軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

鳴った理由

ギルドカード。

四角形で拳で握れるくらいの大きさ。色はいろいろとあるようだが俺は黒色で、文字は白く表示される。

自分の身分や、掲示板で貼られている依頼などを表示し、依頼予約などをすることまで可能だ。

そしてギルドカードが鳴るときは三つあると説明を受けた。

一つはギルドからの呼び出し。規約違反であったり、もしくはなんらかの話がある場合だ。

二つ目は指名依頼。意味はそのまま指名された場合にギルドから連絡が来る。

そして今回は三つ目の方だ。

緊急依頼。

受理するかしないかは同様に冒険者に任されている。

だが、受理しない場合はポイントが減点となり、ランク降格まであるそうだ。

「神聖共和国で魔物の大量発生、ね」

クエナも同じく自分のカードを見ていた。音や振動はなかった。それは自分の都合で設定できるのだ。依頼実行中に振動や音で邪魔されないために。

「Sランクの依頼だな。随分と達成金も高い」

「神聖共和国は中立国としてかなりお金が回っているからね。こういう緊急時は国民が金を出し合うし」

「そうなのか。ん、それにこの移動手当って」

カードに表示された内容に『移動手当:王国から神聖共和国は銀貨10枚』とあった。

「ああ、それはギルドからの手当てよ」

「え、移動するだけお金がもらえるのか? 俺たちの一歩はお国の一歩……」

「なんの話よ。まさか歩きで行くわけじゃないでしょうね? 馬車で行くに決まってるでしょ。神聖共和国から王国まで一日はかかるのに。それに往復するのだから少ない方よ」

「そうなのか……」

夜が明けても行進しなければいけない時代が懐かしい。

疲労した状態で夜目を慣らしながら襲ってきた魔物を倒す……。

ああ、楽しい時代だったな…………

「ちょっと、なに涙流してるのよっ」

「……いやあ、思い出にふけっててさ。ははは……」

乾いた笑いが出る。

とりあえず俺は依頼受理と表示されたところに魔力を流し込む。

「ジード、この依頼を受けるの?」

「ああ。そりゃそうだろ?」

「わざわざこんな遠出をする必要はないんじゃないの? あなたのポイント的に」

「いやいや、いただいた仕事は遂行しなくちゃ」

「いただいたって……まぁ私も予約している依頼もないし、ジードだけじゃ不安だから受けるわ」

クエナも俺と同様に依頼受理しているようだった。

拒否する自由があるなら、受ける自由だってある。逆にそう考えられる。

それほどに俺はギルドという組織に恩を感じていた。今までだったら間違いなく俺は壊されていただろうから。

かといって献身的になって勝手に潰れても仕方ない。

それらを分かったうえで俺は依頼を受けた。が、まさかクエナまで付いてくるとは思わなかった。

「そこまで案内しなくとも……」

「これは勝ち負けのやつじゃないわよ! 普通にほっとけないだけ!」

そう言ってクエナがそっぽを向いた。

ふむ。まぁ、ありがたい話だし受けるほうが良い……んだよな?

「さっき自分の利益を重視しろって言ってたくせに随分と優しいんだな」

「そ、そんなこと素直に言うな! 恥ずかしいでしょ!」

顔を真っ赤にしながら小突かれた。

「それじゃあ行くわよ。まずは馬車の手配をしないと」

「馬車? ああ、でも共和国まで距離そんなにないから歩きの方が早いんじゃないのか?」

「……その考えはやめておいた方がいいわよ。あんたに付いていけるのは同じく人外だけだから」

「……?」

まぁたしかに騎士団では後続を置いていかないように歩けと言われていた。

あれは単純に連携ではなく……付いてこられなかったからなのだろうか。だが第一騎士団の団長であるランデは『おまえに付いていけないからではない! 到着予定時刻で任務の誤差を生じさせないように……――』とか言っていたのだが。

ふむ?

まぁいいか。ギルドでも移動手当を与えられているから馬車を使った方がいいのだろう。

「あ、そういえば」

クエナが思い出したと言わんばかりに手を叩いた。

「あんたを強く推薦していた【光星の聖女】のソリア・エイデン様は神聖共和国が掲げている国教の教祖様よ。多分、いるはずよ」

「ん、そうなのか。というか教祖なのに冒険者なのか?」

「ええ。魔物の大量発生とか種族間での争いでギルド側から治癒系の依頼を出していたらいつの間にかSランクになってたとか聞いたことがあるわね。一つ一つの依頼のポイントが大きいから一年ちょっとでなったとか」

「へぇ、すごいんだな」

「……それ嫌味? 一日でなったでしょ、あんたは」

クエナがジトっと俺のことを見てくる。

「俺の場合は推薦とやらだからな。そのまま昇格したソリアさんはすごいと思うよ」

「あんただったら一か月でなれるわよ……自覚ないの」

「はっはっは、それは無理だよ。依頼がないからな」

「ああ、そっちなのね……」

クエナが『もういいや……』と口にしながら俺の前を進んでいく。馬車の手配でもするつもりなのだろう。

置いて行かれないように小走りでクエナの横に行く。

神聖共和国か。

そういえば昔、騎士団の遠征で守りに行った国だったな。同盟国だから。でもあまり詳しくは覚えていないな。

まぁ、もしもソリアさんに会ったらお礼をしないといけないな。

彼女が強く推薦してくれたおかげでギルドに入れ、騎士団からも抜け出す機会を得たのだから。