軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第599話 港湾都市と才能

目の前でニーズ達が 小魚怪人(レッサー・サハギン) たちと戦っている。

小魚怪人の数は五匹。

ゴブリンと比べると若干強い魔物であるから、それだけでも銅級にとっては中々きつい数となる。

この体になる前の俺だったら、おそらく逃げる、という選択肢を取るだろう。

だが、パーティーを組んでいて、同じくらいの実力のものが他に二人いれば話は変わってくる。

それに加えて、これくらいの狭い空間での戦い、ということになれば余計に。

小魚怪人は 魚怪人(サハギン) と比べれば体は小さいとはいえ、ゴブリンほどの大きさは十分にある。

つまり、五匹の小魚怪人がまとめてならんでかかってくる、ということはうまく立ち回れば避けることが出来る。

それでも二、三匹は相手にしなければならないが、ニーズ達は三人いるのだから数という意味では十分に対抗することが出来るだろう。

問題があるとすれば決定力というか、攻撃力の問題と、五匹全てを倒しきるスタミナが足りるか、ということになってくるかもしれない。

小魚怪人は体が強靱な鱗で覆われており、普通に切りつけても弾かれたりする場合があるからだ。

十分な攻撃力を付与した一撃でなければ切り裂くのは難しいというわけだな。

その点、ニーズ達は分かっているのかどうか……。

「……ルカスが割と周りを見れているな」

カピタンが見物しながらそう呟いた。

確かに、彼の言うとおり、ルカスが全体を見ながら指示を出し、ニーズ達は硬直した状態から動き始めた。

彼らの動きを見るに、やろうとしていることもおぼろげながらに見えてくる。

やはり、定石通り、通路の狭さを利用しながら相対する数を少なめに取るつもりだろう。

「ガヘッドも悪くはないと思うが。他の二人が冷静になるまで小魚怪人を槍で牽制していた」

これを言ったのはディエゴだ。

彼もまた、ガヘッドと同じく槍使いであり、その動きの意味がよく理解できるのだろう。

腕のほどは大きく異なるが、それでも肩入れするところもあるのかもしれない。

「……ニーズはそういう意味だと直情過ぎるかな……ルカスが何も言わなきゃ単純に突っ込んで行ってたんじゃないか、あれ」

これを言ったのは俺だ。

実際、この発言にはカピタンとディエゴも同意して頷いた。

しかしカピタンは、

「……見ようによっては最も勇気があると言えるがな。一瞬固まってはいたのは確かだが……それを振り切るのが早いというのはいい。この点は、ガヘッドやルカスにはないところだろう。ガヘッドは安全を大きく取り過ぎて前に踏み出せないところがあるし、ルカスはまぁ……びびりのようだしな」

そう言ってニーズをフォローした。

それから、ディエゴが、

「一番冒険者っぽいのはニーズだということだな……。それだけ死に急ぎやすいわけだが。レントと知り合うことになったのもそういう性格が理由なのだからな」

そんなことを言う。

まぁ、確かにその通りだ。

幸い、というか俺が非常に 優しい(・・・) 冒険者だったからニーズは今も五体満足でそこで戦っているわけだが、もしも俺が非常に短気な人間だったらそうしていられたかどうかも怪しい。

冒険者というのは大半、短気で粗野なものである……別にこれは偏見でも何でもなく事実だ。

そうでもなければ自分の命を掛け金にして大金を稼いでやろうなんて選択肢は中々取らない。

「それで……どうかな。二人はあいつらが勝てると思うか?」

ニーズ達の戦いを見ながら俺は二人に尋ねる。

見る限り、ニーズが一匹と集中的に戦い、ガヘッドとルカスが他の四匹の注意を引きつけ、確実に潰していく戦法のようだ。

悪くはなさそうだが……。

これにディエゴは、

「……まぁ、今のあいつらにはあれ以上のやりようはないだろうからな。戦い方自体は適切だと言えるだろう……ただ、な……」

その先は言わなかったが、大体言いたいことは理解できた。

カピタンが継いで言う。

「まぁ、そうだな。決定力不足、か……それに経験もやはり足りないだろうな。おっと、一匹倒したようだぞ」

確かに、たった今、ニーズが小魚怪人の一体を切り伏せることに成功した。

固い鱗を抜ける斬撃を放ったことが信じられないのか、一瞬驚いた顔をしたニーズだったが、すぐに武器を構え直し、次の小魚怪人へと向かう。

普段なら小魚怪人を相手に出来るほどの攻撃力はない、ということかな。

ただ、今は俺たちが背後で見ていて、倒すまで帰らせない、と圧力をかけているから火事場の馬鹿力的にやれた、というところだろうか。

そういうことも戦いの場ではよくある。

けれど何度も続くことではない。

実際、次の小魚怪人と相対すると、途端にニーズは劣勢になった。

「……魔力を使い切ったな……」

俺がぽつりと呟く。

魔力を相手がどれくらい持っている、というのは普通の人間にはなんとなくしか分からない。

ロレーヌのような魔眼を持っていれば正確に見切ることも可能なのだが、それを持って生まれる者はそれほど多くなく、さらに言うなら使いこなせるところまで鍛え上げられる者はもっと少ない。

けれど俺は魔物だ。

魔力と親しみ深い存在であり、だからこそ本能的に相手の魔力量を見ることが出来る。

だからこその言葉だった。

ニーズはあれで一応銅級冒険者なのだし、最低限の魔力は持っている。

それでも俺が昔持っていた魔力量の数倍はあって、ちゃんと使えば小魚怪人くらいなら数体は切り伏せられる攻撃力と持久力を武器と自らの体に付与することは可能なはずだ。

それなのに……。

「無駄が多いのだろうな……。ただ、魔力を使い切ったところも見たいと思っていたからちょうど良い」

こう言ったのはカピタンだ。

ディエゴがそれに首を傾げる。

「……何故だ? ただやられるだけでは……」

「あいつらには《気》を身につけさせたいと思っているからな。そのためには魔力が体に残っていると邪魔なんだよ。もちろん、それでも修行できなくはないんだが、感覚が掴みにくくて時間がかかる」

この知識はディエゴにとっては意外な話だったようだ。

「……そうなのか。以前、俺も《気》を身につけようと考えて、数少ない《気》を使える武神官に弟子入りしたのだが……そのときはそんな話はされなかったな」

「ほう……それで、《気》は身につけられたか?」

「……いや。結局才能がないと言われてしまってな……」

残念そうに言ったディエゴだったが、これにカピタンは言う。

「……見る限り才能はあるぞ。教え方が悪かったようだな」