軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

裏のありそうな依頼を受ける

依頼内容は二つ。

一つは俺とクエナに向けられたものだった。

『王国にある地下ダンジョンの最深部にて存在する書物の確保』というものだ。それならパーティーで受けたほうがいいのでは、と尋ねたが「いや、依頼は一人でクリアすることが条件に含まれておる」と言われたのでクエナとはバラバラで最深部を目指すことになるだろう。

なぜ一人でないとダメなのか、までは聞けなかった。

そんな最深部は寝泊まりするらしく、用意をするよう言われた。といっても俺は素の状態で一年はいられるので問題ない。水浴びさえ済ませれば清潔不潔どうでもよくなるし。

もう一つはシーラの方だ。同じく戦闘の依頼だが系統は違って新しく王国の宰相になった女性の護衛らしい。

バラバラの依頼なのに三人まとめて呼び出す点といい、なにかがおかしい気がした。

まぁしかし、違和感を覚えていても依頼を受けないなんてことはない。

俺は依頼実行日と聞いた三日後に、目的の地下ダンジョンがある森についた。

森にはすでに数十人と強そうな男女が入り混じっている。

各地から集められた実力のある冒険者だそうだ。俺やクエナは王都から。ほかは帝国やら共和国やらから来ている。中には種族が異なるものまでいた。

その中でなにやらローブに身を包んだ男がいた。

リフから話は聞いている。『依頼人』の男がいると。彼がきっとそうなのだろう。

「時間が来ました。それでは依頼内容を説明させていただきます」

男の言葉に誰もが一様に耳を傾けた。

依頼内容はリフから予め聞かされていたものだった。さらにそれが詳細になったくらいか。

今から俺たちが進む地下ダンジョンは、総延長が把握しきれていないほどの長く深い洞窟とのこと。独自の生態系まで作られているほどで、かなり深い場所では新種の土竜が発見されているほどだそうだ。

そんな最深部になにがあるのか。

伝承では『魔術書』があり、それは歴代でも魔法に優れていた魔王が生前に自身のすべてを記した遺物。

信憑性もかなり高いらしく、書物の外見や色なども口頭ながら説明された。

そして、なによりも依頼が達成された時点で『最低金額』は払われるとのことだった。もちろん依頼達成者には倍以上の金額が渡されるわけだが。

これだと怠ける者もいるのではないだろうか、と思ったが周りはなぜかやる気に溢れている。

俺の隣にいるクエナも食い入るように依頼人の説明を聞いていた。

説明が終わると依頼人の男が「それではよろしくお願いします」と言った。

依頼開始ということだろう。

さて、なんか裏があるこの依頼。神妙な顔つきのクエナに事情を聞こうと思った矢先……

「おい! あんた!」

「ん?」

刺々しい声が俺にかかった。

振り返って声の主を確認すると、金髪に碧眼の正統派のイケメンがいた。敵視満点の目つきで俺の方を見ている。

「噂は聞いているぞ! ジードっていう飛び級でSランクになった男だな」

「ああ。それは俺で間違いない。どうした?」

「俺のことは知っているだろう。おそらくこの依頼ではライバルとなるだろうから声をかけた。おまえには負けないからな!」

俺のことを知っている……?

ふむ……

まったく見たことないのだが。外見的にも噂すらも耳には届いていないのだが。

俺はきょとんっとした顔つきでもしていたのだろう。

青年が頬を引く付かせた。

「ま、まさかこの俺を知らないのか!?」

「すまん」

「ふ、ふ、ふ……ふざけるな! 俺はウィーグ・ステイルビーツだ! 名前くらいは聞いたことがあるだろう!」

「……ふむ?」

「『まったく聞いたことない』って顔するな! さすがに世間が狭すぎやしないか!?」

元気な青年が続けて言う。

「俺はステイルビーツ王国の第一王子にして弱冠十八歳ながらAランクの冒険者となった『閃斬』のウィーグだ! 覚えておけ!」

「ああ、よろしく。俺はジードだ」

なるほど。

あまり詳しい事情は知らないが、とにかくすごい人なのだろう。

まだ大陸のことを勉強中なのが申し訳ない。

「いや、ノリが軽すぎるんだよ! ああ、もういい! 俺は先に最深部へ行く! ランクはおまえの方が上だが、真の実力と女神さまに愛されているのはどちらが上かを教えてやる!」

そう言いながらウィーグが走り地下ダンジョンの最深部を目指して行った。

さて。ようやくクエナに本題を聞ける。

とクエナのほうを振り向くと、踵を返して帰路についていた。

「あっ。おい、クエナ。この依頼の本当の目的ってなにか分かってるんだろ? 教えてくれないか」

「説明すると長くなるわ。それに、ジードは興味がないものだと思うし」

随分と意味深な物言いだ。

表情もどこか考え事をしているように見える。

そして俺がなにかを言う前にもう帰ろうとしていた。

「帰るのか?」

「ええ。どうせこの依頼じゃジードには勝てないわ。……それなら別の依頼で通過しないといけないし」

後半部分はぼそぼそと自分に言い聞かせているようだった。

それ以上、俺からなにか声をかけることはなかった。

勝てないか。

まぁ、それは冷静な分析だ。

俺の探知魔法はすでに最深部を把握していた。

この地下ダンジョンかなり深い。入り組んだ場所や、存在する魔物だけでも三日以上はかかるだろう。

地形を把握しているが、俺でも色々と壊して通路を作っても半日はかかるかもしれない。

だが。

「転移」

使用者が少ないという、この魔法を使えば一瞬だった。

探知魔法による状況・状態の確認ができるため俺はどこにでも行ける。

そして辿り着いたのは――薄暗い部屋だった。