軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第80話 銅級冒険者レントと素材の売却について

「……タラスクだと? シェイラ、俺を担いでるんじゃないだろうな?」

ダリオがそういう気持ちも理解できる。

なにせ、タラスクは強さだけならともかく、持っている毒の厄介さ、生息する環境の厳しさからソロで狩るなら銀級でも上位程度の実力は必要とされているからだ。

しかし、俺の場合は毒は効かない。

周囲の環境もそういう体質の俺には普通のところと同じだ。

せいぜいが、少し動きにくいな、という程度で常に毒を気にしなければいけない、普通の人間の冒険者とは話が違う。

ただ、そんなことは俺が 不死者(アンデッド) であることが前提の話なので、説明するわけにはいかない。

だからとりあえず、俺が黙っていると、シェイラが、

「わざわざそんなことをしても意味がありませんからね。掛け値なしに本当の事ですよ。事実かどうかは、実際にその目で見ていただければ」

「……しかし、そのタラスクはどこにある? 表にでもあるのか?」

ダリオがそう尋ねたのは、タラスクのような大物を狩って来た場合には自分の実力を示そうと見せびらかしつつ持ってくるものも少なくないからだ。

流石に街中を練り歩くわけにはいかないが、 冒険者組合(ギルド) の前で出して、そこから解体場まで持ってきたりとかするわけである。

ただ自慢しよう、というだけでなく、これだけの大物が狩れたから、そのうち素材なども出回ると言うことを喧伝するためでもあるので、必ずしも悪いことではない。

が、俺はそこまで目立つつもりもない。

銅級に登録から間もなくすんなり上がったことで多少は目立っているところもあるだろうが、所詮は銅級だ。

もとから実力のあるものがかなり短い期間で昇格することは別に聞かない話ではない。

俺は魔法の袋を取り出してダリオに示し、言う。

「ここにはいってる。だしてもいいのか?」

ダリオはそれに首を振り、

「……いや、タラスクとなるとここじゃあな。こっちに来てくれ」

そう言って解体場の中を先導する。

そしてたどり着いた部屋は、かなり広く、たしかにここでならタラスクを出しても問題ないだろうという場所だった。

それに加えて、魔道具が壁際に色々設置してあるのが見える。

あれらは毒などのある魔物を解体する場合に、周囲に撒き散らされないように集め、あるいは浄化するためのものだ。

かなり特殊なもので、高価であるが解体場には必須の魔道具である。

ただ非常に高価かつ貴重なので、そんなにいくつも手に入れられるものではなく、この解体場にはこのような部屋は二部屋くらいしかなかったはずだ。

「さぁ、いいぞ。出してくれても」

ダリオが扉を閉め、シェイラと俺に毒を吸わないためのマスクを差し出しながらそう言ったので、とりあえず仮面の上からマスクをつけるという非常に微妙な格好になった上で、シェイラがマスクをしたのを確認してから魔法の袋からタラスクを取り出す。

タラスクを中に入れるときは袋の口をタラスクに付けるだけでよかったが、出すときは出す場所を念じながら口を開くだけでいい。

やり方を間違えるととんでもない出方をするのでコツが必要だが、魔法の袋については俺は持っている。

大きさは違ってもやり方は同じなので慣れていた。

「……本当だったんだな。しかしこいつはタラスクでもでかい方だぞ」

そう言いながら、ダリオはその場に現れたタラスクに触れる。

体の方と、切り落とした首の方、両方とも並べて出した。

ダリオはまず、甲羅の方を全体的に見て、触れつつ言う。

「こっちは傷一つねぇな。珍しいぜ」

「……そうなのか?」

俺は銅級だった。

つまりはタラスクについてある程度の知識はあっても、それを狩ることについての実際的な経験は薄い。

タラスクを倒すには、首を落とすか甲羅ごと心臓を潰すかの二択をとることになるが、その二択であれば首を落とす方が楽ではないのか。

そうだとすると、別に甲羅に傷がないことは珍しくないように思うが……。

俺がそんなことをダリオに尋ねると、彼は言う。

「言いたいことは分かるがな、それをするためには問題がいくつかある。その中でも一番大きいのが、タラスクに近づかないとならないってことだな。こいつは毒のブレスを吐くんだ。そこまで近づくとなると、毒に侵されるのを覚悟でやらなきゃならねぇだろ? 毒軽減の魔道具は銀級や金級でも買えるが、完全無効の奴は 白金(プラチナ) くらいじゃないと厳しい値段してるからな。普通はそんな危険は冒さないで、遠距離から倒そうとするもんだからな……」

なるほど、それは理解できる話だ。

俺の場合はそもそも毒が効かないということと、基本的に近距離戦しか出来ないことからそんな選択肢はなかったが、パーティがいて、遠距離攻撃手段を持っていたら、確かに遠くから攻撃した方が楽かもしれない。

ダリオは続ける。

「甲羅は固いし攻撃は通りにくいが、それはこいつの鱗も同じことだしな。少し時間がかかっても的のでかい甲羅の方を狙うのさ。威力のある攻撃なら貫通することも出来るし、こいつを倒そうとする奴は大体それくらいの隠し玉は持ってるからな……ただ、そうなると必然的に甲羅は割れるか穴が開く。解体屋としちゃ、少しばかりがっかりな素材になっちまう」

ただ、銀級や金級の攻撃で貫通可能となると、そのランクの防具の素材としては厳しいようにも思われる。

しかし、別にゴブリンではあるまいし、素材をそのままの状態で組み合わせて鎧にするわけではない。

強度を上げる加工をし、また他の素材と組み合わせながら元の素材そのままよりも強力なものにする技術を鍛冶師たちは持っている。

加工するとはいえ、その場合には、もちろん素材自体は無傷の方がいいだろう。

つまり、

「いいねだんに、なりそうか?」

気になって尋ねると、ダリオは、

「もちろんだ。まぁ、解体するのには結構手間も時間もかかりそうだから、手数料はもらうが、それを引いてもかなりの値段になるぞ。首の方もいいな。傷は一か所、根元だけだ。これだと毒腺も完全に無事だろうし……ここまでいい状態のタラスクは久々に見たぜ」

そう太鼓判を押してくれる。

俺は、

「そうか……なら、ばいきゃくのほうはまかせたいとおもう」

そう言った。

狩って来た魔物の売却については色々な方法があり、ここで解体だけ頼んで自分で引き取り先を探したり、自分でオークションにかけてもらったりすることも出来るし、少し手数料はかかるが、ここで扱いの全て任せるということも出来る。

一般的にはここに全部任せるのが普通だ。

その理由は単純で、冒険者は多くが面倒くさがりだからだ。

ただ、馴染みの店から頼まれたり、またタラスクのような大物の場合にはオークションなどの方が高く売れる場合が多いので他の選択肢が出てくる、と言う感じである。

ただ、今回は、ここにすべてを任せてもタラスクほどの魔物となると、オークションにかけてくれるものだし、購入を考えてくれる客も沢山呼んでくれるので、こちらに任せるのがいいと俺は思った。

「構わねぇが……いいのか? 探せばいい客がいるかもしれねぇぞ」

それは正しい意見かも知れないが、今の俺の体でそれを探すのはかなり難儀だ。

色々な人間を尋ねて、面接を繰り返すと言うのは厳しいからだ。

ロレーヌなどに頼むと言うのもあるが、あいつは金にはそれほど頓着しない。

安値で売りそうでそれくらいならダリオに頼んだ方がずっといい。

そう言った色々な思いを語らずに、ただ信頼のみを込めて、俺はダリオに言った。

「……あんたをしんじる。たのんだ」

するとダリオは少し笑って、

「そう言ってもらえるとこっちも手を抜けなくなるな。良い値段で売るぜ。楽しみにしてろ」

そう言ったのだった。