軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

それが彼女にとっての近道

ようやく依頼も完了し、クエナと帰りの道の途中。

道中で色々な人に絡まれることになった。

「ジードさん……! ありがとうございます……!」

「ぜひ我が国に!」

「いいえ、我が国に来てください!」

「わぁぁ……救世主様……!」

普通の人から感謝され、なにやら国の重鎮そうな人から勧誘され、どこかで見たことある幼女から崇められ――。

そういえば、と思い出す。

そういえば生中継していたな。

どうやらフィールド上の光景や言葉が外にも漏れていたようだ。

だから俺がこの国を救ったと思われているのか。

彼らの中には、

「ああ……二度も……ありがとう……ありがとう……!」

と、涙を流す者までいた。

前の依頼でも神聖共和国から脅威を払ったから、それを知っている者だろう。

悪い気分ではない。

だが、隣にいるクエナはなにを考えているか分からないくらいに無表情だった。

「どうした?」

思い返せば、彼女はずっと黙りこくっていた。

最後に言葉を発したのはルイナに声をかけた時だろうか。

俺が聞くとクエナがポツリと応えた。

「私は努力してきたの」

「ん。分かってるよ。他のやつと見比べればクエナは強い」

「でも、足りなかったのかな」

「……ルイナのことか?」

結局、ルイナがクエナに声をかけることはなかった。それどころか一度たりとも視界に入れることもなかった。

腹違いではあるが、容姿は似ている。血が繋がっている証拠だ。

だというのに、姉妹とは思えないほどの冷たさだった。

「ジード。あなたに嫉妬するわ」

「……」

そう言われるのは想定内だった。

しかし、それでも左胸が大きく跳ねた。触れたくない話題だった。

「あっさりSランクになって、あっさり一国の勢力を潰して、あっさり神都を救って、あっさり勇者候補達が憧れて、あっさり……――ルイナに認められて」

「…………」

それは嫌味ではない。

しいて言うなら自分に対する皮肉だろう。

自嘲気味に口角を上げている。目は決して笑っていないのに。

「私、どうしたらいいんだろうね……?」

クエナにしては弱々しい声音だった。

俺のほうを上目遣いで、今にも泣きそうな目で見てきた。

「さぁな。未来でも見えるなら的確なアドバイスができるんだろうけど、俺はそんなもの見れないんでな」

「さすがのジードも未来まで見てたら引くわよ」

クエナが冗談めかして笑う。

どこか空虚な笑みだ。

「でも、そうだな。クエナはもう特になにかやるべきだってことはないと思うぞ」

「え……?」

「おまえは十分に強い。このまま、その道を歩めばSランクだって近いだろう」

「でも、ルイナの側近の長だった男は私と違って底が見えないって……」

「それは前の話だ。戦ってみたら簡単に底が知れた。クエナならすぐにでも通過する場所だろうな。このまま突き進めば簡単に」

決してむやみやたらに励ましているわけじゃない。

これが俺の本音だし、クエナに対する評価だ。贔屓目なんてものは最初からない。

「……ふふっ」

俺の言葉にクエナが嬉しそうに反応する。

今度は心から笑顔を作っていた。

そして、にこやかな表情で俺と目を合わせた。

「じゃあ私とパーティーを組んでちょうだい?」

「…………どこからどうしてパーティーの話になったんだ?」

一瞬、シーラが頭を過った。

彼女も似たようなことを俺に提案してくる。二言目にはパーティーを組んでくれ、と。

しかし、俺はパーティーを組む必要性を感じず、毎度のことながら断っている。それは今も変わっていない。

「単純よ、あなたのおこぼれを貰いたいの」

「おこぼれ?」

「そう。あなたの栄光を私も浴びるの。そしたら必然と注目度もアップするでしょ?」

なるほど。

素直に得心がいった。

しかし。

「悪いがパーティーメンバーは募集も応募もしていない」

「なんでもするって言ったら?」

「うん、募集はしてない」

「なんでもするのに?」

「……うん」

念を押されて戸惑う。

いや、なんでもとか美女に言われたら……断れない。

だから必死に自分の視線を抑え込んでクエナを見ないようにしている。

おそらく俺は簡単に色香に誘われてしまうから……。

シーラの時もそうだった。

あの時はもう頭がパンクしそうで死にかけていた……。

なんて思っていたら頬に柔らかい手の感触を覚えた。

グイっと視界が持っていかれる。

「諦めないから」

息遣いまで伝わるほどの近距離。真剣な深紅の眼差しが俺を見ていた。

不屈の精神を含んだ声が耳に届いた。

「……どうしてパーティーなんだ? おまえなら一人でも」

「一人でもできるわよ。でもね、『あなた』とパーティーを組むことが近道だと思った。すくなくともSランクの試験を受けるまでは暇な時間があればアタックさせてもらうから」

にっこりと、どこか吹っ切れたような笑顔でクエナが言った。

彼女の悩みは解決していないのだろうが、それでも進む道を見つけたかのように。

おそらく、俺がルイナに勧誘されたという事実が、彼女にとってのゴール地点だと見たのだろう。

栄光のためだけじゃない。俺から学ぼうとしているのだ。

かつての俺が生き延びるために魔物から学んだと同様に。

……待て、それだと俺が魔物みたいじゃないか。イヤだなそれは。