軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

シルレ視点

私――シルレ・アールアは、往来をジードさんと歩いている。

この往来も以前はそよ風の音が目立っていた。人の声なんて滅多に聞こえず、心のどこかで閉塞感があった。

けれど、今では満足のいく賑わいだ。

大陸の各地から珍しいものを運んでくる旅人や、エルフの特産を売る露店、大道芸人の周囲には見物人で溢れていた。

隣を歩いているジードさんにも楽しんでもらいたいのだけど、なんだか遠慮気味だ。

「本当にいいのか?」

「なにがですか?」

「本当に家に泊まっていいのかなって」

「ええ、是非ともうちに泊まってください。ラナもそうして欲しいと、かねてより願っていました。リフさんが魔法構築をするための場所も家と近いですから、逆にうちに来なければ万が一の時に対応できませんよ?」

そんな会話をしていると、私の家に着く。

ドアを開けて中に入る。ジードさんも続いた。

リビングからひょこりと小さな顔が覗く。私と同じ銀色の髪に、私と違う青い瞳。

「わー! 久しぶり、ジードさん!」

「久しぶ……ぐほっ」

ラナがジードさんに飛びついた。見ようによっては戦闘行為にすら勘違いしそうな突撃だった。

三か月なんて私たちからしてみれば一瞬のこと。

それくらいの時間に「久しぶり」なんて使わない。それがよほど待ちあぐねた人でなければ。

きっと、そのことをジードさんは知らないだろう。

「こら、ラナ……迷惑でしょ」

「えへへ。ごめんなさい」

ラナはジードさんの何倍も生きている。

けれど、傍から見れば歳の差がある兄妹のような体格の違いをしている。それがエルフと人族の差異を現していた。

「俺なら大丈夫だよ」

「さすがジードさん! 身体が頑丈だもんねー!」

「ああ、鍛えられてるからな」

ラナがジードさんの胸板を触る。

こういったスキンシップに躊躇をしない点はすごい。私はおしとやかに生きるように心がけているから、ここまで積極的に動けない。

「あ、そうだ。ジードさん」

「ん?」

ラナが一歩離れる。それからニマニマとはにかんでいた顔が恥じらいを見せる。同性の私でも「可愛い」と感じてしまう雰囲気を醸し出していた。

「お風呂にしますか? お夕飯にしますか? それとも、わ・た・し?♡」

可愛い。

たしかに可愛かった……のだけど……。

腰をくねくねさせたり、両手をきゅっと握って顔の近くに寄せたり。

そういえば最近ずっと部屋で独り言が聞こえているようだった。おそらく、これを練習していたのだろう。

違和感という違和感はないが、かなりわざとらしいのではないだろうか。

これではジードさんもさすがに構えてしまうのでは……と、思っていたのだけど。

「じゃあ、ラナで」

すごい簡単に注文したー!!!

う、うそでしょ……?

いや、あの。ここでその選択ができるような人だっけ!? それともそういう感じになったの!?

思わず気が動転してしまいそうになる。

「やた~!」

「実はちょうど持ってるしな」

「もー、ジードさんってば準備がいいんだからっ!」

えっ。

持ってるってなにを? いったいなにを持ってるんです?

ラナも顔を赤らめてるけど……!

ちらりと、ジードが私を見た。

「シルレもどうだ?」

それって三人でってことですか!?

私は思わず顔を逸らしてしまった。

「ふ、不潔です! 勝手にやっていてください!」

本当はしてみたい。

けど、急に誘われては拒絶してしまうに決まっている。

じんわりと後悔が心を蝕む。

私を置いて、二人はさっさと部屋に入って行った。

……うぅ。

あれからリビングにいる。

やはり、気になってしまう。

二人だけでなにをしているのだろう。

だって、ジードさんはまだ家に来たばかりなのに。

(いや、よく考えれば、そうだ)

ジードさんには家の案内をしていない。

どこの部屋で寝泊まりしてもらうとか。

食事はいつ出すかとか。

うん、そうだ。

お話をしなければ。

だから私がラナの部屋を覗いたのも別に不健全に興味があるわけではないのだ。

「ちらり」

部屋の扉は小さく開かれていた。

中の光景が微かに見える。

そこには……

裸体の二人がくんずほぐれつ……

ラナの小さな身体を包むように……

というわけはなく。

「よし、俺の勝ちだな」

「むーーー、負けたあああっ!」

ラナが札らしきものを宙に投げて悔しがっている。

札には多様なマークが付けられており、なにかしら意味があると想像できる。

……これは!

「私の妄想と違う!」

思わず声を張り上げる。

ビックリした様子でラナがこっちを見た。

バレてしまったみたいだ。

「お、お姉ちゃん? どうしたの?」

「シルレも遊ぶか?」

「い、いえ、大丈夫ですっ!」

ラナを選んだのって。

本当に遊ぶためだったみたいだ。

不潔なのは私のほうだった……。