軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

でる

それから一か月が経った。俺たちは焚き火を囲いながら昼の休憩を取っている。

俺はシーラとクエナから頼みを受けていた。

それは俺から特訓を付けてほしい、というものだった。

ただし、途中で指名依頼や緊急依頼が来たら中断する前提ではあった。

だからこそ、冒険者カードが鳴り響いた瞬間は中断の二文字が頭に浮かんだ。

しかし、俺のカードには通知が来ていない。

クエナとシーラのほうに送られているようだった。

「なんの依頼だったんだ?」

新しい木をくべながら尋ねる。

彼女たちはこの一か月で十分以上に強くなっている。それこそ、もう特訓なんて必要がないくらいに。

最初は限界ギリギリな疲労感溢れる顔つきだったが、今や禁忌の森底でも余裕をもって笑みを浮かべていた。

まぁ、俺が傍にいると魔物が寄ってこないから安心しているという面の方が多いのだろうが。

普段は離れていると魔物が容赦なく二人を襲っている。それでも今やクエナとシーラは、ほとんどの種を相手にできる実力を持った。

だから割の良い依頼なら特訓はもう終わりでも良い。

しかし、シーラがカードをポケットに戻した。

「Bランク以上に渡されてる緊急依頼よ。戦争だって。スティルビーツ王国とウェイラ帝国がやり合うらしいわ。スティルビーツ王国が参戦要請を出してきてるわ」

「へぇ。てか、おまえいつの間にBランクになったんだ?」

「ふふん。やればできる子だから!」

キラリっと星を煌めかせながら胸を揺らしながら張る。

まぁ、実力的にはもっと上にあっても良いとリフも言っていたくらいだ。

これくらいの昇格速度が妥当なのだろう。

「あれ、ていうかBランク以上なら俺にも依頼が来るはずだが」

俺の疑問にはクエナが言う。

彼女はカードをポケットに仕舞っていない。

「おそらくウェイラ帝国ね。カリスマパーティーにユイが入っているでしょ?」

「うん、そうだが……ギルド側の忖度か」

「そりゃね。同じパーティー同士がぶつかり合って無駄だし」

「あれ、ユイってウェイラ帝国を抜けたわけじゃないのね」

「掛け持ちでしょ。面倒だからやる人は少ないけどね」

クエナが相変わらずの情報通っぷりを見せている。

ふと、気になる。

「クエナは受けるのか? この依頼」

シーラと違ってクエナはポケットにカードを仕舞わず依頼を見ている。

少なくとも受ける興味はあるみたいだ。

「……まぁね。ウェイラ帝国が敵だから」

姉を見返せるチャンスというわけだ。

しかし、シーラは快く思っていないようで苦々しくクエナを見ている。

「これ、明らかに負け戦よね? 小国のスティルビーツと列強の一角にあるウェイラ帝国じゃ……」

「負けそうになったら即座に退散するわよ。参戦するだけでお金がもらえるみたいだし、やれるところまでやるわ」

「むぅ」

クエナが余裕そうな笑みで言う。

それでもシーラは不満そうだ。そこに一押しとばかりにクエナが元気そうなポーズでウィンクする。

「それにここ一か月ジードに指定Sランクの森底で鍛えてもらったのよ? 簡単には負けないわ」

実際にここ一か月で彼女たちは強くなっている。

俺がいなくとも戦いながら禁忌の森底で一週間は暮らせるくらいには。もちろん、それはこの森の魔物との戦い方に慣れた分を込めているが。

「なら私も行くわ! それなら文句なし!」

シーラが、ふんすっと両手の拳を顔の前で握り締めて言う。

こうなっては止められないことを俺でも知っている。

「シーラがいてくれるなら頼もしいわ」

「ふへへ、随分と素直じゃないの」

褒められたことが嬉しかったのか、シーラが晴れやかに破顔する。

「まぁ変人だけど力はたしかだし」

「変人は失礼よ!」

「本当のことでしょー」

「むーっ!」

仲良さ気に二人が言い合う。

まぁ、こいつらなら大丈夫だろう。

元から戦場を渡り歩いたのだ。それがさらに強くなったと来れば彼女たちに敵うやつも滅多にいないはずだ。

俺が出会ってきた中では、だが。

「じゃあここは解散だな。特訓も終わりでいいだろう」

「えー、ジードはいいの? もう私の作るご飯が食べられなくとも」

「……それはちょっとイヤだが、露店のおっちゃんの串肉を食べたい気持ちもある」

「なぬっ!? 私の料理って露店のクオリティーなの!?」

「いやいや、露店は俺にとって高級品と同じだから。値段とかじゃなくて味が良いんだ」

比べる対象が露店ということでシーラが衝撃を受けたようだ。

だが、俺にとってみれば脂の乗りすぎている肉は歯応えがないし、腹を下す。

露店くらいがちょうどいいのだ。

「なんか納得いかないわ! 帰ってきたらクエナの家に来るのよ! そしたら私の真の手料理を食べさせてあげるんだから!」

「はいはい、楽しみにしてるよ」

ビシィっと指さしてくるシーラ。

そんな会話をしながら、俺たちは禁忌の森底から外に出た。