軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6

それから土竜王としばらく共にして、土竜の集まる麓にまで着いた。

一様に茶色をしていて、個体によっては多少の薄さ濃さがあれど、相応しい土の色があれば区別がつかない。

「なんだ。我が最後か」

土竜王が先着を見て言う。

……数にして三十程度だろうか?

赤竜達と比べると心許ないどころの騒ぎではない。先代の土竜王がバックレるのも頷ける参加率だ。

「なんだぁ? 美味そうな人族がいるじゃないですかあ。これおすそ分けしてもらってもいいっすかぁ?」

土竜の一匹が言う。

図体も他より大きい。

言葉は間延びしていて、どこか威嚇しているような様子を覚える。

「あ、その人は我より強いからやめとけ」

傍らの土竜王が窘める。

すると絡んできた土竜がすぐさま機敏に姿勢を正した。

「ぬあ!? すんませんっす!」

どうやらこれが素のようだ。

彼ら土竜は舐められないように格下だと認識した相手には威嚇的になるらしい。

「でも、どうして人がここに?」

「そりゃおまえ、援軍よ。この人も参戦してくれるんだ」

「よろしく頼む」

これから仲間というわけだ。

そもそも各自の強さはAランクでも上位以上はあるのだが、それを上回る質や数が相手なのだから仕方ない。

いないよりはマシだ。……面と向かって言うのは酷だから口には出さない。

「「「ほぇー」」」

土竜達が俺を見下ろしながら相槌を打つ。

他種族とはいえ顔の機微が分かる。デンよりも強いということで期待の眼差しを向けている者や、どちらにせよボコされるのだからどうでもいいと思っているであろう者がいる。

中でも先ほど絡んできたやつは心配そうな面持ちだ。

「大丈夫っすかね? いくらデンさんより強いからって相手が相手っすよ」

「今回も同じ面子か?」

「うっす。白は不参加ですが六色の竜族が揃ってますわ」

「数はどれくらいだ?」

「それぞれ最低でも五百以上はいますな」

土竜達はバラバラに生活圏を作っているから各方面から集まってきていると前に聞いた。だからこそこうして現地集合になっていて、他の種族の動向がそれぞれ入ってくるのだろう。

戦う前から戦意喪失しているメンバーがいるのはそういうことだ。

土竜王が面倒くさそうにため息を吐いた。

「なんでそんな血気盛んなんだか……」

「ほーんとそれっす……」

土竜達も酷い受難だ。

こんなところで格差を感じるとは思わなかった。

それから山の頂上にまで行く。

もはや中腹辺りから感じていたことだが、異様というか、心根が弱い人が見れば卒倒するんじゃないかというレベルの光景が広がっている。

右を見れば赤竜の集団。左を見れば青竜の集団。しかもそれが大挙の列をなしているのだから驚きである。

土竜達は少数なため間に挟まれながらチビチビと歩いて行かなければいけない。

たまに赤竜側から嘲笑や侮蔑の声が挙がるが、土竜王はさすがの迫力で睨みを利かせて黙らせている。

(本当に格下には格好つけるよなぁ……)

実際に威厳があるのだが内心の本性はどうにかならないのだろうか。

ようやく辿り着いた頃には各色の竜王達を先陣に揃っていた。

黒、紫、青、赤、黄、緑の六色。そして土の茶色を加えて七色となった。

「ひとまずはこれで良いだろう」

厳かな低音が確かに響く。それだけでざわめいていた竜達が一斉に口を閉じて身体を強張らせた。

太陽を失った大地とも喩えようか。

とにかくデカい。そしてゴツい。黒竜王がそこに在った。

前回の勝者が取り仕切る決まりなのかな。

隣には以前に見かけた影がある。黒竜王の娘のロロアだろう。まだ俺には気づいていないようだ。

「ルールを説明する。……と、いっても例年と変わらん。あくまでも力比べだ。死者を出した者は殺す」

そう乱暴に告げられた。

誰もそれに異論はないようだ。否定的な物言いも態度もない。

おそらく混戦になることが予想されるが死者は出すなと。随分と器用なことを言うが、やり過ぎないための口利き的なものだろうか?

とにかく、その唯一のルールだけ説明されると誰もが解放されたように準備運動を始めたり、誰を狙うだったりを話している。

だから隣の変化にはすぐに気づけた。

赤竜王が大きく息を吸って口を豪快に開いた。

「俺はこの戦いに勝ったら黒竜王の娘であるロロアを嫁にもらう! そして黒竜を統べて他の竜族も統一する!」

この一声にどの竜もが唖然とした。

しかし、赤竜達だけは瞬時に歓喜の叫びを轟かせた。

「そしてぇ! 我ら赤竜がこの世界を制覇するのだぁぁぁぁ!」

「「「うおおおおーーーー!!」」」

赤竜の盛り上がりを見て、思わずため息が漏れる。

「うわー……やる気出されるのは面倒だな」

こういう目的意識を持っているやつほど粘る。それも尋常ではないくらいだ。

傍らの土竜が俺の顔を覗いてくる。

「急ぎのお願いなんですか?」

「ああ。あまり時間をかけたくないんだ」

「そりゃー……。この祭り、毎回一週間くらいかけてぶっ通しでやりますよ」

「マジ?」

嫌々そうに土竜王が頷く。

それだけ付き合わされていた過去を思い出したのだろう。

しかし、それは本当に面倒だな。

他の陣営の竜は数千とかのレベルだ。一匹倒すだけでも骨が折れるだろうに。

「あ! ジード!」

不意に俺の名前が呼ばれる。

ロロアだった。

赤竜王の声掛けには無情にも反応せず、俺の方を見て人族の俺でも分かるくらいにこやかな笑みを浮かべている。

「よお。挨拶に来たぞ」

なんか色んな竜からの視線を浴びている。

盛り上がっていた赤竜王が俺のほうをギラリと睨む。

「あぁん!? 貴様は土竜王の餌じゃないのか!?」

「ああ、一応、土竜側で祭りに参戦させてもらおうと思っているんだ。よろしくな」

ピキピキと赤竜王が分かりやすい怒りの血管を額に浮かべている。

土竜王が「あっ」と助言してくる。

「竜王全員を倒したらすぐに終わると思いますよ」

「……ほー」

それもまた骨が折れそうだ。

だが、

「人族ごときがぁぁ! 痛い目を見ても知らねぇ――――! ブボォッ!?」

俺に迫って来た赤竜王を地面にめり込ませた。

一発KOだったようでぱらぱらと砂ぼこりを舞わせている奥底では赤竜王が気絶していた。

「あ、やべ。つい殺気が駄々洩れだから戦闘開始かと……」

「ルール説明が終わった時点でいつでもOKっすよ」

――土竜王のツッコミと同時に竜同士での戦いが始まった。