軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第607話 港湾都市と呪物の効果について

「……それで、その木札、何の効果があるか分かりそうか?」

俺はディエゴにそう尋ねた。

あれから、俺たちはディエゴの家に戻った。

カピタンは自分でとった宿があるが、ディエゴからこの家に拠点を移さないかという話があったので、一旦宿を引き払って、荷物を取ってくるために戻っているだけだ。

なぜこちらに拠点を移すのかと言えば、それは俺たちがとりあえずあの迷宮探索をするにあたってパーティーを組んでいるからで、ニーズたちを鍛えるという共通の目的も持っているからである。

まぁ、単純に言えばそうした方が色々楽だろうと言うだけだが。

拠点が離れてるといちいち連絡するのも面倒だしな。

部屋は幸いまだ余っているということで問題がないという。

そんな家で、ディエゴは今、分厚い図鑑のようなものとにらめっこをしていた。

その横には木札が置いてあり、それと図鑑を見比べながらうなっている。

俺が尋ねたのは、もちろん、その木札の効果であるのだが……。

「……駄目だな。分からん。この文様は図鑑に載ってないぞ。《障壁》とか《固定》とかの空間系の文様に似てはいるが……ただ細かい部分が違う」

ディエゴがさじを投げたように手を大きく広げてそう言った。

「じゃあ、どんな効果を持ってるかは調べようがないってことか?」

「まぁ、そうなるな。実際に迷宮武具に効果を付加してしまうしか方法がない。ただ、良く効果が分からないものをそうしたところで、結局分からないということは良くあるから……難しいところだな」

「どういうことだ?」

「あー、つまりだ。たとえば……《耐久力増加》の効果のある木札……こういうのは付加呪物というんだが、そういうものがあったとする。それで、迷宮武具にその効果を付与するとする。だが、見かけ上は何も変わらないことがほとんどだ。その上、耐久力が増加したかどうかなんて、その効果を知らない状態でどうやって判別する?」

「……なるほど。そういうことか……まぁ、実際には妙に壊れないな、とどこかで気付くことは出来そうだが」

「そうだな。《耐久力増加》の効果のある付加呪物は実際に見つかっているし、この図鑑にも載っている。ということは誰かがしっかりと確かめたのは間違いない。そして気付いたのはまさにお前が言ったような経緯を辿ってのことだろうさ。だが、確定するにはそういうことを何回も繰り返さないとならない。ほら、見てみろ、この図鑑の後ろの方を……」

言われて差し出された図鑑をパラパラめくり、最後の方を見てみると、《効果不明の文様》と書かれた目次の下に、大量に様々な文様が記載されていることが分かる。

一応、それぞれの文様の横に様々な注釈があって、こういうときにこういうことがあったからこういう効果の可能性がある、ということが書いてはあるのだが……やはり、そこに書いてある情報だけでは確定しようがないのだろう。

今回俺たちが見つけた木札も、同様のものになる可能性があるというわけだ。

「ま、実際に付加して見たら意外に分かりやすい効果だった、という場合もあるけどな」

楽観的な場合を上げたディエゴに俺が、

「たとえば?」

と尋ねると、少し考えた上で答える。

「武具の色が変わる、なんてのは一番分かりやすいかな。見た目にはっきりと効果が現れる。《色彩・模様変化》の付加呪物は結構あってな。ただ、様々なバリエーションがあって、これから先、新しいものが発見される可能性は十分にある……ほら、この辺だ」

そう言ってディエゴが開いた図鑑には、実際に変化する前と、変化した後の武具の絵が描かれていた。

単純に色が変わる場合もあれば、炎を模した模様が現れたり、水玉模様になったり、まるで絵画のようなものが描かれたりなど、様々な場合があるようだ。

確かにこれだと無限に可能性はあるが……正直要らないだろう。

派手に着飾りたい願望はないからな。

俺は全身漆黒で満足している。

たまに、骸骨仮面と漆黒ローブだと悪人にしか見えないことにちょっと不安を感じることもあるが、全身黒というコーディネートは冒険者の間では比較的メジャーだ。

何せ、汚れが分かりにくいという地味にして重宝するメリットがある。

冒険者の武具というのはどんなに丁寧に扱って手入れを怠らなかったとしても、汚れていくものだからな。

可能な限り目立たないように出来るならその方がいい。

依頼主に汚い奴だ、と思われて心証が悪くなると依頼そのものの評価も変わってしまう可能性がある。

腕利きほど地味な格好であることが多いのは、そういう理由がある。

逆に、新人は派手目な格好を好む。

まぁ、よっぽど有名な者については逆にどこから見ても分かるような格好であることも少なくないが。

その場合はそうとわかる格好をしておいた方が依頼も舞い込んで来やすいとか、喧嘩を売られないからとか、そういう理由がある。

ともあれ、俺はディエゴに言う。

「こういう効果だと、やっぱり値段は安いのか?」

「あぁ。普通に塗装すれば良いだけだしな。塗装した場合と比べて剥がれたりすることはないというのがメリットだから、全く需要がないわけじゃないが……。そして、当たり前だが《効果不明の文様》の場合、付加呪物にほとんど価値なんてつかない。ヤバイ効果のこともあるからな」

「あぁ、プラスの効果ばかりじゃないのか。呪物だもんな」

「そういうことだ。代表的なのだと、《体力・魔力低下》とか、《頭痛》《腹痛》みたいなのがあるぞ。本当にただの呪いだな。せっかく手に入れた迷宮武具に、誰もあえて呪いの効果をつけたりはしたくあるまい」

「そうだろうな……そもそも、迷宮武具を手に入れないと、この木札の効果も分からない、か……」

「《海神の娘たちの迷宮》を探索していればいずれ迷宮武具の一つや二つは見つかると思うから、試すのならそれからにすればいいだろう。中層以降なら、確率は高かったはずだ。一番は深層だが……そこまで行くとなると流石に戦力的に難しいからな……」

「一応聞いておくが、行くとしたらどれくらいの戦力が要る?」

「金級クラスが三人以上はいるだろう。だが……」

「なるほど、無理だな」

俺もカピタンも銅級である。

ディエゴも銀級くらいの実力はあると言っていいが……しかしどちらにしろ不可能だ。

まぁ、カピタンが何も出し惜しみしなければ金級に迫るかもしれないが……。

ともあれ、今のところそんなところまで行く必要はないのだ。

考えることはないだろう。