軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第554話 山積みな課題と実験の結果

「……こうなったか」

ロレーヌが結果を見ながらそう呟いた。

どことなく感慨深い感じというか、驚愕とまではいかないまでも、結果に満足しているような感じがある。

「ぱっと見ではあんまり通常の場合との違いが分からないんだが……」

それに対して俺の方はいまいち、納得しかねた。

目の前の杯の中には、戦って勝利を収めたスライムがいる。

先ほどまでのそれは小指大だったが、今は大体、親指大程度にまでなっている。

それは、勝った相手のスライムの魔力などを吸収したが故に存在の規模が大きくなったからだ。

そこまでは俺にも分かる。

ただ、それは至って普通のことだ。

魔物同士が争った場合、勝利した相手の力を吸収することが出来る。

その際、どんな部分が強化されるかは分からない。

しかしそれでもいわゆる地力が少し上がる、というのは一般的な認識である。

更に言えば、俺はそれを実地で実感している。

他の魔物を倒せば魔力や気などが上昇し、またそれ以外にも体それ自体が丈夫になったり、身体能力そのものの上昇も感じられた。

まぁ、俺は存在そのものが極めて珍しいので例外かもしれないが、通常の魔物同士が戦ってもそのような現象が起こることは確認されているのだ。

だから、今目の前で起こった、スライム同士の争い、そして力の吸収という現象には特に驚くべきことはないように見えてしまう。

けれどロレーヌは言う。

「確かにぱっと見では分からんだろうが、やはり魔力の吸収効率がかなりいいのだ。私の場合、魔眼があるからな。一般的な魔物同士が争った場合にどの程度の力が吸収されているのかは直感的に分かっている。それと比べると……今行われたスライム同士のそれは、格段に効率がいいのだ……とまぁ、口で言っても微妙だろうから、しっかりと実験器具で記録しているわけだが」

そう言って、実験台の脇にいくつも設置されていた計測器具の表示板を俺に見せてくる。

杯でスライム同士を戦わせる前に設置したものだ。

ちなみにこれらは別にロレーヌが自ら製作したものではないらしい。

魔道具品店でも見たことはないが、帝国から取り寄せたもので、向こうの《塔》や《学院》で一般的に使われている器具なのだという。

つまりは研究者や教育機関向けの魔道具で、俺のような一般市民が購入できるようなものではないということだな。

コネという意味でも、価格という意味でもだ。

ただ、しっかりと実験を記録するためには持っていなければしょうがないというもので、当然ロレーヌはそういった器具を色々と所有しているわけだ。

とはいえ、そんなもの見せられてもそれこそ一般市民でしかない俺に見方が分かるのか、という話になってくるが、それについては問題ない。

ロレーヌとの付き合いは長く、その実験に付き合わされたことは一度や二度ではない。

当然のこと、器具の設置や記録それ自体についても助手よろしく手伝わされたことがないわけがなかった。

読み方もしっかり教えられており、問題なく表示も理解できる。

それによると……。

「確かにかなり効率が良さそうだな……通常のものと比べると……」

杯なしで同じことをした場合の記録も手渡されたので、それと見比べると、大体三倍以上の効率の良さだ。

杯を持っているだけで単純にそれだけの速度で強くなっていくというのなら恐ろしい話である。

俺が 骨人(スケルトン) だったときにこれを持っていたら……あの重ねた苦労が三分の一になっていたということになるわけだしな。

「あぁ……もちろん、これ一回だけではっきりと効果を確定できるわけではないが、相当なものだな。何度か同じことを試してみるぞ」

そうして、俺とロレーヌはエーデルたちが集めたスライムを使い、何度もスライムを戦わせて賭けをし、そのついでに杯の効果を記録していった。

その結果、やはり杯の効果は、魔物が魔物を倒した場合の魔力の吸収効率をおよそ三倍程度に上昇させるもの、ということが分かった。

そこからさらに、一回り巨大化したスライム達を同サイズ同士で杯の中で戦わせていき……。

「……流石にこれ以上は無理だな。杯がスライムの風呂みたいになっているぞ」

ぽよん、とした物体が杯にすっかり収まっている。

はじめ、小指大でしかなかったスライムだが、今や卵大まで成長していた。

もちろん、杯の中で延々と戦わせた結果だ。

エーデル達は大体二十匹ほどのスライムを捕まえてきたが、今はもう、杯に収まっているものと、その外にもう一匹、同じサイズのものがいるだけだ。

互いに魔力を吸収させ続けてこうなったというわけだな。

「こうなるとこいつらも戦わせて一匹にしたいところなんだが」

その方が管理が楽そうだと思って俺はそう言ったが、

「と言っても、もう杯の中で戦わせるというのも無理だしな。どうにかスライムにこいつを把持しながら戦ってもらうしかないが……どうやって言うことを聞かせる?」

「それを言われるとな……」

ここまではただ杯の中に放り込んでおけば勝手に戦い続けたわけだが、杯を把持させる、となるとそういうやり方は出来ない。

スライムはその体の一部を硬化させることも可能な魔物であるから、杯を把持する、ということ自体は出来るだろうが、俺たちが命令したところでやってくれるわけもないだろう。

「……いっそ眷属にしてしまおうか」

ふと俺がそう呟いたが、これにロレーヌは首を横に振る。

「そうなるとお前から魔力が流れてしまうだろう。そこで《存在進化》してしまうかもしれんし、何か種族が変わってしまうかもしれん。それではな……」

まぁ確かに、眷属化というのはそういうものだ。

人を屍食鬼とか屍鬼とかにするわけだし、エーデルでも分かるが元の状態よりも能力を一段か二段、上げてしまう。

それは俺から魔力などが流れてしまうからで、今回のスライムについても眷属化してしまえばそうなってしまう可能性が高い。

そしてそうなると実験の客観性は保てなくなるだろう。

したがってこの案は却下だ、ということだな。

「となると……どうする?」

俺が尋ねると、ロレーヌは色々考えたようだが、最後にはこう言った。

「やはり、魔物に指示を聞かせるには本職に教えを請うのが一番だろう」

つまり、俺の義父だな。