軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

作戦

正式にシーラから騎士団救護の依頼を受け、また数日が経った。

シーラから今後の王国騎士団の活動予定を聞いていた。そしてシーラが伝えてきたとおりに騎士団は動いていた。

王国騎士団のほとんどが一堂に会し、すべての団員が奴隷の首輪を着け、神聖共和国の近隣で陣営を作って待機していた。

野営する騎士団を遠くから望遠鏡で見ていた。

「戦争する気なのね」

クエナが覗き終わった望遠鏡を俺に手渡して言ってきた。

「ああ。シーラ曰く王族や文官を押し切って騎士団が独断で戦争を決めたそうだ。実質クーデターだよ」

「忠誠を誓っているはずの連中が情けないったらありゃしないね」

「まぁ奴隷の首輪を装着させられてるんだ。騎士団の上の数名が反旗を翻した時点で抵抗する勢力はなくなったも同じさ」

第一、第二、第三騎士団の団員がほとんど奴隷の首輪を装着させられている。

自らの意思や命の危険で竦む足をなくすため。

「でも本当にいいの? 相手は一国……それもクゼーラ王国っていう列強のほぼ総戦力よ」

「分かっているさ。それに相手は元々仲間だった奴らでもある。だからこそ、無用に傷つけないために――彼らを呼んだ」

俺やクエナのさらに後ろには総勢数十名を超す冒険者が集まっていた。

リフに依頼した腕利きの冒険者たちだ。

しかも彼らは全員、あまり王国とは仲のよろしくない国を主軸として活動している面々だ。

「ま、ギルドとは関係のない活動って体らしいが帝国支部のギルマスからはしっかり話と金は通ってるからよ、仕事はしっかりさせてもらうぜ」

そう言ったのは体毛が濃い男だ。俺と同じ黒い髪に、大陸では一般的な茶色い目をしている。

名前はディッジ。

いつもはウェイラ帝国で活動をしているそうだ。

Aランクでもかなりポイントを稼いでいる冒険者らしい。

「ええ、頼もしいです」

「Sランクのあんたに言われちゃ敵わんがな。っと、そうだ。ほれ連れてきたぞ」

ディッジが言いながら担いでいた騎士を俺の前に持ち出した。

騎士は猿轡と手荒く結ばれた縄を持っていた。

手足から血が出ている。

しかし、これはディッジが捕らえる時につけた傷跡じゃない。かといって血が出るほど縄を締め付けているわけでもない。

騎士は光のない眼で抵抗しているのだ。

その結果、手足から血がにじみ出ている。

「話は聞いていたが酷いな。俺たちを見るや否や襲ってきたぞ」

「奴隷の首輪で命じられていたんですよ。彼らも襲いたくて襲っているわけではないでしょう」

「なるほどねぇ。王国ってのはこれくらい乱れてるもんなのか」

「いいや、文官や外交や王族はなんら悪評は聞こえてこないらしいですよ。ただ軍務関係が酷すぎると」

「なんだそりゃ、王族はなんも手出ししてないのか」

「してないわけじゃなかったらしいですが実権を握ってるのは第一騎士団の団長だそうです。だからさっきも言ったようにクーデターなんですよ、これは」

俺はリフやシーラから聞いた話をそのまま説明しながら団員の首輪に手をあてる。

よかった。俺のものと同じ型だ。

だが今回はそれだけじゃない。試しておきたいものがある。

魔力というのは手をあてたら直接流し込みやすい。しかし、逆に手を離した際に魔力を流し込もうとすると難易度は上がる。

本来なら触れた状態の方が確実で消費する魔力も抑えられる。

だが、相手は大多数であり、いちいち触れて解除するのは時間がかかり手間もかかる。

前の手に入れてきてもらったものは壊れたからな。一個だけだったし、こうして実戦で試すことになる。

魔術回路は同様だ。

魔力の通り方も問題はない。

うん。

チリっと音を立てて首輪が外れた。

よし、できた。

「すげえな。オリジナルが混じっているとはいえ奴隷の首輪なんだろ。てかこんな芸当できるなら俺たちいらねーじゃねえか」

「いやいや、広範囲で、しかも大勢に対してはまだできないと思います」

「はぁーなるほどな。そこで俺たちが時間を稼ぐわけだ」

「はい。仕事内容はそんな感じです。まぁまずは命令をしている大本の団長格を倒しますが、それは俺がやりますので」

会話をしていると憔悴した団員の瞳に光がこもり、はっきりと周囲を見渡した。そして俺を見るや否やなんらかの言葉を発している。

猿轡をしているからはっきりとは伝わらないが。

「分かっています。外しますね」

猿轡と縄を外す。

逃げ出す様子も抵抗する様子もなしによろよろと起き上がった。

「あなたは……」

「騎士団を止めに来た者です。今はお疲れでしょう。すこし休んでいてください」

「……? は、はい。ありがとう……ございま……す」

団員は言いながら秒もかけずに眠った。

よくもここまで疲労している戦力で戦争を仕掛けようと思ったものだ。無理矢理動かしているとはいえ、いずれガタが来ることも分からないのか。

まぁそのガタが来ないように俺たちが動くわけなんだがな。

「それじゃあ行きましょう。なるべく団員は傷つけず無力化してください」

「誰に言ってんのよ。任せなさい」

「おう。これくらいのやつらなら遊んでても問題ない」

意気込みは十分。始めよう。