軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

暇そうな依頼

さて。依頼内容は「勇者最終決定の場の護衛」だった。

毎年開催される場所が違うらしい。

今年は神聖共和国で開かれるとのことだった。

クゼーラ王国騎士団と戦って疲弊しているであろう国で開くのは中々すごいと思ったが、各国にもいろいろな事情があるようだった。

一つは交通の利便性が高い国であること。

一つはどことも戦争や小競り合いをしていない国であること。

一つは比較的に開きやすい地域にあること。

ほかにも諸々とあるがこんな感じだ。

実際にクゼーラ王国の騎士団と争った神聖共和国側の騎士団は下っ端のようなものらしい。

だから消去法で選ばれていったのだろう。

それに聖女のソリアがいるから縁起が良いので選ばれたともクエナが推測していた。

そんなこんなで神聖共和国に到着する。

今回は中央都市――神都にやってきた。

中心部には巨大な女神の銅像が建てられている。それは遥か離れた先からでもわかるほどに巨大だ。

両手を合わせて平和を祈っているような姿だ。

素人目だが荘厳さもあり慈愛も感じる、そんな銅像だな。

そして今回のメインとなる選定場。

そこは神都でも中心部にあるコロッセオの建築物だ。石造りなだけじゃなく幾多の魔術式が描かれている。

見た目以上の頑丈さがある。

関係者として中に入ってみると数万人は座れるであろう観客席に派手なバトルを演じることができそうな巨大な足場がある。

「すげーな。平和そうな場所にこんな建物があるんだな」

俺がそんなことを言っていると、一緒にクゼーラ王国から来ていたクエナが侘し気に言った。

「平和と争いが別というわけじゃないわよ。神聖共和国も軍事力は列強として相応しいし、このコロッセオだって今回だけじゃない。常日頃から使われているわよ」

言われてみればイベントの準備をしている人たちも慣れた手つきだ。

足元をちらっと見れば使用感ある汚れも多少見て取れる。

「へぇ。そんなもんか」

国や宗教の事情には詳しくない。

だが、イメージとしては理解している。希望論だけじゃなく、れっきとした力が必要だということを。

「おやおやおやぁ。依頼を受理した冒険者が来たなんて冗談みたいな話を聞いてみれば……おまえたちか」

突然、声をかけられる。

声の主のほうを振り返れば見知った顔があった。

バイリアス。勇者協会から派遣された依頼者であり試験官だった男だ。

俺たちのことを嘲笑しながら見ている。

「まさか本当に来るとはな! ほかに引き受けたやつなんていないのにも関わらず。そこまで金が欲しいのか? 羞恥心はないのか? んん?」

かなり子供じみた挑発だ。

笑い方も貶しているようで変顔をしているようにしか見えない。

「依頼は依頼ですから」

もうすでに呆れて見ようともしないクエナに代わって答える。

すると俺の返答が気に喰わなかったのか、むっとなった試験官が睨みつけてきた。

「正直に言いたまえ。どうせ働く必要がないと怠けずに金を得たいから来たのだろう? 金にがめつい者共め。所詮は生まれも分からぬ者達だ!」

バイリアスがはっはっはっと高笑いをする。

コロッセオ中に綺麗に音が響いて視線を集めている。

「それで俺たちはどこに行けばいいですか? 主にどこで護衛をしていろとかあります?」

「……ちっ。平然とした態度をしやがって。おまえたちは適当に観客席にでも座っていろ! そして指をくわえて眺めているといい。おまえ達では一生をかけてもたどり着けない勇者となる者達をな!」

「了解です」

どうやら本当にただの嫌味をしてやろうっていう依頼のようだ。

実のところ、俺としてはなんらかのパフォーマンス的なものを手伝わされるのかと思っていた。

たとえば今回はドラゴンを退治するというイベントを起こすようだが、先に護衛として来ていた俺たちが倒される。その後に勇者となる者がばっさりと決める! とか。

これじゃあ、ただの無駄遣いじゃないか。

「バ、バイリアス様! イベント用のドラゴンが脱走してしまいまして……!」

「なっ、なに!? なんでもいい! 適当にそこらへんにいるドラゴンを持ってこい!」

……なんて話も聞こえてきた。

大丈夫か、これ。