軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第516話 山積みな課題と引退後の生活

次にとりあえず、気を込めてみることにした。

なんだかんだ、人間だったときからずっと一番頼りにしてきた力が気である。

これを活用することによって俺はやっと 骨人(スケルトン) やスライムを倒せる程度の実力を発揮できたのだ。

そこから考えると大分遠くまで来た気がするが……。

今なら素の身体能力のみでそれらの魔物は普通に倒せるだろう。

まぁ、上位種とか特異個体とかになってくるともう無理なのは相変わらずだが。

ただ、瞬殺されることはまずなくなったのは大きい。

王都で 吸血鬼(ヴァンパイア) に瞬殺されたけどね。

「……おい、どうした、ぼーっとして?」

クロープにそう言われたので、

「あぁ、悪かった。ちょっと考え事をな……」

「まぁいい。人形も並べたしやってみてくれ」

改めて気を取り直し、剣に気を込めた。

すると……。

「……見た目は変わらないな……」

気や魔力を込めることによって、見た目が変化する武器というのは世の中にそれなりに存在する。

そういう武器は見ているだけでなんだかわくわくしてくるので、俺的にはそうなってくれたら嬉しいな、とちょっとだけ思っていたが期待を外された格好だ。

まぁ、そういう武器というのは見た目で何をしようとしているのかバレるのでそれこそ使いこなすのが難しかったりするため、戦闘のことを考えると何も変わらない方がいいのだけどな……。

そう思いつつ、剣をとりあえず素振りしてみると……。

「……お。なるほど、そういう変化か……」

「何か変わったか?」

クロープが尋ねてきたので、俺は答える。

「あぁ。なんだかしなりが少し……弱くなった気がするな」

「そうか? 俺にはあんまりそうは見えねぇが……」

「わずかにしか気を注いでなかったから振ってみないと分からないレベルだったのかな。もっと気を入れてみる……」

なんとなくの推測だったが、実際、気を注げば注ぐほど、しなりは弱くなっていった。

気を入れると、硬い剣になる、というわけだな。

しかしこれはいいことなのか……。

硬くなれば切断力は上がるかもしれないが、折れやすくなったり欠けやすくなったりしていないかが怖いな。

いきなりぶっ壊したらそれこそクロープが泣く。

このまま試し切りして良いのか悩んだが、クロープは、

「……まぁ、別に普通の使い方して壊れるようなら俺が作ったのが失敗作だったってだけだからな。いいぜ、その状態で試し切りして」

と真っ当なことを言う。

まぁ……当然と言えば当然か。

別にクロープは飾り物を作っているわけではないのだし、ここで壊れても怒りはしないだろう。

俺はクロープに頷いて、試し切りに移った。

木と藁についてはやはり簡単に切断できた。

これらについては流石にこの固さでも欠ける心配はしていなかった。

切断面を見てみたが、先ほどまでよりもずっと滑らかに切れていた。

やはり切断力が上がっているのは分かったが……。

「金属の鎧はどうかな……っ!」

言いながら、それを纏った人形に俺は斬りかかる。

剣自体の重さは変わっていないので振りやすいことは間違いない。

ただ、しなるときとは反動が違うので、この辺りもよくよく慣れておかなければならないだろう。

人形に向かって剣を振り切るとき、やはり少し不安だったが、それでも剣先をぶれさせないように迷わず思い切り振り切った。

その結果……。

「……どうやら、問題なさそうだな」

クロープが走ってきて剣の刀身などを検分し、全く問題ないことを確認するとほっと息を吐いた。

鎧人形の方はと言えば、木や藁のそれと同様、先ほどよりも滑らかに切り裂かれていた。

それでいて剣の方は全く問題ないのだから素晴らしい。

それにこれだけの切れ味ならスライムなどの不定形の魔物の核を貫くときにもかなり有用そうに思えた。

スライムは未だにいい小遣い稼ぎだからな……。

「次は、魔力だな」

素早くクロープが次の人形を用意してくれている間に俺は俺で魔力をとりあえず通してみる。

すると、何か不思議な感覚がした。

「……これは……」

地面に何か感じるというか……そこが手足の延長のように思えるのだ。

試しに動かしてみると……。

――ぼこり。

と、中庭の地面の土が一部、盛り上がった。

俺の意志に従って、である。

何度か試してみるがやはり結果は同じで、どうやらこの剣に魔力を通すと地面に干渉できるようだ。

地面というか……土とか砂とかかな?

なんだか畑を耕すのに便利そうだな……。

肥料には事欠かないし、冒険者を引退したら農家に転身すべきと神様が言っているのかもしれない……などと益体もないことを考えていると、

「……そいつは多分、 大地竜(アース・ドラゴン) の魔力に浸った魔鉄を使ったからだろうな……土や岩……大地に由来を持つような魔物の素材を使って作ったとき、出来が良ければつくことがある効果だ。まぁ、そこまで珍しくはねぇが……どこまで出来るかは問題だな」

準備が終わったらしいクロープが、俺が地面で遊んでいるのを見てそう言った。

俺もこういう類の武器は知っている。

似たようなものだと炎を出せたり氷を出せたり、それらを武器に纏わせたり……とかな。

要は、魔術師でなくとも魔力を武器に通せさえすればそれと同等の術を使えるようになるという感じだろうか。

クロープの言うとおり、そこまで珍しいわけではないが、こういう品を店売りで買おうとすると値段がちょっと考えられないようなものだったりすることがざらだ。

かといってそれに見合うだけの高い効果を持っているかと言えば、微妙なものも少なくない。

だから俺はあまりこういったものは使ってこなかったが……。

「どこまで出来るか、か……。魔力を強めていって試すか」

今はやはり、とりあえず弱く魔力を流した状態で試していたので、魔力を強めて行けばもっと大きなことが出来るかも知れない、と思ってのことだった。

実際、やってみると予想通りの結果になる。

操れる土や砂の量が魔力を強めるにつれて増えていき、また何もない空間に岩の弾丸を生み出すことも出来た。

かなり自由度が高い効果だと言えるだろう。

これなら、戦闘の幅が広がる。

ただ、燃費はそこまで良い感じはしないから……やはり、練習して使いどころを考えられるように慣れていかなければならないだろう。

この剣、使いこなせるのか不安になってきたな……。