軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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それから眠るために戻ろうという道すがら、ソリアと出会った。

「ジードさんっ」

「ソリア。ひとまずはご苦労様って感じで良いのか?」

「まだまだ色んなやることがありますが……ジードさん、本当にありがとうございました」

ソリアが深々と頭を下げる。

そう畏まられると気まずいな。

「いや、力になれたのは移動くらいだろう。それ以外は協力できていたかどうかすら……」

頭をよぎるのはルイナ達の姿だ。

俺はむしろウェイラ帝国側に偏っていたようにすら思える。もちろん、そんなつもりはない。だが、結果的に見れば怪しいところではある。

「そんなことはありませんっ。きっと私たちだけでは東和国の人々を説得できませんでした。今もウェイラ帝国が大人しくしているのもジードさんがいるからです!」

両手をグッと握りしめて、ソリアが熱弁する。

役に立ったと言われるのは素直に嬉しいな。

「そうか。いつも大変そうなソリアの助けになれたのなら幸いだ」

「大変だなんて! 私はただジードさんのお隣に立てるよう、相応しい行いをしているだけですから……!」

ぶんぶんと両手を恥ずかしそうに顔の前で振り回す。

いちいち挙動が忙しくもあるが、そういうところも可愛くなるのはズルいな。

「隣なんて言わず、俺からすればソリアは上にいる存在に思えるけどな」

少し苦笑いをしてしまっただろうか。

だが、それは自分を卑下するものではなく、純粋な俺のイメージだ。

「そっ、そんな……私なんかがおこがましいです……!」

ソリアが完熟したリンゴのように赤らめた顔を両手で隠す。

「いや、本当に。だって想像もできないんだ。ソリアが何をしているのか。人々を癒して施して……たくさんソリアの話は聞くが、どれも凄すぎてな」

彼女の力量は果てしないものだと感じ取っている。

それは魔法的な意味合いだけではない。人徳や、彼女を想う人々……フィルなんかが正にそうだろう。

「わ、私は……ジードさんのお傍にいるのに……相応しいでしょうか……?」

ソリアが指の隙間から可愛らしい目を覗かせながら、おどおどと問うた。

「むしろ、ソリアの傍にいられるのなら光栄だよ」

こうしてカリスマパーティーとして一緒にいられることは誉れだろう。それは世間をあまり良く知らない俺でもよく分かる。

「……!」

ボッという擬音が聞こえてきそうなくらい、ソリアは指先まで恥ずかしそうに赤くした。

それから処理が追い付かなくなったのか、しばらく静かに固まっていた。

「そ、そそそそそ、そんなっ! わ、私のほうが……!」

また喋り出したと思えば、またそんな挙動不審な言動に戻っていた。

そうやって、しばらくソリアと話していた。ようやくソリアの調子が戻って平然と話し合えるようになった頃。

「……ジードさん。いつか話さなければいけないと思っていました」

ソリアが口を開いた。

それはかなり重苦しい雰囲気で、どうにも茶化せるようなものではないことだけは分かった。

「リフ様から言われていたことがあります。ジードさんは勇者に選ばれ、私は聖女に選ばれるかもしれない……と」

「へぇ」

そういえばスフィが言っていた。

彼女の持つ聖剣が俺に反応していた、と。ここに来る前はシーラに預けていってしまったが。

それはどうやら昔の勇者のものらしいのだ。

俺にも勇者というものの適性がある、と。

「――そして、その時はジードさん私もギルドを辞めろ、と言われました」

「なっ……どうして?」

「理由は明かしてはくれませんでした。しかし、リフ様が言うのであれば恐らく何かしらの考えがあるのだと思います」

「俺は単純だから、忙しくならないよう配慮してくれているんだと思ったが……」

ソリアが残念そうに首を横に振る。

「きっと、それだけではないでしょう。リフ様の黄金色の瞳には……まったく別の世界を映している時があるんです」

別の世界。

ソリアが言うのであれば、俺の見えていないものが確かにあるのかもしれない。

「案外、適当なことを言っているだけかもしれないぞ」

なんて、言ってみる。

あいつは面白半分で何かをしでかしそうなところがある。

だから今回の件だって……

「リフ様はかつて勇者パーティーの『賢者』であった方です。それも歴代で最強と言われていました。なんの考えもなしとは思えません」

「……――まじか」

何気に初めて知った情報だ。

そういえばあいつ自身のことを調べてはいなかった。というより、自分が所属しているからこそ、ギルドについて知るのを後回しにしていた。

あいつが……賢者か。

「私の方でも調べてみてはいますが、よく分かりませんでした。……なので仕方ありません――ジードさん」

ソリアが控えめに。

しかし、しっかりと口を開ける。

「もしも私たちが勇者と聖女になったのなら、その時は一緒に世界を平和に――……!」

「ソリア様―!」

後方から声がかかる。

フィルだ。

「むっ、なんだ。ジードもいたのか」

「いたら悪いのか?」

「そんなことはない。今回の一件ではご苦労だったな」

むすっと頬を膨らませて、ぶっきらぼうに言ってくる。

どうにも、いつぞやの来訪で不貞腐れているようなのだ。俺はなにもしていないというのに。

「ああ、おまえもな」

「それで、フィル。どうしたのですか?」

「ああ、実は薬に関する質問を受けまして。今よろしいですか?」

「わかりました。行きましょう」

フィルに連れられて、ソリアが踵を返す。

「――ソリア」

行こうとする彼女を呼び止める。

「は、はいっ」

「世界の平和とか漠然としたことは分からないけどさ。これからも何かあったら呼んでくれよ」

彼女の活動には心惹かれるものがある。

だから、こうして呼ばれるのは少しだけ嬉しいのだ。

俺が言うと、ソリアは嬉しそうに頷いた。

「はいっ。お傍にいられる者として――遠慮なく呼ばせていただきます」

満面の笑みで、彼女はそう応えた。

夜だというのに、イヤリングがキラリと輝いていた。