊の女王。美しいというよりも、もはや神々しくて恐れ多かったなぁ……」

レオは、あの日見たシェラの姿を思い出しながら呟く。

「分かる……一緒にいた闇の精霊たちも綺麗だったけど……怖かった」

クロは思わず腕を擦る。

そんなやりとりをしていた時、扉のノック音が室内に響いた。

「どうやら時間のようですね。行きますよ」

シルの声に、レオ、シロ、クロはしっかりと頷いた。

「面を上げなさい」

シリウスの執務室に通された4人。

跪いた状態で視線を下げていたが、リシューの言葉でその顔を上げる。

ホワイトレイ家当主であるシリウスと、その伴侶オリビア。

手の届く距離に座る2人を見た彼らは、その見目の美しさと圧倒的な存在感に思わず息を飲んだ。

自分たちが命を懸けて守るべき存在。

ブラックレイはホワイトレイのために生き、ホワイトレイのために死ぬ。

それこそが喜び。

それこそが誉れ。

それはもう、信仰に近かった。

「どうだい? オリビア」

しばらくの沈黙の後、シリウスはオリビアに尋ねた。

「近くに行っていい?」

「ああ、勿論だよ」

シリウスの許可を得て、オリビアはソファーから立ち上がってシルたちの前まで歩く。

「彼らの名前、聞いていい?」

オリビアは振り返って、リシューに尋ねた。

「左からシル、レオ、シロ、クロです。オリビア様」

「え~シル、レオ、シロ、クロね。めっちゃ覚えやすい」

オリビアはリシューの言葉を復唱しながら上機嫌に一人ずつ顔を覗き込むと、最後ににんまりと笑った。

「オリビアです。皆さん、これからよろしくお願いします」

そう言うと、オリビアはシルたちに向かって軽く一礼した。

その瞬間、比喩ではなく彼らの目の前にキラキラと星が瞬いた。

どうやら気に入られたようだ。

オリビアの表情を確認していたリシューは、密かにほっと息を吐いた。

顔合わせを終えたレオ、シロ、クロは、シルを残して一足先に控えの間へと戻ってきていた。

「やばいやばいやばいやばい。なに、あれ。なにあれ、なにあれなにあれなにあれ。綺麗すぎる……」

クロは膝を抱えたままソファーの上に座り、ひたすら呪文のように小声で呟いた。

「……いや、分かる」

シロも同意見だ。

彼らはその地位と育ってきた環境のせいで、小さい頃から様々な人間を見てきた。

その中には、一般的に美形と云われる人間たちも多くいた。

つまり彼らは、非常に目が肥えていた。

ちょっとやそっとの美形など、掃いて捨てるほど見てきていたのだ。

しかし今日、それが思い込みだと気が付いた。

「すごい、すごいよ! あれが本当に『美しい』って言うんだね。あんな素敵な人、僕今まで見たことない! それに何て言うのか、神秘的?」

オリビアの人間離れした外見もさることながら、纏う雰囲気が一般のそれとはまったく違う。

一見すると、幻のように儚く見えるが、感じる存在感や魔力量が生半可ではなかった。

クロは、隣に座るシロの袖口を興奮しながら引っ張る。

「すごかったね、すごかったね」

「ああ、まさしく精霊姫だ……」

シロはオリビアの姿を忘れないうちに、なんとか絵に残そうとタブレットを取り出した。しかし、

「シロ、業務中だ。落書きは控えろ。それにすぐシル様も戻られる」

レオの言葉にシロはピタリと手を止めた。

「落書きではない……」

シロはしょんぼりしながら小さく呟くと、しぶしぶタブレットを脇へと追いやった。

それからほどなくして室内にドアのノック音が響くと、控えの間にシルが戻ってきた。

「どうでしたか? オリビア様とのお顔合わせは」

シルはそう言いながら、皆の表情を順番に確認する。

彼らの表情の中に精霊に対する恐怖心が少しでも見えたなら、この仕事は辞退しなければならなかった。

しかし、その心配も杞憂に終わる。

彼らの瞳に浮かぶのは、恐怖ではなく興奮や歓喜といったプラスの感情だけだった。

「どうやら問題なさそうですね」

シルはほっとしながらタブレットを取り出した。

「リシュー様より許可を頂きました。これから私たちは、晴れてオリビア様の専属護衛の任に就きます」

「やった!」

「おっし!」

「ありがたいですね」

シルの言葉に、レオたちは手放しで喜んだ。

こうして彼らは、めでたくオリビアの専属護衛となったのだが……。

見た目に反してかなりわんぱくなオリビアに、近い将来とんでもなく振り回されることになるなど、今の彼らは知る由もなかった。