軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

新たな依頼

ギルド支部の中。

俺とルックはシルレの『依頼』を聞いていた。

「実は近くの森にダークエルフという種族がいるんです」

「ああ、かつてはエルフと共生していましたよね」

ルックがお茶を出しながら相槌を打つ。

「そうなんです。ですが、少し前にいざこざが起こって以来、ダークエルフは別の森に住むようになっていたんです」

「少し前? 十年や二十年前までこの近くはエルフしかいなかったはずだが」

「ええ、ですから五十年か百年ほど前でしょうか」

「……そうか」

時間の感覚が分からない。そもそも五十年から百年って間隔が大きすぎないだろうか。

もうエルフの時間についての話題は触れないようにしよう。

「ダークエルフには神樹の樹液を分配する以外の接点はありませんでした。もう近くの森に移っているので神樹の加護がある領域にはいないのですが、そこは昔から住んでいたので配慮して……」

「樹液の量に文句を言い出した、というようなことですか?」

ルックが言う。

直近の揉め事になりそうな話題といえば樹液だろう。

しかし、シルレは首を横に振った。

「実はダークエルフがこちらに攻め入る、という密告がありました」

「そんな……!」

「そりゃまた過激だな。どうして?」

「理由は分かりません。ただダークエルフでも穏健派のオプティという男性が言うには過激派も、かつて中立だった派閥も既に攻め入ることで了承しているとのことです」

単純に考えるなら弱ったエルフを乗っ取ろうという算段だろう。

賢老会が消えて、魔物の侵攻を耐えきった。しかし、そのせいでかなり消耗しているから。

つまり、

「だからギルドに依頼をしたいってわけだ」

「……はい。何度も申し訳ないのですが、エルフも戦える者が限られていて……。こうなっては外部の戦力に頼るしかないのです」

「それがギルドですから、遠慮なくご依頼ください。攻め入ってくるのはいつですか?」

「まだ不明ですが、近日中には」

「……そうですか」

ルックが苦々しい顔つきをする。

不安そうなシルレが尋ねた。

「集まりそうにありませんか?」

「そうですね。多額の金銭がかかりますが、緊急依頼や指名依頼を行えばある程度は集まるかと思います。……それでも種族単位での防衛になると……」

緊急依頼、指名依頼。

すでに依頼中の冒険者で、依頼の引き受けを拒否している者もいる。

そしてこの依頼は『戦争』規模のものになる。

さらに遠方のエルフの依頼だ。

ルックは言葉を濁してはいるが、来ようと考える冒険者は少ないだろう。

「そう……ですか」

察したシルレはどこか浮かない顔だ。

「まぁ気を落とすな。俺も受理するから」

「いいんですか!?」

シルレが驚愕する。

どうやら俺は依頼を引き受けないものだと考えていたようだ。

それもそうか。

今回の依頼だけで一か月近くも滞在したのだ。ソリア達も帰還したし、俺も依頼を受けるだけの時間がないと考えていたのだろう。

「ああ。でも他の奴らは忙しいみたいだからパーティーじゃなくて俺個人になるけど」

「いいえ! ジードさんは居てくださるだけでもありがたいです……!」

それだけ言われると俺も嬉しくなる。こうして必要とされるのは悪くない。

不意にルックが「あっ」と漏らす。

「ジードさんが住まう貸家は明日で退去すると伝えてありました……」

「それなら別に野宿でも構わない」

今まではフィルやユイが一緒だったから貸家に住んでいた。

だが、俺はそもそも野宿には慣れている。

エルフには宿もない状態らしいから、わざわざルックに手間をかけてもらうこともないだろう。

そう思っていたが、シルレが顔つきを変えて言ってきた。

「ダメですっ! ジードさんをその様な環境に置くわけには参りません! 我が家にどうぞ! ラナも歓迎してくれますよっ!」

「お、おう」

鬼気迫る姿にちょっと怯む。

「あの、シルレ様。ジード様なら私の家か、新しく賃貸を用意しますので、そこまでされなくとも大丈夫ですが……」

「いいえ。そこまでお手数かけてしまっては申し訳ないのです。私が急ぎで依頼をしてしまいましたから。ひとまずジードさんは家で」

「そ、そうですか。そう言ってもらえると助かります。他の冒険者が来た際にも賃貸は残しておきたいですから……。ジードさんもそれで構いませんか?」

ルックが最終確認とばかりに問う。

俺としては野宿よりも断然マシだから何の不満もない。むしろありがたいくらいだ。

「ああ。シルレ、よろしく頼む」

「はいっ」

シルレが満足そうに笑みを浮かべた。

それから一日が経ち、俺はシルレの家に案内された。