軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第581話 港湾都市と修行

「そう、その《魔王》だ。彼らのうちの一人がどうも最近、この辺りにちょっかいをかけていてな……危険を感じた魚人たちは海中街の方へと行ってしまったらしい。それでルカリスにはほとんどいない、ってわけだ」

カピタンの言葉になるほど、と思った。

「避難したってことか……」

「必ずしもそうは言い切れないな」

「というと?」

「避難というより、自分たちの街を守りに行った、という感じだろう。実際、《魔王》の手先と思われる奴らはどうも、ルカリス沖合の海域には出没しているが、ルカリス自体を攻撃しようとしている感じではないようでな……」

「どうしてそう思うんだ?」

「実はついさっき、俺も襲われたからな。《海神の娘達の迷宮》から上がってきた直後に、《魔王》の手先と思しきケルピーライダーの集団に」

「……よく無事だったな。流石にカピタンでも、海の上じゃ、ケルピーライダーには機動力で負けるだろう」

「良い船と船乗りを確保していたんで、なんとか逃げられただけだ……まぁ、《海神の娘達の迷宮》に潜るに当たって、海中装備もいくつか持っていたから、真正面からぶつかってもなんとかなったかもしれないが、流石に船自体を壊されたら帰るのも手間だしな」

不可能とは言わないあたり、船を壊されても泳いで帰ってくるくらいのことは出来るらしかった。

俺には無理だ……《海神の娘達の迷宮》って、確かかなり沖合にあったはずだからな。

ルカリスから直接、人が泳いで行き来できるような場所ではない。

まぁ、俺の場合は空を飛んで、とか、それこそ海中を歩いて、とかやろうと思えば出来るだろうが、あまりにも特殊すぎる例だろう。

「しかしケルピーライダーから逃げられるなんて、よっぽど足の速い船だったんだな。定期船が出てるって話だけど、それがそんなに速いのか?」

「いや、俺は直接、ルカリスの腕のいいのに話をつけて雇ってる。定期船の方も足は結構速いんだが、沢山の冒険者を乗せる関係で少し不便でな。融通の利く個人船を雇うことにしたんだ。実際、《魔王》のせいで定期船もしばらく出なくなる、なんて話も出ているところだ……」

「そうだったのか……」

「あぁ。それでな……そのケルピーライダー達は俺たちを追いかけては来たが……ある程度の距離が離れると、途端に追跡を止めてな」

「ルカリスまでは追いかけてこなかった?」

「そういうことだ。というより、特定の海域だけを占拠しているような印象を受けたな。具体的には《海神の娘達の迷宮》周辺を」

「あの辺りに……何か用があるのか?」

「どうなんだろうな。状況から見るにそう考えるべきなんだろうが……それこそ《海神の娘達の迷宮》くらいしかないからな。迷宮に用があるのか……まぁ、考えても分からん。ともあれ、大分話は逸れたがそういうわけで魚人たちはルカリスを離れているということだ。結果として海霊草を採取してくるように頼むことも出来ず、俺が自分で迷宮に潜って取りに行かなければならなくなっている、と」

「《魔王》も迷惑な存在だよな……」

「全くだよ」

深く頷いたカピタンに、俺は言う。

「ところで、その海霊草は見つかりそうかな? カピタンならもう結構なところまで潜ってそうだけど」

まだ見つかってはいない、という話だったが、大体の当たりはつけられているのではないか。

そう思っての質問だった。

これにカピタンは難しい顔で、

「浅層は大体探索し尽くしたからな。もう少し深いところまでいかなきゃならなそうだ、ってところだよ。ルカリスの冒険者達に聞く限り、浅層でもあるときはあるって話だったんでもっと早くどうにかなるかと思ってたんだが、意外に難航しているな。一人で探しているから効率が悪いっていうのもあるが、まぁ、俺は暇だしな。探すためだけに人を雇うのも金の無駄かと思って根気よくやってるよ」

そう言った。

その言葉にこれは中々都合が良さそうだな、と思った俺は、早速カピタンに言う。

「そういうことなら話は早い」

「ん?」

「まず海霊草の探索なんだけど、俺も手伝う」

「あぁ、まぁその方がお前の修行もすぐに出来るだろうしな。というか、迷宮を探索しながら実地で教えられる。なんだかんだ、《気》ってのは使ってみないとしょうがないものだからな」

「それはありがたい……加えて、俺の方で数人、手が確保できるから、そいつらにも海霊草の探索を手伝わせるよ」

「本当か? だとしたら大分助かるが……まぁ、海霊草の見分けが問題になるが、それだけ頭に叩き込んでもらって、最終確認だけ俺とお前ですればいいだろうしな。人手が多い方が助かる。しかし、どんな奴らなんだ? 報酬があんまり高いようだと問題だが……」

心配げなカピタンに俺はニーズ達と知り合った事情を話す。

そして彼らを鍛える、という話になっていることも。

カピタンはそれを聞いて、

「……なるほど。しかしお前が修行しなきゃならないっていうのに、他人の修行まで見ようなんて、随分抱え込んだもんだな」

「別に好きでそうなったわけじゃない……けど、なんか放っておけなくてな」

「昔の自分を見るようで、か?」

「そうさ。それにああして出会ったのも何かの縁だろう。海霊草探しに人手が要りそうなのもなんとなく想像がついていたし、ちょうど良かったってのもある」

「運命……とまで大仰なことではないにしても、縁というのは確かにあるだろうな……よし、そういうことなら、俺も協力してやる」

「何にだ?」

「その……ニーズたちの修行を、だよ。お前は基本的な冒険者としての技術を教えるつもりなんだろう?」

「あぁ、まぁな」

あくまで俺は最低限、稼げる方法を彼らに叩き込むつもりだ。

俺自身は、ずっと迷宮で日銭を稼ぎながら自分の自力を上げる、という稼ぎという意味では効率の良くない方法をとってきたが、ただ単純に金儲けを考えて活動するのであればやりようは色々ある。

俺はどうしても強くなりたかったから、それだけを優先していただけで、工夫すれば銅級であってもそこそこに良い稼ぎを得られるとこまで持って行ける。

俺だって、一応魔法の袋を購入できる程度までの貯金は出来たのだからな。

そういう方法を、ニーズたちに教えるつもりだ。

カピタンは続ける。

「だったら、俺はそいつらに戦闘技術の方を教えてやることにする。どうせ迷宮に潜るんだ。戦闘は避けられないだろうし、だったらそいつらもお前と一緒に鍛えた方が攻略もしやすくなるだろう。すぐに使えるようになるのは無理だろうが、しばらく自分でも鍛えれば、《気》の基礎くらいは使えるようになれるようにしてやれば、それがそいつらへの報酬にもなるだろう」