軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第616話 港湾都市と蜥蜴人

蜥蜴人(リザードマン) というのは様々な迷宮でみられるポピュラーな魔物である。

人と敵対的でない、見た目の非常に酷似している存在として竜人、というのがいるが、彼らと蜥蜴人は別、と言われる。

これは種として完全に別、と言っている立場もあれば、種としてはほぼ同じであるが、ただ人と友好的かそうでないかによって呼ばれ方が異なるだけだ、と言う者もいる。

この辺りの区別は単純に学問的なところだけでなく、宗教的価値観とか文化的な問題なども絡まってきて非常に難しい話だ。

俺としては種としては同じではないか、と思っているが別に解剖などして比べてみたわけでもないからわからない。

竜人は誇り高く、まずその死体の処理を他種族に任せたりなどしないからな。

ましてや切り刻んで見比べます、などと言ってはいどうぞとやらせてくれるわけがない。

いくら丁重に葬ります、と言ってもそこは価値観が違う。

ただ歴史の中にはそれくらいの比較をした者はきっといたはずだし、そういう者たちは種として同じかどうかを確認したと思うのだが、だいぶ曖昧な話になっている時点で、書物などにしっかりまとまっているわけでもない、と言うわけだ。

ともあれ、見た目が非常に似ているのは間違いなく、結果として戦い方も似ている。

竜人は高位の使い手になると竜の使うような 吐息(ブレス) すらも使用できる者がいるというが、蜥蜴人もまた、同じであると思うべきだ。

俺が戦ったことがあるのは、比較的低層に出現する低位の蜥蜴人ばかりだからそこまでの心配をする必要は基本的にないのだが、ここは中層域である。

こんなところ、昔の俺ならまずくることができないようなところだが、カピタンとディエゴと言う強力な使い手がいることで、安全マージンをとりつつ入ることが出来たからこそ、遭遇できていると言えるだろう。

ただ、遭いたかったかと言われると微妙なところだが。

ここは《海神の娘たちの迷宮》である。

通常蜥蜴人が出てくるような場所ではなく、それなのにいる、ということはなんらかのイレギュラーな個体なのだ。

そういうものは、多くが特殊な技や技術を持ち、加えて基礎的な能力も高い傾向にある。

まぁ、逆に全くの雑魚、という場合もなくはないが……。

ただ、なんにせよ戦ってみなければなんとも言えない。

幸い、それほど強力な圧力をあの蜥蜴人には感じない。

とてつもなく強い個体、ということはないと思われる。

まぁ、俺程度が理解できないほどの実力を持つが故に何も感じられないということもありうるが、それを心配してたら冒険者などやってられないしな。

龍相手に震えた経験を持つ俺に、今更暴勇の危険性を説いたところで無駄なのだった。

「……最初に俺が行くよ。二人はその後に隙をついてくれ」

カピタンとディエゴにそう言った。

「いいのか? 危険な役目だが……」

そう言ったのはディエゴだ。

彼は俺の頑丈さというか、耐久力を知らない。

カピタンの方は、まぁ、いきなり死ぬことはまずなさそうだからいいか、という顔をしている。

事実としてそうだしな。

俺はディエゴに答える。

「まぁ、あのくらいならいきなり急所をやられることもないだろうしな。もし危なそうだったらどうにか大きく距離でも取ってなんとかするさ」

「……そうか。わかった。それではすまないが、頼む」

ディエゴがそうすぐに納得したのは、今、蜥蜴人が背中を向けたからだろう。

今が一番の襲いかかりどきだ。

俺は頷いて、そのまま静かに蜥蜴人との距離を詰めた。

そして、剣を抜き放ち、その足を狙って斬りつける。

すると、

「……グォォ!!」

という、蛇のような唸り声と威嚇音の間のような声が、その蜥蜴人の喉から漏れた。

すぐに振り返ってその手に持った剣をこちらに向かって振ってくる。

しかしその速度は大したことがなく、やはり最初に見切った通り、さほど強い個体ではなさそうだった。

俺が少し後退して回避すると、蜥蜴人は追いかけてきたが、残念ながらその足には俺が切りつけた傷がある。

魔物は人間よりは痛みに鈍感であるが、それでも現実的に傷を負ったことによる運動能力の低下を免れることは出来ない。

ノロノロとした速度で来られても、特に恐ろしくはなかった。

振り下ろされた剣を、俺は自らの剣で防御する。

避けて切りつけてもよかったのだが……この方が、おそらく 簡単(・・) だ。

「……よくやった、レント」

「ここまで隙だらけな敵も中々いないな」

右耳と左耳にそんな声が聞こえて、俺の横を風のように通り抜けていったのはもちろん、カピタンとディエゴである。

二人は両側から武器を振りかぶり、それぞれ蜥蜴人を斬りつける。

カピタンは首を、ディエゴは腹を切り裂いた。

蜥蜴人の肌は当然ながら人間とは違って遥かに耐久性に優れてはいるものの、俺に対してのみ警戒を向けていた影響か、急所の防御に一切の気を払っていなかったため、無防備に二人の攻撃を受け、大きな傷を負う。

そして目をつぶりながら後退り、俺を抑えていた剣の圧力がなくなる。

「……これで終わりだな」

最後に俺がその首を下からすっぱりと切り落とし、そして戦いは終わったのだった。