軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

家で

シルレの家に着く。

玄関先で俺を出迎えたのは、シルレの妹のラナだった。

すっかり元気な様子で微笑んでいる。

「ジードさん、捕まっていた私を助けてくださってありがとうございました!」

真っ先に頭を深く下げてきた。

「ああ。けど、そんな改まらなくとも良い」

「いえ、言わせてください。あの時は色々と混乱もあって、うやむやなままでした。それにエルフの里も神樹も……救ってくださいました……! 本当に……本当にありがとうございます!」

「――それに私も助けられましたし、これからも助けられますので」

後ろからシルレも顔を覗かせた。

両手には何やら持っている。調理器具だろうか。

そういえば二人ともエプロン姿をしている。奥から良い匂いも漂っている。

「ジードさん、ご飯を作ってるので一緒に食べましょうっ」

ラナが手を引っ張る。

ああ、なるほど。料理をしていたのか。嗅いだことのない匂いだ。エルフの郷土料理ってやつだろうか。

それから手荷物を任せて席に着く。

「そういえばエルフの料理を食べたことなかったな」

味の違う串肉や軽食の店になら入った。

たしかにハッキリとした違いはあったが、本格的にお腹に溜まるものを食べるのはこれが初めてかもしれない。

テーブルに並べられているのは野菜がメインのようだ。

三人で「いただきます」をして口に入れていく。美味しい。あっさりしているものばかりだが味が良い意味で残る。

「ジードさん」

食べ進めているとシルレが言ってきた。

「ダークエルフと会う日程が決まりました。明日、あちらの領地で話し合いをするそうです」

「そうか。付いていけば良いんだな?」

「ええ、当日は武装した数人のエルフも同行しますが、ジードさんもお願いします」

「了解だ。任せておけ」

依頼はエルフの里の防衛だ。

しかし、この依頼には護衛も含まれる。もしもシルレが意識不明の重体や死亡なんてことになれば防衛なんて話どころじゃなくなる。

「そっか。話し合いをすることになったんだね」

俺達の会話を聞いていたラナが手に持っていたスプーンを置きながら言った。

「ラナ……」

「……大丈夫なの? 今のエルフが戦争なんかしたら……」

「大丈夫よ。そうならないために私が行くの」

「でも、もしも罠だったら? シルレ姉さんが危ない目に遭うのも嫌だよ……っ」

純粋な想いだ。

争いは嫌だろう。身内が危険な場所に行くのも嫌だろう。

それでも誰かが行かなければいけない。

だからこそ、俺がいる。

「――安心しろ。依頼を引き受けたからにはエルフの里もシルレも全力で守ってみせる」

「ジードさん……っ! シルレ姉さんとエルフの里を……どうかお願いします!」

「ああ。――おまえも、な」

俺が守るのはエルフの里。つまりラナも含まれている。

そういう意味で言うとラナは頬を赤らめながら嬉しそうに頷いた。

「ふぅー」

今、俺は風呂を借りている。

これは人族と変わらずシャワーがあり、風呂場がある。

程よい温度の水が出るマジックアイテムで身体の疲れも一気に取れていく。

風呂は良い。

ベッドとトイレと風呂は本当に休まる。

肩まで浸かる。

熱量が身体全体に伝っていく。

気が抜けていく。瞼が安らぎから重くなる。自然と暗転する。

ふと、脱衣所の方から音が鳴る。

浴室ドア越しのモザイクがかったシルエットからラナだろうか。

「すまん、入ってるぞー」

「ええ、知ってますよー」

「そうかー」

生温い返事だ。

そうか、知っているか。

にしてはラナは服を脱いでいるような気がする。伝え間違えただろうか?

「入ってるぞー?」

「ええ、知ってますよー」

「そうだよなー……知ってるよな……?」

最後の方は願望のような呟きになる。

だって、明らかに服を脱いでるもん。タオルを身体にあてて今にも扉を開きそうなんだもん。

あれ、俺の知らない言葉でもあったのだろうか?

「ラナー? どこー?」

不意に奥から声が聞こえてくる。シルレだ。

イントネーション的にラナを探している。

「なにー?」

ラナが返す。

少しだけ間が空く。シルレの驚愕が空いた時間から伝わるようだった。

「ちょっ、まさかお風呂場に!? 今はジードさんが入ってるわよ!?」

「知ってるー」

「知ってるじゃないわよ!?」

シルレが脱衣所のドアを開く音がする。

ラナのシルエットと重なる。

「ほら、シルレ姉さんも脱ごっ」

「なに言ってるの!? こら、やめなさい! ジードさんの前でふしだらなところを見られてはいけませんよっ!?」

「えー、でもお背中くらい……」

「そういうのはもっとお近づきになってからじゃないと……破廉恥だと思われるわよ……!?」

「でもでも、シルレ姉さん『ジードさんみたいな方がいてくれたら』ってずっと言ってるじゃないの! パーティーの人達がいない今がチャンスなんじゃないの?」

「そっ、それはっ! 良いから出るの!」

「むーっ!」

くんずほぐれつしている。

もはやその絵面だけで眼福だったが――。

風呂場の扉がガタンっと押し開かれる。

反動で二人が地面に転がる。

はだけた衣服で。それは明らかに過剰なほど露出されていて――。

「きゃぁぁぁぁっぁーーー!」

シルレの叫び声。

ラナも恥ずかしさから顔を赤らめている。

――長く生きているようだが、こういった時の羞恥心は変わらないらしい。

俺も顔を赤くしてるかもしれない。

それはのぼせているからなのか、それとも目の前の景色に――。

なにはともあれ、このまま見続けるのもアレだからと浴槽に顔を浸けた。