軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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ジードさんから連絡が来たのは、私とフィルが頼み事をしてから三日が経ってからだった。

運搬方法をなんとかしたと言うので待ち合わせ場所をウェイラ帝国の海岸に指定して待ち合わせている。

「ソリア様、そろそろ時間になります」

「わかりました」

艶やかで茶色い長い髪を一本に纏めた、『剣聖』フィルが私にそう言う。

彼女の後ろには数百名の神聖共和国騎士団の騎士達が馬車を率いたり、あるいは直立したりして待機している。

馬車の中身は金属製の入れ物で、中身は当然特効薬だ。

「しかし、やつはこれをどうやって運ぶのでしょうね?」

純粋な疑問をフィルが尋ねてくる。

そのことは何度も考えてきた。そして、私の頭で考え得る最も可能性として近いものは、

「……転移でしょうか?」

「私もそのあたりだと考えています。おそらく他の団員も同じでしょう。ジードの探知魔法と転移魔法が人外の領域にあるということは周知の事実ですから」

クゼーラ騎士団を出てから、その活躍っぷりは異常と言っても過言ではない。

そもそも一国を支えていた、一国の吉報を作り出していた人材なのだから、それは当然のことだろう。

ギルドへの推薦者の一人として、それはとても誇らしい。

……その結果、クゼーラ王国が崩壊した事実を受け入れなければいけないけれど。

「遅いですね? どこにも見当たりませんが……」

フィルが辺りを見渡しながらそんなことを言う。

たしかに見当たらない。周囲は平原となっていて林や森、山などの遮蔽物となるものは距離がある。

もうそろそろ姿が見えても良い頃だけど。

「それこそ転移でもしてすぐに来るのでは――」

ルーズな方ではない。

だから予想外の出来事でもない限りは遅刻なんてして来ないはず。

そんな考えを以って言葉を発しようとしたら、

「な、なんだアレ!?」

騎士の一人が荒げた声を挙げる。声音には動揺や焦りがあった。

ここにいるのは一人一人が様々な戦場を渡り歩いてきた猛者だから余程のことがなければこんな声を出すわけもない。

件の騎士が見ている方に目をやる。

(……?)

なにもない。

視線は上の方に向いている。

空になにかあるのかと思ったけれど、特に何かあるわけじゃない。

しいていうなら雨雲が遠くに浮かんでいるくらい。

念のため雨除けのテントを張っておくよう指示を出そうと思い、フィルの方を見る。

フィルもまた愕然としていた。

見渡すと騎士全員が呆気に取られているようだ。

「……ソリア様。私の後ろから絶対に離れないでください」

フィルが相当に覚悟した面持ちで剣を取り出す。

その姿に続いて他の騎士達も各員が戦闘態勢に入った。

「ど、どういうこと……? なにが見えているの?」

「アレです」

フィルが指先を伸ばして上空をさした。

目を合わせて見る。……雲だ。それも黒い雲。

だからどういうことなのだろう。

そんな疑問を感じ取ったのか、フィルが目を細めて雲から視線を逸らさずに告げる。

「――あれは竜です。それも数千の」

「……え?」

すぐには反応できなかった。

竜。

魔物として扱うのであれば基本的にAランク以上の存在であるとせよ。それがその生物に関して初めて教わる知識だ。

『ああ、強い生き物なんですね』

次にそんな淡い感想が出てくる。

強いと言ってもAランク以上はまだまだ他にもいる。

だから別に大して驚きはしない。

けれど、その次に出てくるストーリーはその生物の破壊力を知らしめるものだ。

『国を滅ぼした』

『敵対種族を滅ぼした』

『神をも喰らってのけた』

たしかにその存在が異様である証が幾つもの書籍や伝説に刻まれている。

実際に毎年のようにどこかしらの国が、その竜の気に触れたことで甚大な被害をもたらされているニュースが流れるくらいだ。

そこで初めて知る。

『最低がAランク。生物としてほとんどがSランクにいる』

ワイバーンなどはCやBなどもいる。

けれど、竜種の中でも屈強な『有色』と伝えられている、王道の竜がそれに当てはまる。

(目を凝らせば……分かる)

フィルが目を凝らしたのはそういうことだろう。私と同様にその竜がどれくらいのランクに位置する種族なのか知りたかったから。

そして結果は絶望的なものだ。

黒に、赤に、青――『有色』の竜だ。

「……そんな」

狙いはここではないだろう。

だけど、万が一にでも気まぐれを起こして狙われたら――。

私の回復魔法とフィルの人族最高峰の剣技、そして神聖共和国の精鋭達が集められた部隊。

たしかに強いだろう。

けど、数の差を振り返ると最低Aランクの有色竜が数千、対するこちらは数百。

(逃げても……)

仮に今から全力で馬車を駆けても厳しいだろう。

空を自由に飛べる竜の方が遥かに早い。

万が一にでも街に逃げられたと仮定しよう。それでもそこから無事でいられる保証はない。なによりも一般市民の方々を傷つけることはしてはいけない。

万事休す、それも過言ではない。

「――ん?」

フィルが腑抜けた声を出す。

戦闘間近の彼女にしては珍しかった。

「ど、どうしたの?」

「いや、何やら先頭の王竜らしきデカい体躯の上に……人が乗っています」

「え、人?」

太陽の光が眩いとフィルが片手を眉まで持っていき、視界を確保する。

その目は信じがたいものを見るようなものだった。

「……あれは……」

フィルが続ける。

「ジ、ジード!?」

そんな大声が響く。

ジ、ジジジ、ジードさん!?