軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

来る

俺が現場に着くと監督者らしき男は既にやられていた。

意識はあるようだ。しかし、腹部に穴ができている。

「おい、おまえ。立てるか?」

「……ぬ……ぅ……」

男がなにやら取り出す。小瓶のようなものだ。きっとポーションかなにかだろう。口を震わせながら開けている。

とりあえず手を添えて口に含ませてやる。

「ぷはぁ……助かったよぉ。ジードさん」

「俺のことを知っているのか?」

「同じSランクだからねぇ。初めまして、俺はトイポだぁ」

こんな状況なのに呑気に間延びした声を出して自己紹介する。

『同じSランク』と口にしたってことは、やはりこいつもSランクだったようだ。

「ああ、よろしく」

言いながら、俺はトイポを立たせる。

「いやぁ、ジードさんが手助けしてくれるならこれ以上、頼りになるものはないよぉ」

「褒めすぎだ。それよりも戦えそうか?」

「この通りだよ~」

トイポが大丈夫とばかりに自分の腹部を叩く。見ると、トイポの傷は癒えていた。とんでもない回復薬を飲んだらしい。

「でも、正直あの男を倒せる気はしないかなぁ」

トイポが言いながらクオーツの方を見る。

やつは俺達をジッと見つめながら佇んでいた。

なにかを待っているのか。……それとも。

「ジード!?」

不意に聞き覚えのある声がかかる。それは戦闘中のシーラだった。

そこから波状してクエナやフィル、そしてディッジなんかの顔ぶれが俺の存在に気付いたようだ。

「よう」

軽く手を挙げる。

続けざまに彼女たちに尋ねた。

「手助けは必要か?」

ギルド側にとっては絶望的な戦場だ。

でも彼女たちは――逃げていない。

「「不要よ!」」

クエナとシーラが示し合わせたかのように言う。

それに続いてウィーグが「見ててください兄貴ィ!」とか声を荒げている。

彼らの士気は未だに衰えていないようだ。

かと言って、不利な戦況であることに変わりはない。

俺も依頼がある。

だから。

「トイポ。クオーツは俺が引き受ける。おまえはAランク冒険者が対処しきれていない敵を相手してやってくれ」

「んん~、俺は良いけど……クオーツはとても強いよぉ?」

「まぁ、やれるだけやってみるさ」

そう言って、俺はクオーツに振り返った。

「……ふむ」

クオーツは不思議そうに首を傾げた。

俺が誰なのか、どうしてここにいるのか謎に思ったのだろう。

せめて名乗っておくか。

「俺はジードだ。ギルドのSランク冒険者をしている。依頼あって、この地の主を擁立しにきた」

「そんなものはどうでも良い」

「ああ、そう」

「貴様、どんな小細工をしている?」

「ん?」

話の不透明さに理解が及ばない。

補足するかのようにクオーツが続けた。

「どんな攻撃手段を取ろうにも貴様には効かん。……なぜだ?」

心底納得がいっていない様子だ。

俺が答えるよりも先にトイポが口を開いた。

「気を付けてくれぇ、ジードさん。やつは恐ろしく頭の回転が速いようだぁ」

「頭の回転?」

「うん~。今もきっと脳内で予測を立ててぇ……」

「いや――」

場の魔力を感じ取る。

この一帯を囲むような、薄い膜。

クオーツの張り巡らせている魔力だ。

たとえばリフならば、これらの魔力を感じ取ることはできただろう。

だが、トイポはできないのか。

最近気づいたのだが、どうやら俺の魔力を感じ取るという力はあまり一般的ではないらしい。

おそらく禁忌の森底で生きるために得た『目』や『感覚』なのだろう。

リフでさえも魔力は微弱に感じ取る程度だと言っていた。

そして、そんな力から得た考察は。

「――おそらくクオーツは行動に対する結果があらかじめ見えているんじゃないか」

「ふむ。まぁ正解だ。詳しく言うのなら『未来予知』だと考えている」

どうやら隠したいわけではないらしい。

クオーツがさらに補足した。

「あはは……そんな魔法、聞いたこともないねぇ」

どこか好奇心のある目で。

しかし、絶望を示す汗を流しながらトイポが言う。

なるほどな。たしかに俺も聞いたことがない。

俺が見てきた文献にも、そんな魔法はなかった。俺が育った森にも類似する魔物はいなかった。

未来が見えるとなると、それは破格の力だろう。

「トイポ。はやいところクエナ達のところに行ってやってくれ」

「……いいのかい?」

クオーツを俺一人で対峙してもよいのか、そういうニュアンスの問い。

俺は静かに頷いた。

「どうやら援軍も来てくれたようだしな」

覚えのある魔力の気配を感じる。

それは森一帯を包み込むほどの魔力だ。

クオーツも全体を見渡した。

瞬間。

途方もない軍勢が現れる。

「――大規模の転移魔法はやはり目標地点からズレますな」

「良いさ、別に」

「……」

それはウェイラ帝国の面々だ。

ルイナとユイがいる。隣には見知った顔のおっさんもいた。

「なぁるほど。リフさんの言ってた『なんとかする』ってのはこのことか……」

トイポが呟く。

どうやらギルド側の配慮らしい。

まぁ、試験も無茶苦茶になっている。その調整と考えれなくはない。

に、してもウェイラ帝国が動くとは意外だったが。

ウェイラ帝国は元より戦地に赴く覚悟はできていたようで、先手を打つかのようにクオーツの軍勢に攻撃を始めていた。魔族側も応戦を始める。

戦況は一気にひっくり返った。