軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閑話 ロレーヌの従魔師修行2

従魔師(モンスターテイマー) がどうやって魔物を従えるのかと言えば、これだ、とはっきり言える方法はない。

と言うのも人によってそれぞれだからだ。

たとえば、幼体の頃から、それこそ愛玩動物のように育てて、自然な交流を図ることによって言うことを聞いてもらうとか、戦闘することにより上下関係を理解させることで強引に従わせるとか。

餌や好物を定期的に与えることで従わせる、といった方法もある。

また魔術が関わってくるなら、従わなければ苦痛を感じる道具を身に付けさせることにより従わせる、などと言った方法もあるだろう。

他にも従魔師によって千差万別であると言われ、これを完全に知り、整理し切った者はまずいないだろう。

ただ、レントの義父、インゴの方法は、私が様々調べたり聞いたりしてきた従魔師の取る方法のいずれとも異なっていた。

彼は森の中を私と共に少し歩き、そして、

「……あのスライムがちょうどいいな」

と言って、小さめの、それこそ小型犬や猫くらいのサイズのスライムを見つけて喜び、それから私の方を向いて、

「あのスライムを私の従魔にしたいと思う。ロレーヌにはまず、しっかりとその魔眼でやり方を観察してもらいたい」

と言った。

私が、

「なぜあのスライムに?」

と尋ねると、

「正直なところ、そこまで大物でなければ何でも構わないのだが、スライムだとこいつと最終的に融合させられるからな。私にはそれなりの数の従魔がいるが、これ以上増やすと世話が大変なのだよ」

と現実的な理由を述べた。

それにしても……。

「融合、させてしまえるのですか」

「あぁ。基本的にはスライムに限って、だがな」

「基本以外もあると?」

「ないこともないが……かなり高度な技術になる上に、失敗すると酷い目に遭う。今のところはまだ、ロレーヌは考えない方がいいだろう」

「そういうものですか……まぁ、まずは基本を、と言うのはよく分かります」

錬金術の技術とてそうだ。

基本を知らないのに高度すぎるものを作ろうとして街ごと大爆発、そして死亡なんていう物語は昔からいくつもある。

従魔師のそれとて、同様ということだろう。

特にインゴのそれは通常では考えられないような、大スライムのようなものまで従えられるのだから。

「ロレーヌは物分かりのいい良い生徒だな。探究心がなさすぎるのも良くないが、そこのところも心配しなくてよさそうであるし」

「私は学者ですから。知ることができることは全て知りたいですが、それで身を滅ぼすことはごめんだという気持ちもあります」

「うむ、バランスだな。では、 従魔(テイム) の作業に入る」

「はい」

私が頷くと、インゴは腰から小さめのナイフを引き出して、自分の人差し指を軽く傷つけた。

一体何を、と思っていると、インゴの体の魔力がその指先……というか、血液の中に溶け込んでいくのが見えた。

「この作業は家でやっておいてもいいのだが、それだと一日程度しか持たん上に、成功率も時間経過と共に下がるのでな。それに魔物ごとにちょうどいい魔力濃度というものがある」

そう言って血液の中に濃厚に魔力が溶け込んだのを確認して、傷ついていない方の手で小さな試験管を取り出して、そこに指先に出来た血の玉を一滴、流し込んだ。

どうやらその試験管は特殊なもののようで、内部から外に出ようとする魔力を完全に遮断出来るもののようだ。

興味深い品につい、材質をいくつか考えてみるが、それを察したインゴが少し笑って、

「これの作り方もあとで教えよう。まぁ、私の場合は大抵、ガルブに頼んでしまっているのだが、一応製法を引き継いでいるのは私なのでな」

「ありがとうございます。インゴ殿は、貴重な知識の宝庫ですね」

「昔から引き継がれてきただけだ。もっと昔はこの辺り一帯の村々に伝わっていたのではないかな。たまたま、最後まで残しているのがうちの村だけだったか……まだ引き継いでいる村もまだあるのか。そんな感じだろう」

古い時代の知識や技術が、ひょんなことから見つかることは今でも良くある。

それはハトハラーの村のような場所で、誰かが密かに引き継いでいたり、遺跡の中にひっそりと保存されていたりなどしてのことだ。

だからきっとこれは特別なことではないのだろう。

それでも、こういう機会が私に与えられたことそのものが、特別なことだと思う。

普通ならこんな出会いは人生のうち、一度あるかないかなのだから。

「時間があればじっくりと調べてみたいところですが、今は従魔師の技術を身につけることが大事ですね」

「……そうだな。では、私一人であのスライムに近づくぞ。ロレーヌはこの大スライムと共に息を潜めていてくれ」

インゴの後ろには大スライムが、ベッタリと地面に張り付くような形状になって隠れている。

だからあの小さなスライムに私たちの居場所はバレていなかった。

「はい。その試験管はどのように使うのですか?」

「スライムにぶつける。この血液を媒介に、魔力を注ぐのだ。私も普段はスライム程度であれば直接血をかけてしまうことが多いな。もちろん、ロレーヌほど魔力操作に長けているのであればこんな風に一つ一つやっていく必要はないだろう。ただ、今はわかりやすさ重視で見せていると思ってくれ」

「承知しました」

「では、行ってくる」

そして、インゴはスライムに逃げられぬよう、ゆっくりと進んでいく。