軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第525話 山積みな課題とにわか作戦

次の日の朝。

食事をしながら作戦を練った。

食事については保存食ばかりだな。

少し先の村の中にスケルトンたちがいるので、ここでたき火のようなことをしてしまうとまずいからだ。

不死者(アンデッド) は俺もそうだが、熱源を見る。

ここに数人程度の人間がいる、程度であればこれだけ離れていても丘で隠れていて見えないのだろうが、たき火をしてしまうと煙も上がる。

流石にそれではバレる。

そのことは村人達も理解しているようで、だからこそ彼らの持っていた食事は干し肉とかそういうものだけだ。

町に戻れば暖かい食事が取れるだろうに、見張りのためにその苦労をいとわない姿勢には好感が持てる。

村一つが魔物によって占拠される、滅ぼされる、ということは少なくないが、そういう場合には村の規模にもよるが、小さい村ならそのまま放棄してしまって村人は散り散りに、というのが多い。

こんな風に取り戻す気で労力を注ぐということはあまり多くない。

金もかかるし、命の危険もある。

ならば小さな村など放棄した方がいい。

そう判断することを責めることは出来ないだろう。

実際、合理的な判断でもある。

「……さて、それでは皆さんも討伐に参加されるということですが……」

俺が議長よろしく話題を口にすれば、村長ジリスが、

「はい。私たちの村です。私たちも率先して立ち向かわなければと……」

そう言う。

だが、それが本当に出来るのであれば最初からそうしていればいいだけの話だ。

やらなかったのは厳しい言い方だが彼らに戦う力がないからだ。

それでも今、こうしてそれを言い出しているのは、冒険者である俺が来た今、盾にでも何にでもなった方が村を取り戻せる確率が高くなるからだろう。

しかしそこまでの自己犠牲は求めていないし、必要ない。

だから俺は彼らに、彼らが出来ることを考えた。

「皆さんのお気持ちは分かりました。しかし、剣を持って至近距離で戦えば、正直なところ邪魔です」

まずはっきりとその点は認識してもらう。

盾になる。

言うは易いがこれは意外と難しい。

適切なタイミングで適切なところに飛び込まなければそんなことは出来ない。

そんな技能が彼らにあるとは思えない。

そうなると、却って邪魔になる。

俺が振り下ろした剣とスケルトンの間に急に飛び込まれる可能性だってあるのだ。

そんなのは無駄死にだ。

端的な事実の指摘。

しかし、ジリスたちには厳しく聞こえたようだ。

それでも食い下がる彼ら。

「……しかし私たちは……!」

もちろん、彼らの気持ちは分かる。

だからこそ、俺は提案する。

「……そこに弓がありますね。皆さん、お使いになられるのですか?」

護身用か、狩りのためか。

彼らの足下には鍬などの武器になりそうな農具の他に、弓が置いてあった。

突然それを指摘した俺にジリスは首を傾げ、

「え、ええ……一応は。特にリブルと……こっちのズットガは村でも一、二を争う狩り上手です」

と答えた。

それを聞いて俺はリブルも狩りがうまいのかと意外な感を覚える。

ただ、彼がマルトまでの使者に選ばれたことを考えればそんなにおかしい話でもないかとも思った。

彼が体力と方向感覚がしっかりとしているからこそ適任だということになったのだろう。

俺はジリスに頷いて言う。

「それはいいですね。他の皆さんも?」

「ええ。我々の村は……あまり外とは交流がありませんでしたからな。もしものときのため、食料は自分たちで確保できなければならなかったので、狩りは必須だったのです。もちろん、魔物を倒せるようなものではありませんでしたが……全員それなりには扱えます」

人口が少ない村だと仕事を専門分化させにくいからな。

皆、万能というか器用貧乏な技術を身につけている、ということは良くある話だ。

今回はそれが役に立ちそうだ。

俺は言った。

「では、皆さんには遠くからスケルトンを狙って矢を放っていただけますか? できるだけ固まって欲しいのですが……」

するとジリスは言う。

「遠くから……? しかしそれではレント殿の助けにはならないのでは……。私たちにも覚悟はあります。魔物の前だろうと戦えますぞ」

俺が彼らを気遣って、もしくはその勇気を疑ってそのような仕事を任せようとしている、と思ったのだろう。

実際、それは正しい。

が、はっきりとそう言ってしまうと反発されるので……。

俺は違う理由付けを告げた。

「いえ、皆さんのお覚悟について疑っているわけではありません。しかし、先ほども申し上げたとおり、近くに戦いに慣れていないものがいると、やはり邪魔なのです。ただ、皆さんには死をいとわない覚悟がある。それを前提に皆さんの役割を考えると……私は、おとり、が一番いいのではないかと思ったのです」

「おとり、ですか……?」

「ええ。おとりです。スケルトンに大した知能はないとはいえ、近くにいる生き物の危険性や、大まかな強さ弱さは判別できます。そして、最も殺しやすいものを初めに狙う……魔物というのはそういうものだということは、皆さん、ご存じですね?」

「え、ええ……」

物騒な話に少し腰が引けているジリスたち。

このままやっぱりやめる、と言ってもらった方がいいのだが、言い出した手前、もうそうは言わないし言う気もないだろう。

だから俺も続ける。

「私がスケルトンに突っ込んでいけば、おそらく彼らは全員で私一人に向かってくるでしょう。しかしそうなると少しばかり……立ち回りが難しい。五体いる、とのことですが、五体の攻撃をかいくぐりながら戦うとなると……敗北する可能性もないとは言えません。しかし、そのうちの何体かの意識を他の方向に向けてやれるなら……戦いは格段に楽になり、討伐の達成が容易になります……」

「そのために……私たちに遠くから矢を射込んで欲しいと……そうすれば、私たちにスケルトンの意識が向くから、というわけですな? できるだけ固まって、というのは……」

「その方がスケルトンの向かう方向を限定できますから。背を向けたスケルトンを私が狙いやすくなります。当然のことですが……この作戦は皆さんにとって極めて危険です。それこそ、死ぬ可能性もあります。それでも……受けられますか?」

全く死なせるつもりはないし、五体くらいならまとめて倒せると思うが、危険性はゼロではないのは本当だ。

だから本当に断っても構わないのだが、ジリスたちの答えはやはり決まっていたようだ。

「もちろん、受けさせていただきます。みんな、やるぞ!」

ジリスが他の村人達にそう言うと、皆、力強く頷いたのだった。