軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第59話 新人冒険者レントと新たな武器

それから、色々と方針について話し合ったのだが、基本的にはあまり目立つのは得策ではない、ということになった。

まぁ、それは最初からそうなのだが、シェイラの話した新人冒険者たちの失踪の件が片付くまでは、特に注意すべきだ、ということだ。

しかし実際にはどうすべきか、というところが困りもので、最も望ましいのはしばらくは迷宮に潜らないことだと言う話になってしまった。

ただ、俺は魔物としての存在進化を求めている以上、そういうわけにもいかないのだ。

ほんの数日くらいならともかく、何週間、何か月も迷宮に潜れないとなると……困った話になる。

まぁ、魔物は迷宮以外にもその辺の森や山にもいるのでそちらをメインにしてもいいのだが、やはり効率のことを考えると迷宮の方がいい。

魔物の強さもある程度、階層などによって推測が可能だし、出現する魔物の種類も限定されているからな。

自然に存在している魔物はその点、イレギュラーなものが現れることも少なくなく、効率が悪いのだ。

そうはいっても、この見た目と周りからの嫉妬で色々な面倒に巻き込まれるのもごめん被りたいのも確かだ。

そういうわけで、とりあえずは大人しくしておいて、しばらく経っても事態が変わらない場合にはもう諦めて普通に活動する、という方向に決まった。

そのときは出来ればパーティメンバーなどがいるといい、とは言われたが、俺が魔物と戦っているとそのうち存在進化する可能性がある。

あれは我慢できるものではない以上、いきなりそんな場面を見せられる相手と言うのは限られる。

ロレーヌかシェイラについてきてもらえば一番だが、ロレーヌはあれで仕事があっていつも迷宮に行けるわけでもないし、シェイラはまさに 冒険者組合(ギルド) 職員で、戦闘技能も大したものではないためパーティメンバーとして適切ではないのだ。

結局、俺は一人で迷宮に潜るしかない。

まぁ、しばらくは休んでもいいが……。

とりあえずは、数日、様子見である。

迷宮にはいかないで、その間に何か起これば俺の濡れ衣も少しは晴れることだろう。

ちなみに迷宮に行かないで何をする気なのかと言えば、適当な雑用関係の依頼でも受けようかなと思っている。

生前は結構色々とよく受けていたので、そう言った技能についてはかなり色々身に付いている俺である。

そう言う意味ではあまり困らない。

それと、とりあえずやるべきこととして、武具の受け取りだろう。

鍛冶師のクロープに頼んで、しばらく経ったからな。

迷宮帰りなどにたまに寄って試し振りなどもしていたのだが、そろそろ完成していてもおかしくはない。

行ってみようか、と思った。

◆◇◆◇◆

「お、来たか……目的は分かってる。出来てるぞ」

クロープが俺の顔を認識すると、その苦み走った顔を僅かに和らげて口の端を上げてそう言った。

彼の視線の先には一本の剣が立てかけられていて、銀色に光っている。

おそらくは、あれが俺が頼んでいた剣だろう。

「……それがおれのけん、か?」

尋ねるとクロープは頷いて、

「あぁ。魔力、気、聖気のどれもに耐えられるように鍛えた。素材も拘ってな……若干足は出たが……」

「ふそくぶんは、はらおう」

クロープの性格からして、予定にない出費をした場合は自分が持つ、と言うだろうと言うことが分かっていたからこその台詞だった。

クロープはそんな俺の言葉にいらない、と言いかけたようだが、少し考えて、

「……はっ。 お前は(・・・) いつもそうだな。分かったよ」

そう言って頷いた。

それから、

「ところで、作ってみたはいいが、あまり使い手のいない特殊な剣だからな。実際に試してみてほしい。悪いところがあったら直したいし、欠陥があれば作り直すからな。もちろん、俺としてはしっかり作ったつもりだが……全部持ちなんてそうそういねぇんだ。何が起こるかわからん」

そう言った。

これは、クロープの言う通りだろう。

魔力と気の両方、くらいならそれなりにいるが、それに加えて聖気を持っている者は中々いない。

しかも、その全てを戦闘で活用できるレベルとなると、滅多にいないということになるだろう。

そんな特殊な人間のための剣は中々発注されないし、鍛冶師からしてみれば一種の挑戦だろう。

その出来を実際にその目で確認したいというのは至極当然の話だった。

俺は頷いて、

「……なかにわにいけばいいか?」

そう、尋ねた。

この店には、客が武具の出来を確かめるために、試し切りが出来る的が置いてあるそこそこの広さの中庭がある。

そこに行けばいいか、尋ねたのだ。

クロープはそれに笑い、

「よく知ってるな? その通りだ」

と、分かっているくせに皮肉げに言って立ち上がり、剣を持って先導し始めた。

俺もその背についていく。

そしてたどり着くと、クロープは俺に剣を手渡してきた。

俺はそれを受け取る。

手に吸い付くような、いい触り心地のグリップだった。

俺の 昔からの癖(・・・・・) を完全に理解していなければ、こんなものはどんな名工でも作れないだろう。

間違いなくクロープは俺が誰なのか分かってこれを作った。

しかし、こうして改めて剣を握ってみて思ったのは、 屍鬼(しき) になっていて良かったな、ということだ。

屍食鬼(グール) だったときは言わずもがな、 骨人(スケルトン) だったときなど剣の握り具合はかなり違和感のあるものだったからだ。

手に、肉がなかったからな。

今は枯れ気味とはいえそれなりの厚みのある肉が手についている。

ものを持つときも、生前にかなり近い感覚で握れるのだ。

「握り心地はどうだ?」

クロープが尋ねてくるので、俺は頷く。

「わるくない……はやく、じっさいに、ふってみたいな」

「そうか。まぁ、的はなんでもいいんだが、無難に木の人形で行くか。ちょっと待て」

クロープはそう言って、木の棒の先に人型を乗せたような的を用意し、中庭の中心に設置した。

他にも藁とか竹とか鎧を着せた人形とか色々あるのだが、一番無難な選択肢になるだろう。

もっと高品質な、たとえば 神銀(ミスリル) とか 魔鉄(オリハルコン) などの武器なら、金属製の鎧を着せた人形などがいいだろうが、流石に俺が頼んだものはそこまでのものではないからな。

特殊であるが、武器自体の格はいたって普通のものだ。

あまり固すぎる金属製のものを切ろうとすれば、傷みが早まる。

まぁ、気や魔力を込めればそれほどの心配はいらないのだが、試し切りで傷つける可能性をわざわざ生み出す必要もない。

俺は的に向かって剣を構える。

まずは、普通にその場で素振りをして、重みや重心の位置を確かめる。

まぁいつも通りだ。

調整しているのが俺がいつも頼んできた鍛冶師なのだから当然だろう。

それから、改めて構えて、魔力も何も込めずに、木の人形に振った。

しゅん、という音がして、剣が木の人形の間を通り過ぎた。

そんな感覚だ。

直後、すっぱりとした糸のような傷が人形に生じ、そして人形は二つに分かれて落ちた。

それを見たクロープは若干驚いたようで、

「……おいおい。随分と腕を上げたんだな?」

そう言った。

比較対象は、当然過去のレント・ファイナだろう。

昔の俺にはこんなことは出来なかった。

切れなかったわけではないが、もっと無様な切れ方をしていたからな。

なんというか、叩き切っているような感じとでもいえばいいのか。

それに対して今のはどうだったかと言えば、切れた人形の断面を見ると、すっぱりと切り落とされており、武器の性能もさることながら、切った人間の腕もそれなりでなければこうはならないような切り口だ。

たしかに、俺の腕はあの頃と比べるとかなり良くなったのだな、と改めて客観的に認識することが出来た。