軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

平和で覚悟なひととき

……――それから数日が経っている。

「あれー? 食器ってどこに入れたっけ?」

四角形のマジックアイテムを覗きながら、シーラが声を出す。

それにネリムが自分の持っている引っ越し用の収納アイテムを確認して、

「こっちよ。家庭用の小道具系」

「おっけー! これも入れておいて!」

俺達はウェイラ帝国の王城に引っ越すための準備を始めていた。

俺、クエナ、シーラ、ネリムの合計四人が世話になるので中々大忙しだ。ネリムはかなり迷っていたが(俺を見ながら)、リフもウェイラ帝国との連携を強めるためにギルド本部の移転を目指すとのことで渋々来るようだった。無理しなくてもいいのに、とは思う。

引っ越し作業は手伝ってもらえるという話になっていたが、クエナの「私物は人に触らせたくない」という一声で断られた。ルイナが「これから王城に住むのだから潔癖すぎても困るぞ。女性に限定したりの配慮はできるのだから……」と言っていたが、クエナは頑として譲らなかった。

これからのことを考えると胃がキリキリしてくる。おかしい。俺の身体は頑丈なはずなのに。

不意にクエナが長方形のマジックアイテムを取り出した。

「そういえばこんなもの貰ってたわね……」

「なんだっけ! それ!」

「ほら、感情メーターよ」

クエナがシーラに尋ねている。

クエナはマジックアイテムをどうしようか持ちながら悩んでいる。

めんどうくさい作業をしているというのに、彼女たちを見ていると随分と幸せな気持ちになれる。

出会った頃とか、一緒に食べたご飯とか、見てきた景色や冒険を思い出すと、胸が暖かくなってくる。

だからこそ、思う。

「……みんなはここに残ってもいいんだよ」

不意に心の奥底に眠っていた言葉が口に出た。

すっ、と空気が静まり返った。

慌てて彼女たちに弁解する。

「あ、今のは違くて! ほら、今回の怪物とかヤバかったからさ。俺としては危険な目に遭って欲しくないからさ。アステアとの戦闘も俺だけがいいなとか思ってて……」

言っていて、これは逆効果だと思ってしまった。

やっぱり予想通りで彼女たちは不服そうな顔をしている。

だが、怒りは聞こえてこない。その代わりにクエナが静かに口を開いた。

「私の秘密を教えてあげる」

「秘密?」

「あんた、私が起きるの早くなったって気づいてたわよね。私ね、好きなのよ。あんたの寝顔」

突然のカミングアウトに当惑してしまう。

なんらかのリアクションをするよりも先にクエナが続ける。

「でも夜は灯りをつけたくないし、眠たいし。だから朝、あんたよりちょっぴり早く起きるの。そんなことを繰り返していると、いつもよりも早起きになってしまってたの」

そんなクエナの隣で「私も朝は密かにギュッて抱きしめてエネルギーをもらっています!」なんてシーラが言っている。

クエナが言う。

「危険な目に遭って欲しくない? そんな場所にひとりで行かせられないわよ。今回だって私たちがあの化け物を足止めしたじゃないの。あなたより弱いって自覚はあるけど、それくらいはできるわ」

クエナの言葉は止まらない。

「あなたがいなくなったら、もう死んでもいい。それくらい、愛してる」

そこまで言い切って――ぼんっとマジックアイテムが煙を吐き出した。

「おおー! 好きがマックスだって! クエナもジードのことが大好きなんだね! 知ってたけど!」

シーラの言葉で……おおよそ、その感情メーターとやらが何なのかわかった気がした。

なんだろう。一気に恥ずかしい想いがこみ上げてきた。

「その、ごめん。いや、本当に……うん、これからも一緒に生きていこう……」

「う、うん……」

「ひゅーひゅー! お熱いねえ! 私も混ぜてよ!」

「あ、やばい。キモイ」

俺達の引っ越しの支度は二日ほどかかってしまった。

ああ、そうだ。お別れの挨拶をしないといけないな。

こっちのギルドの面々、串肉屋のおっちゃんとか。それと騎士団のやつらとかに。